もう一人の転生者! その名は大麓マオ!!

第16話 乱入者

「あの人、どうして此処に!? 更生所に居ると聞いたのに!!」


 観客席に居るハナが乱入してきた男、阿久マサオを見るやいなや嫌悪を露わにし、ヒバナは初対面の時に蹴られた事を思い出したのかハナの袖を掴むとハナは掴んできたヒバナの手を優しく握った。


「ハナちゃん、彼奴の事を知ってるの?」


「はい。忘れもしません。私とホノオちゃんが出会う切っ掛けになった人でもありますから・・・・・・」


「もしかして、ホノオが成敗したっていうストーカー?」


「ええ、そうです。あの後、ロボを違法改造し使用した為、まだ未成年なのでガーディアンが運営する更生所へ送られたと聞いてます」


「それじゃあ、彼奴、更生所を脱走して此処に来たって事!? 全っ然、反省してないじゃない!!

 あんな奴に目を付けられるなんて、ホノオは大丈夫なのかしら?」


 ハナの言葉にチヨは怒りの声を上げると同時にホノオを心配する。


 コロシアムではホノオを守るようにマフユと江良博士が阿久マサオに立ちはだかっている状態が続いていた。


――――――


 エントリーで並んでるときに聞こえた話で嫌な予感を感じてたけど、まさか当たるとは思わなかった。

 面倒な事になる前に、アタシがコイツと戦えばいい。

 そう考えて立ち上がろうとしたら。


「あれ?」


 立ち上がれない。

 ムギの所にまで行けたのにどうして?


「ホノオさん! 今頃になって強制退場のダメージが来たようだね」


「強制退場の?」


 なにそれ、アタシ知らないんですけど??

 雪野マフユ曰く、強制退場はロボと繋がってる精神を無理矢理に切る方法でやるから精神にダメージが多少ではあるが来るらしい。

 試合後、心配そうに駆け寄ってきたのはそういう事か。


「アハハハ!! それなら都合が良い!! 今の状態のお前なら絶対に勝てる!! 俺様と戦え!!!!!!」


 どうやら話を聞いていたストーカーヤンキーが高らかにそう言い放った。

 コイツ、全然、これぽっちも反省してねえわ。呆れた。


「ふざけるな!! 今のホノオさんと戦う!? ホノオさんは立ち上がれないほどのダメージを負っているんだぞ!!」


「それがどうした!? 勝てば良いんだよ!! 勝てば!!!!!!」


――ふざけるな!!


――正々堂々と戦え!!


――卑怯者!!


「うるせえ奴等だな!! 外野は黙ってろ!! どんな手を使っても俺様は彼奴を!! 溫井ホノオに勝つんだ!! 勝って、寧々子さんに認めてもらうんだ!!!!!!」


 観客席からストーカーヤンキーに向けて大ブーイング、そんな中でアタシを倒すことと寧々子さんに認めてもらいたい事を誇らしげに語るのは場違いどころじゃない。

 本当にコイツは反省してない、アタシを倒せば寧々子さんに認められると本気で思ってる。

 きっと、アタシと戦わない限り動きそうもないけどアタシは動けないし戦うって言ったら止められそう、この状況、どうやって止めればいいの?


「救いようがない人ね」


「あ゛!?」


 緊迫した空気の中で響く、凜々しい声。

 コツコツと靴音を響かせながら、雪野マフユ、江良博士よりも前に出て、ストーカーヤンキーを見据えたその人は。


「溫井さんは動けない、そんなに戦いたいのなら私が相手してあげる」


 大麓マオさんだった。

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