第18話 やっちまったなぁです

 レイナの堂々とした宣言にクレアは目を丸くした。


「そ、そんな!? わ、私はてっきりお二人は愛し合ってるもんだとばかり...」


「期待に沿えなくて申し訳ないけど、貴族同士の婚約なんてそんなもんよ」


 クレアは目を伏せて、


「だとすれば、これから私がやろうとしていることは、レイナ様にとって余計なおせっかいということになるんでしょうか?」


「えぇ、そういうことよ。なにせ私はハインツとの婚約破棄を目指してるんだから」


「あの...ハインツ様のお気持ちはどうなんでしょうか?」


 今度はレイナが目を伏せる。


「アイツは...その気が無いみたいね...」


「ということは、レイナ様のことが好きだと?」


「さぁ...どうなのかしらね...」


 レイナは惚けることにした。


「私、ハインツ様に聞いてみてもいいですか?」


「なんであなたが?」


「その...ハインツ様はレイナ様のことが好きだと思うんです。見ていれば分かります。良くレイナ様のことを目で追ったりしていらっしゃいますから」


「どうかしらね。私のあら探しをしているだけかもよ?」


「そんな! ハインツ様はとてもお優しい方です。そんなことは...」


「ハインツが優しい? ハッ!」


 レイナは鼻で嗤った。


「そのお優しいハインツ様が私になにをしたか教えてあげましょうか? あなたが虐められた翌日、私を呼び出して詰問したわ。貴様が指示したのかって。私がしてないって言っても聞く耳持たなくてね。私のことを散々詰ったわ。それでも私は認めなかった。当然よね。だってしてないんだもの。そしたら最後、あの男は私になにしたと思う?」


「な、なにをしたんですか?」


「私の頬を張り飛ばしたのよ」 


 クレアが「ヒッ」と息を飲む音が聞こえた。


「私の話を聞こうともしない、私の言うことを信じようともしない、挙げ句の果てに暴力を振るう。こんな男のどこに優しさがあるのかしら? 教えて下さる?」


 クレアは絶句してしまった。


「分かって貰えたかしら? あの男が私のことをどう思っていようが、私には関係ない。私があの男を好きになることは天地がひっくり返っても有り得ないんだから」


「...分かりました」


「話は以上よ」


 クレアは項垂れながら帰って行った。そして...


「あぁ~! やっちまった~! ハインツの本性を知って、とんでもないDV男だって分かったら、クレアたんだって引いちゃうじゃないの! ハインツとくっ付いて貰わなきゃ、神SHOTだって拝めなくなるのに~! 私のバカ~!」


 レイナの叫びが虚しく響いた。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

悪役令嬢に転生したからには... 真理亜 @maria-mina

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ