22 杯目 自己批判

SIDE 紘目ひろめ 茉奈まな


 五十八秒、五十九秒……


 わたしは玄関の扉を開けた。目の前には、うどんを愛する学生集団(自称)の全十二名が整列していた。

 

 臆することなく、わたしは手元の原稿を読み上げた。


「ブログ及びSNSで、この度のマナーについて『令和時代の新常識』と断言したことは、時期尚早であったとして、自己批判いたします」


 うどんを愛する(略)が一瞬どよめいた。


「本マナーは、わたしが世界で初めて提唱したもので、世間一般に広く認知されたものではありませんでした。にもかかわらず、『新常識』と断言した行為には、それが受け入れられて当然のものという姿勢で啓発に臨んでいた、わたし自身のおごりがありました。よってこの点について真摯しんしに反省します。世間の皆様に対し、温かく受け入れられるよう、事前に丁寧な説明が必要だったと痛感しています」


 読み終わると、わたしは彼らに背を向け、ドアノブに手を掛けた。

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