第2話 見知らぬ場所

 有栖佑樹は硬い土の上で目を覚ました。


 自分がどこに居るのか、何故気を失っていたのか、記憶が曖昧だった。確か大きな木の下で雨宿りをしてそれから...ハッと思い出した。落雷にあったんだと。やっぱり木の下が良くなかったんだと思いながら周りを見渡す。


 そこでやっと気付いた。


「ここどこだよ...」


 雨宿りしていた木も無いし、雨も降って無い。というより周りの景色に見覚えが無い。見た感じ、どこかの山の中のようだと思った。途方に暮れていると、


「ウーーン...」


 誰かの声が聞こえた。驚いて声のした方に向かうと、女子高生が倒れていた。さっきの女の子だ。彼女も落雷にあったらしい。急いで駆け寄り肩を揺する。


「おい、君。大丈夫か?」


 すると女の子がゆっくりと目を開ける。そして驚いたような顔で見上げてきた。


「えっ!? あの...私...なんで!?」


 かなり混乱しているようだ。無理も無いだろう。自分だって混乱しているんだから。


「覚えてないか? 雨宿りしていた時、何があったか」


「あ、落雷?」


「あぁ、多分そうだと思う」


「でもここは一体...」


 少女が周りを見渡しながら聞いてきた。


「分からない。俺も気が付いたらここに居たんだ。どうやらどこかの山の中みたいなんだが、なんでこんな所に居るのやら見当もつかない」


 すると女の子は何か心当たりがあるのか、


「もしかしたら...ここは異世界なんじゃないでしょうか...」


 と言った。


「は? 異世界?」


 そんなバカな、小説やマンガじゃあるまいし。と否定しようとした有栖佑樹の耳に、何やら獣の鳴き声が聞こえた。


「ブヒブヒッ!」


 豚? そう思った瞬間、前方にある茂みがゴソゴソと音を立てた。そして、


「ブヒィッ!」


 茂みの中から現れたのは巨大な猪だった。牛くらいの大きさがある。しかも額の所に鋭く尖った角が生えている。猪ってこんなだったっけ? 思わず現実逃避したくなるくらい異様な姿だった。


 しかもその猪? はしきりに後ろ足を蹴っている。嫌な予感がした。そういう予感程良く当たるもので、


「ブヒィッ!」


 もう一度甲高く鳴いた猪が凄い勢いで突っ込んで来た。


「危ないっ!」


 有栖佑樹は咄嗟に女の子を庇って抱き抱えるように倒れ込んだ。衝撃に耐えようと目を瞑るが、いつまで経っても衝撃は襲って来ない。恐る恐る目を開けてみると、何故か猪が倒れていた。


 そして有栖佑樹の目の前の空間には、透明な膜のようなものが何時の間にか張られていた。


「なんだよこれ...」


 有栖佑樹の問い掛けに答えてくれる者は誰も居なかった。

 

 

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