アンサンブル・ノート

@sojusara

第1話 前奏曲

(テンポ・・・80くらいかな)


将生は自分の上に乗る沙良の揺れる胸を見上げてる内に、ふいにそう思ってしまった。

と同時に少し焦ったが、もう手遅れだった。

将生の頭の中では、揺れに合わせてメトロノームが鳴り出し、そこにバイオリンの音色が重なっていた。

こうなってしまうと、もう自分でも衝動が抑えられない。


「・・・・・・ごめん、ちょっとどいてくれる?」


そう言うと将生は沙良を一人ベッドに残して立ち上がり、棚に置かれたケースからバイオリンを取り出すと、真っ暗な部屋で裸のまま弾き始めた。


「え、何? どうしたの将生くん」


呆気にとられた沙良が将生に問いかけるが、その声は将生には届かない。


「信じられない!」


怒った沙良は服を着て部屋を出て行く。


それでも将生のバイオリンが止まる事はなかった。

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