第2話 大麓マオ視点

 学校が終わり、ユウマと共に我が家の送迎車でロボセンターに向かう。

 江良博士から連絡があったから。


――阿久マサオくんが使っていたフェンリルというロボについて話したい事があるから来て欲しい。


 彼が使っていた、あの異様なテノヒラロボ。

 気にはなっていたから時間が出来たときに聞いてみようと思っていた、だから、江良博士の呼び出しに応じた。


「待っていたよ」


 ロボセンター奥にあるラボに江良博士は待っていた。

 ニコリと穏やかな笑顔・・・・・・ではなく、やつれた笑顔での出迎えに私とユウマは驚きを隠せなかった。


「博士、どうしてんですか!?」


「顔色が悪すぎですよ!?」


「あ、ああ、フェンリルの事でね。色々と衝撃過ぎて受け入れられなかったんだよ」


 私とユウマが博士に駆け寄ると博士はフェンリルの件でやつれてしまった事を話してくれた。

 博士がやつれてしまう程の何かが見つかったって事?


「色々と衝撃だったというのは?」


「先ずはこれを見て欲しい」


 ユウマの問いに博士はラボの中で一番大きいモニターにフェンリルと思われるロボの内部をレントゲン撮影したものが写る。

 一見、何にも変哲もない色々な部品が組み込まれた内部が写し出されていた。


「これはフェンリルの内部を撮ったものだよ。君達には何か変か解るかね?」


 変?

 私はテノヒラロボや学校の授業で得た小型ロボに関しての知識はあるけど、内部、部品に関しての細かな知識はないから解らない。

 ユウマはどうだろうとユウマを見ると、ユウマは険しい表情で、ある部分、頭部を見ていた。


「このロボにはテノヒラロボいや全ての小型ロボに搭載が義務づけられているシンクロダイブ保護システムが搭載されていないようですね」


「さすが、ユウマくんだ。そう、このロボにはね、シンクロダイブの際、操縦者の精神を守る仮想空間を展開する為の装置、保護システムが搭載されていないんだ」


 ユウマが険しい表情のままで言った言葉は衝撃的なものだった。

 テノヒラロボを始め全ての小型ロボには精神を守るためのシステム、保護システムを搭載することは義務づけられている。

 保護システムを故意でも故意でなくても外した場合は逮捕されてしまう。それほど、重要な部品だ。


「この事実を知った時、僕は余りの衝撃に言葉が発せなかったよ。

 保護システムを付けないのは自殺行為だ!!

 それだけじゃない、このロボが付けていたスキルは全て殺傷出来るレベルまでの威力に改造されていた!!

 多くの違法改造ロボを見てきたがこれほど酷いものはない!!」


 普段は穏やかな江良博士が少しだけ声を荒げる。

 テノヒラロボを始め小型ロボの発展に力を注いでいる江良博士だからこそ怒りを隠しきれないのだろう。


「・・・・・・取り乱してすまない。

 もしこのロボで長時間戦ったら、操縦者も対戦相手もただ事では済まない。操縦者に至っては意識不明、廃人になってもおかしくない。

 あの時、マオくん、君程の実力者が相手をしなければ、きっと大変な事になっていただろう」


「・・・・・・そうですか」


「博士、僕達にこれを伝える為だけに呼んだ訳じゃないですよね?」


「ユウマ?」


「この違法ロボを作った者に心当たりあるのではないのですか?」


「・・・・・・・・・・・・」


 ユウマの問いに江良博士は黙ってしまう。

 黙ってしまった博士にユウマは舌打ちをする、江良博士に向かってやるなんて、相当、苛ついてる。

 ユウマは何かを知ってるの?


「博士、貴方が言わないのなら僕が言いましょう。


 このロボ、フェンリルを作ったのは貴方の元お弟子さん、僕とマオにテノヒラロボを教えてくれた、あの人じゃないんですか?」

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