第18話 ファミレス

 近所と言うほどでは無いが、車を使って美空とファミレスに行く。

 料理とドリンクバーを注文して、料理が来るまでの間、気に成った事を聞いて見る。


「美空って、前の記憶は殆ど無いのだよね?」


「……有ったら、喋っているわよ!」

「どこの町に住んでいたかも分からないし、両親の顔も思い出せない…」

「覚えているのは曖昧あいまいな記憶だけ!」


「でも、その割には箸を使ったり、普通の生活が出来て居るよね?」

「一般常識も有りそうだし」


「……まぁ、そこがご都合主義なのよ!」

「あなただって、生まれたての赤ん坊の知識・動作が出来ない大人が現れても困るでしょう!」

「私だって、そんな嫌よ!」


「まぁ……それも、そうだけど…」

「話は変えるけど、美空の魔法って……物を動かしたり・止めたり出来るって言っていたはずだけど、俺のスマートフォンと玄関が開かなかったのも魔法の所為?」


「ええ、そうよ!」

「動作を止めたり・作動させる魔法。物も動かせるけど、数百gが限界だったはず…」

「開く・閉まるも動作だからね。電話に関しては……アプリだったから良かったけど、アナログ回線だったら防げなかったかも?」


「えっ……何で?」


「電話は(架)掛けるだからだよ」

「(架)掛けるは動作では無い。機械的・物理部分の動作を抑えれば別だけど、でも最近の電話はプログラムで動作している。だから、実行出来ないように動作を止めた」


「あっ、そう言う事…」

「じゃあ、やる気が有れば、ミサイルシステムのプログラム動作も出来るの?」


「もちろん出来るけど1つ条件が有って、それは私がその物に触れて発動させる事。解除は付近で良いのだけどね」


「私が怪我の確認をしている時に、玄関が開かないように魔法を掛けたし、スマートフォンに対しては、あなたの隙を見て掛けた」


「あぁ…、成る程。そう言った原理なんだ!」

「動作だから、水や電気も同じように出来るの?」


「それは無理よ……。水や電気は流れているから」

「でも、水のバルブの開閉やブレーカーの開閉は出来るはずだけど、意味が有るかしら?」


「普段の生活では必要なさそうだね…」

「工場とかのバルブは良く固着しているから、美空が居れば便利そうだけど!」


「私はこの姿で生活をする気は無いわ!」

「それにそんな使い方をし出したら、あの方が怒って魔法を取り上げるかも知れないし…」


 美空の知らない所を色々聞いている内に料理が運ばれて来る。

 料理を食べている間は、質問は止めて食事に集中する。

 美空は美味しいそうに料理を食べていた。


 ファミレスでこんな話をしてしまったが、周りの席の人達はきっと、ゲームか何かの話をしているだと思って居るはずだ。

 俺も嘘だと信じたいが、実際に電話アプリは落ちたし、玄関も開かなかったし、謎の頭痛攻撃もされた。信じたくは無いが信じるしか無い。


 食事後はドリンクバーを楽しんで、気に成った事は全部聞いた。

 美空は嫌な顔を1つもせずに答えてくれた。口は悪いが意外に優しい子なのかも知れない……


 ファミレスで食事を終えた後は、美空からの具現ぐげんにより、本屋に寄って求人誌を買ってからスーパーに向かい、久しぶりの生鮮食品や肉類を買い、美空と共に家に戻る。

 食べ物に関しては、魔法では調達出来ないらしい。食べ物は食品で有って日用品では無いからだ。


 これが俺の望んだ道で有る。

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