第19話 次元が違う

「あのロボは、マオさんの・・・・・・」


 コロシアムに舞い降りた黒いロボを見た雪野マフユが呟く。

 あの黒いロボが、この世界の大麓マオのロボ。


『黒い翼を広げ現れたのは大麓マオ選手のロボ!! カゲカラスの黒曜だ~~~~~~!!!!!!』


――ウオォォォォォォ!!!!!!


 ジン・キョーの実況と一緒に観客達の歓声が響く。

 ちょっと待って、ジン・キョーさん! この試合も実況するつもりかよ!?

 さすが実況者の鑑って褒めて良いのだろうか・・・・・・?


 まあ、ジン・キョーの事は置いといて。

 カゲカラス、鴉と忍者をモチーフにしたスピード特化のテノヒラロボ。

 忍者のような動きと、鴉と黒い忍者服を元にしたデザインから人気が高いロボだけど、アニメ、漫画、共に出番はなかった(だけど、公式の人気投票で10位に入ったから立体化されてる。なお、ムギことネコノコバンは100位以内には入ってた)。

 出番がなかったのは漫画では中盤、アニメでは一期後半からレギュラー化した忍者キャラが扱うロボと被るからじゃないかと言われてたっけ、この世界にも居るんだろうか忍者キャラ。


「おい、なんだあれ」


「あんなロボ、知らないぞ」


「怖すぎるんだけど」


 観客達がザワついてる、何があったんだ?

 どうも、ストーカーヤンキーのロボでザワついてるみたい。

 カゲカラスの方に意識が行ってたから気にしてなかった、どんなロ・・・・・・、なにあれ。


 ストーカーヤンキーのロボはまるでガリガリに痩せた狂犬のようなロボだった。


 あんなテノヒラロボ、知らない。

 悪の組織が使いそうなロボだけど、悪の組織が使うロボにあんなロボいなかった。

 なんなの、あのロボ!?


「なんだ、あのロボは!?」


 雪野マフユもアタシと同じ反応をしてる。

 悪の組織のロボでもメタい事を言うと、テノヒラロボのターゲットは男児、広い定義で言うと子供だ。だから、登場するロボは子供受けしやすい外見がほとんど。

 ストーカーヤンキーのロボは、なんと言えばいいのか、一部の人には受ける外見だと思う。ぶっちゃけるとテノヒラロボにおいて、ストーカーヤンキーのロボは有り得ないデザインだ。


「ハハハ!! なんだ、ビビってるのか? このロボは、前のポンコツとは違うロボだ! その名もフェンリル!! 俺様に与えられたトクベツなロボって奴だ! ア~ハッハッハッハ!!」


 観客達の反応を見て高笑い。

 与えられたって事は誰かから貰ったってこと? それ以前に、ストーカーヤンキーは更生所からどうやって脱走したの? 考えれば考えるほど不穏な考えしか思い浮かばない。


 恐らくだけど、ストーカーヤンキーには協力者が居る。


 ガーディアンが管理する更生所を一人で脱走なんて出来るわけがない、そう考えると協力者が居ると考えられる。

 きっと、あのフェンリルとかいうロボも協力者から貰ったんだと思う。そうでなきゃ、辻褄が合わない。

 でも、何のために?

 アタシを狙ってる奴が居るとか? いやいや、それはない。絶対にない。


『両者。準備は良いかな? それじゃあ・・・・・・、バトルスタート!!』


 グチャグチャと考えてたら、バトルが始まった。

 考えるのを止めて、コロシアムを見る。

 カゲカラスと謎のロボ・フェンリル、どんなバトルになるんだ?


「くたばれ~~~~~~!!!!!!」


 ストーカーヤンキーが雄叫びを上げながらカゲカラスに突っ込んでいく。

 それなりに距離があったのに、一瞬で、たった一蹴りでカゲカラスの目の前まで!!


「アハハハハハ!!」


 高笑いしながら大きな口を開けてフェンリルはカゲカラスを襲う!!

 これは流石に避けられない!!


「黒曜、いつも通りに」


【はい。了解しました】


 ガシャリと何かが落ちる音が聞こえた。

 音の方を見ると、フェンリルがコロシアム外に!?

 今度は何が起きたの!?


『こ、これは・・・・・・。モニター!!』


 一瞬の出来事にジン・キョーは困惑しながらも冷静に何が起きたのか確認するためにコロシアム上に設置されているモニターを起動する。

 映し出された映像には、カゲカラスに噛みつこうとした直前に吹き飛ばされている事が解った。

 今度はその映像をスローモーションで再生される。


 スローモーションで再生された映像にはカゲカラスが数百という数の拳をフェンリルに叩き込んでいる映像が映し出された。


 嘘でしょ!?

 一瞬のうちにあれだけの拳を、スキルを使わずに出すなんて!!

 テノヒラロボは戦えば戦うほど、強くなるロボだ。アニメと漫画ではロボも学習して強くなっていく描写がある。だけど、スキルも使わずにあれだけの攻撃をするなんて初めて見た!!


『なななななんと!! マオ選手!! たった一瞬のうちに数百の拳を叩き込んでいた~~~~~~!!!!!!』


 映像が終わると観客達は大歓声を上げ、大麓マオの勝利を称えるマオコールが起こる。

 アタシはというと凄い事が起きてると解っているのだが理解が追いつけずポカンとしていた。

 逆に雪野マフユは感心しているようだ。

 凄く目がキラキラしてます。


「流石はユウマさんのライバルである人だ。それに、瞬殺のマオの二つ名は伊達じゃないな」


「瞬殺のマオ?」


「ああ、目にもとまらぬ速さで相手を仕留める戦闘スタイルから、そう呼ばれてるんだ。海外ではアサシン、暗殺者とも呼ばれているよ」


 雪野マフユの話から大麓マオはとんでもない人だと理解し、そして、こう思った。


 次元が違うと。

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