第15話 あり得ない世界

 俺はしばらく考える……。この子は性格は悪そうだが、元の人形が可愛い人形だったので、人に成ってもそれは継承されている。

 性行為も出来るみたいだし『俺の嫁に成ってくれ』と言いたいが、その子は俺とは一緒に居たくは無くて、本来の場所に帰りたいとの事だ。


 いっそ、この子と性行為をして思い出を作っても良いが、望みを叶えた事に成って、あの子は何処かに行くだろうが、俺は何も変わらない……


 魔法? が使えるなら、俺を何処かの異世界に飛ばして貰うのはどうだろうか?

 現世では駄目人間でも、異世界に行ったらヒーローに成れてハーレムに成った人達は本の中では沢山居る。もし、それが出来るなら俺もそうなりたい!!

 こんな世界信じたくは無いが、現に起きている。もう、こうなったら信じても良いだろう。


「ねぇ、魔法ってどんな魔法が使えるの?」

「俺が異世界に行って、ヒーローに成れる魔法とかは有るの!」


 俺は期待を膨らませながらその子に聞くが、その子は冷たい口調で返答した。


「あなたって、夢見る夢子ちゃん?」

「異世界なんて有る訳無いじゃん。バカ?」


「えっ、でも、魔法使えるんでしょ!」

「なら、チート魔法は無い?」

「未来が分かる魔法とか、俺の周り居る優秀な人間を消す魔法とか、俺が有力者や権力者に成れる魔法とかは無いの!?」


 その子は大きなため息をつく。


「はぁ~~~」

「あなたって、何も分かって無いわね」

「あの方が、そんな能力持っている訳無いじゃない!」


「君がそう言っても、俺はあの方なんて知らないから…」


「私が出来る魔法は限られていて、あなたの頭に苦痛を与える。あなたの心臓を止める。動作を与えたり・止めたりする事位よ!」

「あっ、後は、私だけの衣類とか日用品を出す魔法かな?」


「えっ、たった、それだけ…」


「あなたは、私に何を望んでいるのよ…」


「いや……魔法が使えると聞いたから、ラノベの世界に成るかなと思って…」


 すると、その子が捲し立ててきた。


「あなたねぇ、現実を見なさいよ!」

「頭がお花畑だから、夢を見るのよ!!」

「間抜けな事ばかり言っていると、心臓止めるわよ!!」


「あっ、すいません!」


 心臓を止められたら、それは『死』を意味する事なので直ぐに謝る。

 魔法が使えると言った割には、俺を攻撃する魔法と物を動かしたり、止めたりする程度の魔法しか使えない。余り旨みの無い魔法だな。

 でも、あの子の衣類・日用品が出る魔法は有り難いかな。


 そうすると、やはり俺はまだ夢を見ているのか?

 何時に成ったら覚めるのだろうか? 

 さっきの激しい頭痛でも目が覚めなかったから、これが夢なら余程の悪夢だろう。


(俺はこの子に何を望むのだろうか?)

(この子が俺の側に居れば、俺は本当に立ち直れるのだろうか?)


「俺の望み聞いてくれる?」


「やっと、決まった?」

「早く、言って!!」


 その子は『やっと、決まったか』の表情をする。


「……俺の人生を立て直して欲しい。俺1人の力では限界だ!」

「だから、しばらく君と一緒に生活をして、俺を立ち直らせてくれ!!」


 その子は、表情を特に変える事無く聞いてくる。


「……そんなお願いで良いの?」

「分かった…。最後に聞くけど、本当にそれで良いのね?」

「変更は出来ないよ!」


「あぁ、それが俺の望みだ!」


 こうして、人形から人に成った子!? としばらく生活する事になった。

 あり得ない世界があり得ている。しかし、俺はそれを受け入れるしか無かった……

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