第15話 悪霊退散

 5人で事故現場へと向かった私達は、校門が見える場所にある交差点の側へ到着した。


「近づくだけで、空気がよどんでいるのが解るわね」

「これは、結構短期間なのにここまで、成長するとかかなり強い恨みを抱えてますね」


 綾瀬さんや原田先生達はすぐに、気配を感じ取る事ができた。


「杉下先生はどうですか? 感じますか気配を」

「え、ええ。解ります。これが霊障と言う情況なんですか? 何故私が感じれるのかは、きっとさっきのお守りの関係なんでしょうが、質問は後でまとめてだったわよね」


「はい。それでお願いします」


 私が交差点に近づくと、邪悪な気配が一気に広がりを見せた。

 暗雲が立ち込めたようにも見える。


『サヤカァアアア。コノオンシラズメガ…… スベテヲウシナッタワレラノウラミヲウケロ』

「伯父さんと叔母さんが勝手に私の遺産を使い込んだだけでしょ? 私はその事実を調べただけで何もして無いよ? 伯父さん達が死んだのだって、自分が雇った殺し屋にひき殺されただけじゃ無いの?」


『アノヤクタタズハ、サヤカヲコロスコトモデキナカッタクセニ、カネヲハラエトイイヤガッタカラ、ダレガハラウカトイッテヤッタダケダ。オレハマチガッテナイ』

『ソウヨ、ソモソモアニキノイサンヲワタシタチガツカッテナニガワルイノヨ』


「伯父さん達の考え方がおかしいと思いますけど? 殺し屋を裏切れば、自分が狙われるくらい普通に想像できるけど? それとこの場所にとどまっているのは、何の意味があるの?」


『ワタシタチガシンデシマッタノニ、ホカノニンゲンガシアワセソウニシテルノガユルセナイカラヨ、ココデシアワセソウナヒョウジョウヲシタヤツハ、ミンナミチヅレニシテヤル』


「それってただの逆恨みですよね。まったく同情の余地が無いわ」


 話をするだけ無駄だと思ったので、綾瀬さん達に浄化の練習を兼ねて、聖水で二人を狙ってもらう事にした。

 一応身体に乗り移られたりしたら困るので、私が最初にホーリーサークルで身動きが出来ない様に、その場に縛り付ける。

 

 その後で100均の水鉄砲で聖水を浴びせかけられた二人の地縛霊は、恨みの言葉を口にしながら浄化された……


 浄化される時にまで恨みの言葉を口にすると、恐らく次の転生には時間がかかるだろうな。

 でも、潔いほどの屑っぷりに私が罪悪感を感じる事も無かったから、ある意味助かったのかな。


「結構、あっさりと成功するものなのね」

「まだ悪霊と呼べるほどには、成長していませんでしたから。この場所で怨念をまき散らして、10人も殺せばその相手を取り込み悪霊化したでしょうけどね」


「私達がそれぞれの力を伸ばそうと思えば、どれくらいの霊を退治したらいいのかな?」

「相手の強さにもよりますけど、悪霊化してない幽霊が相手だと10体で次の段階100体でその次の段階と言う感じですね」


「結構大変ねそれは」

「この聖水で中級の悪霊程度までは効果が望めますから、頑張ってくださいね」


「あの…… 遠藤さん。今起こった事は、現実なの?」

「杉下先生。お守りの効果で今のは全部視えましたよね? 霊の声も聞けましたか?」


「はい。はっきりと聞こえました。説明はして貰えるの?」

「一度原田先生の事務所に戻りましょうか」


 そう言って、原田先生の事務所へと戻った。


「えっ? それじゃぁ遠藤さんが急に明るくなったり成績が伸びたりしたのは、そのソフィアさんと言う聖女様の影響なの?」

「はい。インチキみたいでゴメンなさい」


「謝る必要なんて無いわよ。なんで、遠藤さんが聖女様に選ばれたのかは理由があるの?」

「それはですね…… 私その時、伯父さんに遺産を使い込まれた上に、生活にも困窮してて、自殺シヨウt思って飛び降りたんです。その時にソフィアも異世界で龍のブレスでやられちゃったのを、今先生がしているそのお守りの力でこの世界に意識だけ飛んできて、私に宿ったんです」


「そうだったの…… ごめんなさいね。先生担任だったのに、何も気づいてあげれなくて、もっと早く気付いてあげれれば、そんなつらい思いをしなくてよかったのに」

「先生のせいじゃないです。それにお陰でソフィアと出会えたんだし」


「でも綾瀬さん達は、その聖女様の宗教に洗礼を受けたって事なの?」

「聖女の宗教じゃ無くて、女神アストラーゼ様の女神聖教です。ソフィアはその女神様に認められた、聖女様です」


「先生も洗礼を受けれる?」

「他の宗教の洗礼を受けたり信徒に成ったりしてませんか?」


「大丈夫です」

「結婚式や初詣などの他の宗教の行事に参加すると加護を失う事になります。あ、先生って独身ですよね?」


「うん。まだ男性とお付き合いした事もありません」

「えっ? そうなんですね…… 清い身体って事なんだ。もしかして先生は洗礼を受けると、聖職者の能力を授かれるかも知れません」


「ちょっとソフィアちゃん? それ関係あるの」

「綾瀬さん。結構関係あります。聖職者になれるような加護は清い身体にしか宿りませんから、向こうの世界で6歳で洗礼を受けていたのはその辺りが関係してるんです。ただしその歳で自分の意志ではっきり、加護を受けて何を成し得たいとか言えないでしょ? だから綾瀬さん達には強い能力が身についたともいえますね」


「なる程ねぇ。どんな事にも理由があるって事なんだ」

「先生は、洗礼を受けますか?」


「受けたいと思います。あ、先生の仕事を続けても大丈夫なんですよね?」

「はい。それは問題ありません。今日は奥多摩のショッピングセンターで霊障の確認に向かいますから、明日の朝一緒に静岡行きませんか? 美味しいイチゴ食べ放題ですよ」


「魅力的な提案ね。是非伺わせて頂くわ」


「それじゃぁ、そろそろ向かいましょうか。ショッピングセンターに到着したら、取り敢えず食事にしましょう」


「「「賛成です」」」


 原田先生の車に乗って、みんなで奥多摩に向かった。

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