Chapter14.湖の小島

GM:さて、フレジスファ原初都市についてから3日目の朝!君たちはユゥス・レインフォアの案内に従いフレジアの森を進んでいく。基本的には川沿いのため、帰り道も迷うことはなさそうだ。

門番:ガクブルガクブル。


GM:やがて皆さんは大きな湖に辿り着きます。そしてユゥスが目的の場所として指し示したのは湖にある小島です。陸繋島になっていて歩いて渡ることができます。さらに、よく見てみると厳密には島というより樹であることがわかります。フレジスファ原初都市よりはだいぶ小さいですが、島のような大樹が湖の真ん中に浮いている、というような見た目でしょうか。


ナージェンカ:これもまた神秘的な景色だなぁと思います。


GM:はい。近づいていくと細かいディティールがわかり、フレジスファ原初都市のように樹上に建造物のような形を見出せます。文明がそこにあったのだという痕跡を感じます。大破局で滅んだのか理由はわかりませんが現在は人の住居ではないようで、朽ちていく途中の廃墟だという印象を感じるかもしれません。


ユゥス(GM):「さあ、行くわよ」と島へ繋がる道を歩き出します。


門番:「ここに顔料があるのかなあ」

レド:「どうだろうな。彼女ら4人が揃っている必要があるなら空振りに終わるかもしれない」

ヴォックス:「まあしょうがねぇだろ、男ってのはなあ!進み続けるしかねえんだよ」

ナージェンカ:「そういうもんかあ」あるかわからないものの為に突き進むところに冒険者イズムを感じます。なるほどなあ。


ルカカフィーネ:一応後ろを警戒とかできる?スカウト技能とか使えるかな。

GM:島までの道を行く皆さんの後ろには、エルフの森が広がっていることがわかります。

門番:つけられてても分からないかあ。


GM:島の上に辿り着くと、様々な建造物、朽ちかけた遺跡があります。ここで【探索判定】をお願いします。自然環境なのでレンジャー技能でも振れます。


門番:え〜、9です!

ヴォックス:13…!どうだ!?

ルカカフィーネ:15!やったー!

門番:やったー!

ヴォックス:やったー!


ナージェンカ:さぁ、果たして達成しているんでしょうか。

レド:成功した雰囲気だけで乗り切ろうとしている。


GM:よかったですね、ルカカフィーネさんだけ成功です。ちなみに目標値は12、14でわかることが2段階ありました。


GM:まず1つ目。この樹はギリギリ生きていて、今も生命活動をしていることに気づきます。


GM:2つ目。ルカカフィーネは渓谷のような穴を見つけます。木の内部が腐り落ち、ぽっかりと穴が空いたような空間、とはいえかなりの大きさです。そしてその下方に真っ黒な球体【奈落の魔域】(シャロウアビス)が存在していることがわかります。


ルカカフィーネ:「あっ…!」と気づいたらすぐ皆に報告します。

ナージェンカ:このシャロウアビス…もしかしてあの草原で啓示を受けたやつかなあ…。


GM:しばらく観察してみるとシャロウアビスの上から、樹が吸い上げた水が一定の間隔でバシャリ、バシャリと落ちていき吸い込まれていきます。出てきている様子はありません。物理法則を無視した奇妙な光景です。


ユゥス(GM):「なに…これ?こんなもの以前は気づかなかったけれど…」

ヴォックス:「あークソめんどくせえな。今はユゥリーラガナル?が先だろ」

ルカカフィーネ:「でもこんなものを貴重なエルフの遺跡に放置していけないわ!」

レド:ううむ、実際どうしたもんかな。

ナージェンカ:シャロウアビスって確か中の危険さもモノによって違うんだよね。どんな魔物がいるのかとか。


GM:そんなところ申し訳ないんじゃが。みなさん【危険感知判定】をお願いします。


PL一同:ぎゃーー!!(と言いつつダイスを振る)


GM:レド、ルカカフィーネが成功。ヴォックス、ナージェンカ、門番が失敗ですね。OK。



 バシャリ、バシャリ。樹でできた小島の幹の一つでは、水車のように一定のリズムで水の塊が落ちていく。その水の塊をがぼがぼと飲み込み続ける、ぽっかりと空いた穴にうずくまる不気味な球体。シャロウアビスを見てどうしたものかと相談していた冒険者たち。


 だが、不意にヴォックス、門番、ナージェンカ、そしてバイナルの身体が宙に浮いた。


 「えっ?」


 どうやら背後から受けた衝撃に目を白黒させている間に天地は逆さまになり、目の前に漆黒の闇が広がる。


 咄嗟に翼を広げて落下を防いだリルドラケン神官ナージェンカ以外の3名は、シャロウアビスへと吸い込まれていった。


 バシャリ、バシャリ。断続的に水が流れ落ちていく。


 どうにか地にしがみつき、よじ登ったナージェンカが見たものは最悪の光景だった。


 怯え切った目をしているユゥス・レインフォアを拘束していたのは蛮族の一団。オーガやワーウルフ、アルボルといった武勇に優れた種族ばかりが、ニタニタと笑みを浮かべている。


 得物を構えて戦闘態勢に入っているレド、ルカカフィーネに合流したはいいが、数ではだいぶ負けている。今どういった状況に身を置かれているのか捉えきれないナージェンカは、レドが冷や汗を浮かべていることに気づいてしまった。


 「オーガバーサーカー…」ルカカフィーネの呟きがどんな意味を持つのかはわからないが、ピリピリとした空気が伝わる。



 「キミたちを尾けてきて正解だったよ」


 雪のように白い肌に目のような紋様がいくつかも浮かんだ蛮族、高位のアルボルが流暢な交易共通語で語りだす。ほかの蛮族は彼の言葉を待つようにしている。


 「色々と苦労したが、最後には当たりを引けたようだ。…キミたちが酒場で色々と話しているのは聴いたよ。ひとまずはこのエルフの女とさっきのガキがいれば良いってことだろう?…つまり」


 「武器を捨てて、ガキを捕まえるのを手伝ってもらおうか」


 またバシャリ、と水が落ちる。ゆっくりと相談できれば良いのだが、きっとそうはさせてもらえないだろう。


 「こういうとき、冒険者だったらどうするの?」ナージェンカが口を開く。


 「さっきヴォックスが言っていただろ…?」レドが横目でナージェンカを見て、そして叫んだ。


 「進み続けるしかないのさ!飛べ!」


 レドはその身を翻し、木の穴へと身を投じる。


 ナージェンカが背中から倒れ込むように飛び降りるのと同時に、エルフの射手ルカカフィーネも矢筒から矢が溢れないよう抱え瞬時に跳躍した。

 「えー、それ信じるよ…!?」


 器用にナージェンカの首にしがみつくと3人は同時にシャロウアビスへと吸い込まれていった。


 バシャリ、と水がこぼれ落ちる。


 やがて蛮族たちも頭目の指示に従って次々とシャロウアビスに飛び込んでいく。その間も樹はなんら変わらぬリズムで水を吸い上げ、そして吐き出し続けていた。

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