第13話

 鈴木は最後の取引先から出て会社へ戻るために地下鉄栄駅に向かった。

 OA機器リース会社の営業として働く鈴木はほぼ毎日のように外回りをしている。

 名古屋市の中心部の栄には取引先が多数あり、必然的に移動範囲がこの栄周辺に偏ってくるのだ。

 遅くなっちまったな……

 時計を見ると午後6時半であった。

 広小路通りの人混みをかわすように地下鉄への入り口に向かった。

 改札を抜けようとした時だった。鈴木の視線はある女性へ釘づけになった。

 あ、あれは!

 渡辺加代子ではないか?

 鈴木はあの同窓会後卒業アルバムを幾度となく見た。

 加代子の高校時代の面影を心に刻んでいた。

 加代子と思わしき人物は改札の脇で時計を見ながら佇んでいる。

 さらに……

 あの女性は……、見覚えがある。同窓会場にいたのでは?

 正確には店の外にだが確かにあの場で彼女を見ている。

 そうか、彼女、一応会場までは来ていたんだな……

 鈴木は状況を理解した。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る