第18話 この世界の大麓マオ②

 控え室。


 備えられているテレビで阿久マサオの乱入から一通り見ていた勇気ユウマは大麓マオの行動に深い溜息を吐いた。


「はあ~・・・・・・。行かせて欲しいと強く言われたから許可したけど、ああいう事になるなら許可しなきゃ良かった」


 ユウマは幼馴染でライバルで恋人のマオがどんな行動を取るか解りきっていた。

 だけど、強く言われた事と警備員が配置され、また大勢の人が居るコロシアムの前でマオがに遭う確率は低いと考えた結果、自分から離れる事を許可したのだ。


「今はウダウダと言ってる暇はないな。俺も行くか」


 ユウマは観念したように立ち上がるとコロシアムへと向かう。

 皆の前では世界チャンピオンという肩書き含め、優等生として振る舞っているせいか正義感が強いと思われがちのユウマだが、実際は面倒くさがりの事なかれ主義だ。

 だけど、ある人物、大麓マオが関わっている場合は彼は積極的に関わる。

 理由はただ一つ、勇気ユウマは大麓マオを愛しているからだ。


――――――


※大麓マオ視点


 今頃、ユウマは頭を抱えてるだろうなと思いながら、私はダイブエリアに入る。


 最近はユウマの取材にずっと同行してたから、メンテナンスはしてたけどバトルするのは久々で少し緊張してしまう。


かしら、久々の試合に緊張してるのですか?】


 緊張しているのが伝わったのか、ロボフォンを通して私のパートナーが声をかけてきた。


「ええ、そうね。少し、緊張してるわね」


【ふふ、そうですか。貴方にしては珍しいですね】


「そういうはどうなの?」


【ワタクシですか? ワタクシは久しぶりの試合に気持ちは高ぶっております】


「そう、それなら、いつも通りで行くわよ」


【了解しました】


「マオくん、ダイブエリアの準備が完了したよ」


 会話を終えたら、丁度、ダイブエリアの調整が終わったみたい。

 声をかけてくれた江良博士にお礼を言い、私はシンクロダイブする為にロボフォンをダイブエリアと連結させた。


――――――


※溫井ホノオ視点。


 大麓マオ。

 世界チャンピオン・勇気ユウマのライバルであり勇気ユウマと唯一渡り合える事が出来るバトラーと称され、自身もユウマと渡り合えるのは自分しかいないと自負する。

 これには、母親とは幼い頃に死に別れ、父親が跡継ぎである長男にしか興味がなく、兄は無関心、想い合っていた幼馴染を兄に婚約者という形で奪われた大麓マオにとってテノヒラロボと勇気ユウマのライバルという肩書きは拠り所だった。

 そのせいか、勇気ユウマにしか興味がなく、それ以外には無関心、常に冷淡で氷のよう。

 だけど、主人公・ホノオに破れた事が切っ掛けで坂道を転がるが如く転落人生を歩むことになり引き籠もる、そして、勇気ユウマが発破をかける為に言った言葉、今の僕のライバルは溫井ホノオしかいないが引き金となり闇落ちしてしまう。


 これがアタシが知っている大麓マオというキャラクターの設定だ。


 アタシに代わってストーカーヤンキーと戦う、この世界の大麓マオと原作の大麓マオは全然違う、いや、性別が反転してる時点で全然違うよね。


 今、ダイブエリアの調整が終わって、漸く試合が始まろうとしていた。

 アタシは雪野マフユに支えられる形で観戦している(さすがに申し訳ないから大丈夫と言って離れようとしたら大丈夫じゃないと手を強く握られました。握られた手が痛いです)。


「準備はいいかい? ・・・・・・レッツダイブ!!!!!!」


 江良博士の掛け声と共にシンクロダイブが始まる。

 暫くして、コロシアムに一体の黒いロボが、黒い翼を象ったスキルを堂々と広げ、舞い降りるように現れた。

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