第2話 「部活動仮入部期間」開始①____出会い

 4月


 入学式が終わった翌日、藤宮悠之亮の高校生活が始まった。教科ごとに教材が配られ、授業が始まった。友達も少しできて学校生活に慣れ始めてきた。週明けの5・6時間目、部活動紹介があった。新入生全員が体育館に集められ、様々な部がステージで活動の紹介をした。

「〇〇部です!私たちは現在、3年生●人、2年生●人の計●人で活動しています。私たち〇〇部は……。」

 こんな感じで、部員の人数、活動日時、場所、内容を部長が説明をすると言う感じだった。途中から寝てたけど。そして、全ての部の紹介が終わり、教室に戻ってホームルームを終えると「部活動仮入部期間」が始まった。これは簡単に言うと今日から一週間、興味がある部活に一日入部体験して、どのような部活かを知る期間の事だ。1年生の教室前廊下では、サッカー部やバスケ部、吹奏楽部等様々な部活の先輩達がユニフォームを着て、新入生に宣伝活動をしている。一方クラスでは、何部に行くかと言う話で持ち切りだっだ。

「部活何行く?」「アタシ吹奏楽〜」

「お前中学と同じでバスケっしょ?」「そうかもだけど、キツそうだしなー。」

「どうしよう、俺部活何も決めてないわ。」「どうすっかな~俺もな~。」

 そんな会話が飛び交っていた。勿論竜之介も例外ではない。

「藤宮は仮入部どこ行く?」

 部活は、高校選びの時から決めていた。

「演劇部に入部する。」

 悠之亮は即答した。

「マジで? しかも『入部』ってもう決めたのか?」

「あぁ。この高校ここに入ったのも、演劇やりたくて来たんだ。じゃあ俺もう行くわ! じゃあな!」

「おう! じゃあな!」

 そう言葉を交わし、悠之亮は教室を出た。校内地図では無く「演劇部」の看板を掲げている人を探した。本来は、校内地図を見ればすぐに行きたい部活の活動場所を見つけられるが、いかんせん人が多すぎる。ところで、校内の作りは第一校舎〜第三校舎の3つに分かれている。第一校舎は、1年生全クラスと2年生の1〜5組の教室。第二校舎は、2年生の6〜9組と3年生の4〜9組の教室プラス教科別特別教室。第三校舎には3年1〜3組と教科別特別教室。校内地図は第二校舎の柱に張られている。そこには新入生が地図を見るために密集している。廊下は人が通れない程の人混みになっており、見ることはおろか、近づくことすら難しい。なので、悠之亮は地図を当てにせず、演劇部の看板を探し回った。そして第一校舎で見つけた。ガチャピンの着ぐるみを着た女子と、「不思議の国のアリス」に出てくるアリスの衣装を着た背の低い女子が看板を持って宣伝をしていた。悠之亮は2人の先輩に声をかけた。

「あのーすいません。演劇部の活動場所ってどこですか?」

「あ、キミ。もしかして演劇部興味あるの?」

「えぇ……まぁ。」

 距離を詰められると、言葉が詰まってしまう。特に女子だと、接する機会が少なかった為、それが顕著に現れる。

「「えぇ〜! ホントに!?」」

「 じゃあ一緒に演劇部のトコに行こっか!」

「えぇ……あぁ……ハイ。」

 2人のテンションは上がり、喜んでいた。悠之亮はなぜ喜んでいるかは分かっていなかったが、2人は意気揚々と活動場所に案内してくれた。向かっている最中、活動場所について聞いた。すると、今日の活動場所は[多目的A]という広い特別教室で活動しているが、活動場所は日に日に違うとのことだった。もう中学の時みたいにはならない。色々な人と関わって、色々な役を演じて、色々な台本を書いて、色々なものを作るんだ! 渡り廊下を歩きながら、静かに自分の胸に誓った。

 


 空は快晴。太陽の光が眩しい。風が吹き、桜の花びらがひらひらと舞っている。まるで新入生を祝ってくれているかのようだった。が……なぜだろう? 後から吹いた風は、とても冷たかった。

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