第18話 リムのポンドってどのくらいから強いって言うの?

 早速部活が始まった。

 アーチェリーという競技はある程度の筋力がないと弓さえも引けないらしい。幸い、俺は筋力だけはそこそこあったから三週間~1ヶ月くらい筋トレしてれば弓は引けるようになるそう。


 それでも十分長いけどね。


 部員の方が言うには弓を引くことでしか鍛えることの出来ない筋肉があるらしい。中々難儀だな。


 というわけで部活初日の練習メニューはアーチェリー部伝統の筋トレメニューと弓の素引きだった。


「素引き」というのは弓に矢を番えていない状態で弓を引くこと。これが凄い筋肉に効く。こりゃ明日は筋肉痛だって感じ。


 そして自分の弓具はどんなものを買うかって感じで弓具のカタログと同意書を渡された。弓具は本当に高価だからこういうのが必要なんだよな。




 で、今は部活が終わって高瀬と若林を待ってる感じ。


 ボケーッとして待ってると若林から連絡が入った。

『遅くなりそうだからお前らで先帰っとけ。😇😇😇😇😇😇😇😇😇😇😇😇😇😇😇😇』


 絵文字連打するなよ。見にくいだろ。

 まあ、若林は来れないなるほどって事で、後は高瀬を待つだけ。


 それから10分程経つと高瀬は待ち合わせ場所に来た。

「ごめーん!ちょっと遅れちゃって!」


「いーや、大丈夫。俺って時間にルーズだから幾らでも待てるから。」


「それはどうかと思うけどね。」


「ハハハッ!まあそりゃあそうだよなあ。」


「そんな100日後にタヒぬワニみたいな笑い方しなくても。」


「ツッコミうま。あ、若林遅くなるから先に帰っとけって言ってた。帰るか。」


「そうだね。」


「こうして俺たちは帰路を辿るのであった。」


「ツッコミしにくいなぁ。」


「俺は君の笑顔が見れるだけで十分なんだ、ツッコミなんていらないのさ。」


「棒読みじゃなかったらよかったのに~。」


 高校生らしい茶番をしながら俺たちは帰路を辿った。


 すると遠くから声が聞こえてきた。

『……き合って下さい!』


 き合って下さい?……オイオイオイ告白じゃねえか!見に行くしかないだろ!

「高瀬!今の聞こえたか!」


「なんか男の人の声聞こえたね。」


「あれは絶対告白だ、見に行くぞ。声の聞こえた方角から考えるとあの体育館裏だ。いくぞ!」


 それにしても皆体育館裏好きだね。人気すぎね。


『じ、じゃあどうして!』


「え…フラれた?」


「そうっぽいね。」


「と、兎に角!もうすぐ近くまで着くから!」


「そうだね!」


 着いたよ、フラれたって聞いたら罪悪感が湧いてくるけど気になるよね。それが人間の性なのよ。


『す、好きな人が他にいるわけじゃないんですよね……?』


『そ、それは…そうなんですが…。』


『じゃあ付き合ってくれよ!』


『で、でも……』


『いいじゃんか!』


『そう言われても…』


 あー、こりゃしつこいね。ってよく見たら三輪先輩じゃん。すげえな、けどそれなりに美人だもんな。いや、それなりにって言っちゃ駄目だろう。美人だ。もう言い切った。


『くっそ……こっちが下手に出れば……ちょっとこっちに来てくれ!』


『っえ!』


 手首を強引に掴んでどこかに連れていこうとしてるだと!?漫画かよ!?なんか最近の俺凄い人助けしてない!?


 いや、席替えした後の席も窓際の一番後ろっていう主人公の席だけど、もしかして俺に主人公waveキテんじゃない!?乗るしかないこのビッグウェーブに!いや、そんなことより!


「あー!止めておいた方がいいんじゃないですか!」


「ひら……」


「んあ?誰?お前見てたの?じゃあお前もこっち来いよ。ちょっとアレやったるから。」


「おそらく先輩ですよね、言いたいことがあるんですよ。」


「は?」


「いやねえ、そうやって強引にやっても彼女は振り向いてくれないでしょう?」


「だからなんだよ、こういうやり方だってあるかもしれんだろう。」


「僕の小学校三年の時の担任の清先生が言ってたんですよ『しつこい男は嫌われる。』って。つまり一旦ここは手を引いて自分の良いとことかカッコいいとこ一杯見せて、好感度を上げた上で告白。これが理想なんですよ。見た感じあの三輪さんもタジタジだった様子なんであんまり接点がない人に告白されてる感じかな~って思ったんでこういうアドバイスしとこうかなって思ったんですよ。いきなり大して仲良くない人に告白されるってびっくりしません?『はい!その告白、喜んでお受けします!』ってならなくないですか?」


「それはまあ…そうだな。」


「でしょう?良いですか?告白は戦術です。入念に準備期間を過ごした上での告白です。気持ちだけで告白が成功するなら世の中カップルだらけですよ。だからこれからあなたは良いとこ見せる!を意識して生活してみてくださいよ。ここで乱暴な行動を取れば台無しですよ。」


「そ、そうだな。」


「はい。」


「確かに、ちょっと気が動転してたよ。緊張してたって事もあって頭が真っ白になって俺自身、何やってるか自分でも分かんなかったとこだったんだ。君のお陰だ。ちょっと最初から悪いとこ見せてスタートラインがかなり遠退いた感じするけど頑張るわ。」


「そうしてください。」


「三輪さん!すいませんでした!」


「い、いや…か、改心してくれたなら…」


「良かった!では!」


 男の人は去っていった…。

 主人公やっちゃったな、俺。

 けど、主人公はガツン!と言うのが主流みたいなとこあるから今のは失格かなぁ?


「あの、平本くん。」


「はい?」


「ありがとう。」


「いやいや、当然のことをしたまでです。」

 テンプレだ。こういうとき本当に何言えば良いのか分からないな。


「助かった、だから本当にありがとう。」


「いえいえ、あの先輩も改心したっぽいんで。気をつけて下さいね。では、これで。」


「うん、平本君も気をつけてね。」


「はい。」


 ちょっと……

 緊張したな。あんな感じのんて告白する側が最初からあんな風にしてる訳じゃないんだよな。向こう側も緊張してんだ。


「平本君。」


「何?」


「凄かったね。」


「いやいや、高瀬のときのに比べたらまだマシじゃないか?」


「そうなのかな?」


「そうだよ、きっとね。」









 ~高瀬side~


 やっぱりこういう所かもしれないんだよなぁ。















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更新遅れました、ごめんなさい。

定期考査がそろそろなので頻度が落ちます。ご了承ください。

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