「直観」は疑うぐらいがちょうどいい。

かなたろー

「直観」で動いて、危うく詐欺にかかりそうになった話。

 Amazonから、おもむろにメッセージが届いた。


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 Amazonプライム会費のお支払い方法に問題があります。

 詳細はこちら。http://www.amazon-wic.date/

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 僕は「しまった」と思った。


 うっかり、またAmazonプライム会員になってしまったのかと思った。

 過去何回も、うっかりAmazonプライム会員になって、苦労して退会しているのだ。


 僕は焦ってイラつきながら、リンクを押した。

 リンク先では、住所とメールアドレスと電話番号を再登録をしろと言ってきた。


 僕はイライラしながら、住所とメールアドレスと電話番号を入れた。

 本当にイライラした。特に電話番号入力に本当にイライラした。

 数字の「7」を一文字入れると、何故か「77」と入力される。


 イライラした。


 ふと妻を見ると、妻はイライライラしていた。

 そしてイライライラと怒りながら僕に言い放った。


「Amazonがそんなメッセージよこす訳ないでしょう! 詐欺だよそれ!!」


 僕は、妻の言葉が信じられず、イライライライラしながら、Amazonのブックマークをクリックした。


 スマホには秒でAmazonの公式サイトを表示した。


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 注目のタイムセール


 【本日限定】Bluetoothイヤホンがお買い得

 ¥3,749

 残り時間 15:32

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 僕は、わざとらしくカウントダウンをして煽ってくる『注目のタイムセール』に、イライライライラしながらスマホから目を外すと、妻が、僕の顔をイライライライラしながら見ていた。


 僕は心が「スンッ」と落ち着くと、妻に頭を下げた。


「ありがとうございます」

「どういたしまして」


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 心理学者カール・グスタフ・ユングが提案した「タイプ論」がある。

 これを礎にした、進化と言うか派生した「タイプ論」も結構いろいろある。


 面倒くさいのでいろいろ端折るが、「タイプ論」には8つのタイプがある。

 面倒くさいのでとにかく端折るが、僕はその8つのタイプ中の「内向型直観」を主機能に持つ。


 「内向型直観」はボーッとする人である。ボーッと想像を巡らせて、なんか考える人である。私はこれまで「内向型直観」には随分と助けられた。


 仕事で随分と助けられた。

 ボーッと考えた企画が採用されてプロジェクトが動いたこともある。

 ある運営サービスのUIをボーッと眺めて、UIの致命的欠陥を改善できたこともある。

 ある運営サービスの顧客データを見て、サービスの定点観測に最適な、KPI(重要業績評価指標)を発見できたこともある。


 「内向型直観」は仕事ではすごく役にたつ。


 ただ、私生活ではびっくりするほど役に立たない。

 本当にびっくりするほど役に立たない。

 妻曰く、本当に役に立たない。

 ボーッとして本当に役に立たない。


 そして妻は、ボーッした私を観察することで、ある法則を発見した。


「イライラしてる時は、大抵、やってる事が間違っている」


 大抵どころの騒ぎじゃない、この法則はビックリするほど当たる。


 「内向型直観」はボーッっとする人である。ボーッと想像を巡らせて、なんか考える人である。

 ボーッっとする人が、イライラしている時は怪しい。

 これはとても怪しい。

 本当に怪しい。


 「内向型直観」の人は「外向的感覚」がすこぶる苦手だ。

 面倒くさいのでいろいろ端折るが、「外向的感覚」がすこぶる苦手な人は、自分が周囲にどのように写っているか、客観視するのがとにかく苦手だ。

 はたから見て、明らかに滑稽なのに、そのことに気づいていない事が往々にしてある。


 「タイプ論」には8つのタイプがある。


 面倒くさいのでとにかく端折るが、妻はその8つのタイプ中の「内向型感覚」を主機能に持つ。

 「内向型感覚」は、あるものをあるがまま、正しく正確に把握して判断できる。


 すなわち「客観」の能力だ。


 つまり妻は、僕のイライラした気持ちの悪い姿を見て、「なんか間違ってる」と極々冷静に客観的に判断をして、イライライライラしながら、僕のことを怒鳴りつけたのだ。


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 僕は、改めて妻に礼をした。


「ありがとうございます」

「どういたしまして」

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「直観」は疑うぐらいがちょうどいい。 かなたろー @kanataro_

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