第5話 再来(2)

「伯。お前は大丈夫だな?」

「うん。大丈夫だよ。兄さん。」

 なつめは隣に立つ弟・はくの無事を確認しほっとした。


 この場には7人がいる。大人5人。子供2人。

 森羅の里・7代目頭首である朱伎を筆頭に四聖人の華山。黒色の髪に黒色の瞳の落ち着いた雰囲気を持つ男。森羅の里・四聖人・北の守人として四聖人の長を努める。北の守人として大地を護る力を司る玄武の力を継承する。

 四聖人は、その人生を頭首に捧げ里を護るために生きることを頭首の血に誓っている4人の精鋭だ。頭首の代替わりか己が死ぬ時まで頭首と運命を共にする。頭首の役目は四聖人と共にその人生を、その生命を懸けて里を護ることに他ならない。


 棗は栗色の髪と瞳の青年で四聖人の1人だ。年は朱伎に近く二十三。どこか生意気そうな幼い顔立ちの青年だ。森羅の里・四聖人・東の守人であり水を護る力を司る青龍の力を継承する。四聖人の中では一番若いが実力は確かだ。


 夏輝は黒色の髪に灰色の瞳の男性。里の学校の教師であり、子供たちの任務に付き添うことを許可された数少ない上長でもある。少し気の弱そうな男性だが、上長としてどんな状況にも対応し子供たちの安全を護る実力を持つ。


 平良は金色の髪に青色の瞳の青年で夏輝の部下。年は離れているが相棒として常に行動を共にしている。

 森羅の里では任務に出る場合、常に相棒と行動を取ることが掟となっている。

 チームを組んで任務を行うことも多い。特別な場合を除き単独で動くことはない。


 子供の1人は伯。栗色の髪に黒色の瞳。棗の弟で年は十二。少女のようなキレイな顔立ちをしている。本人はその事を気にしている。

 もう1人は旭陽。金色の髪に緑色の瞳の十二歳の少女だ。おっとりした雰囲気の少女だが不思議な力を持っている。


 須磨は黒色の髪と瞳の中年の男性。落ち着いた雰囲気の中に鋭い眼光を持つ。底知れない何かを持っているように思えた。

 テンは黒色の髪に青色の瞳の少し生意気そうな顔つきの青年だ。


 須磨とテンは順国からの使者として森羅の里で警護官の仕事や訓練の方法を学ぶためにやって来た。半年の予定を終えて国へ帰る途中だった。2人を無事に順国まで送り届けることが伯と旭陽の任務で夏輝と平良は付き添いだった。


 今いる場所は、里から歩いて3時間ほどの位置。森羅の里の管轄になっている道幅の狭い山の中だ。森羅の里は奥深い山の中に存在している。里へは里の人間の案内がなければ入ることも出ることも不可能に近い。


 深い山間に位置していることに加え、朱伎の結界が護っているために出入りは制限される。里の人間以外が出入りする場合は許可が必要だ。


 この場所は朱伎の保護下であるため、他の国の者は決して手を出すことはできない。手を出せば最後。森羅の里を敵に回すことになる。それだけは避けたいのが隣国の願いだ。

 そういう特別な里であるはずだったが、その場所で事件が起きた。あり得ないことだった。


「これでいいだろう。崋山。夏輝は?」

「大丈夫です。」

朱伎は平良の治療を終え静かにため息をついて崋山に問いかけた。

崋山は問題ないと頷いた。


「では崋山。お前が彼らを無事に送り届けろ。できるなら私が行きたいが…。さすがに無理だりう?」

朱伎は崋山に問いかけた。


分かっているが無理を言ってみた。この状況で自分が里を離れることはできない。何をおいても里を護ることが頭首の責任だ。自由に動けない立場であることに不自由を感じることもあるが、それでも里を護ることが自分の願いだ。


「この状況で貴方が里を離れるわけにはいきませんよ。まずはこの状況に対処する必要があります。」

崋山は落ち着いた口調ではっきりと言った。


目の前に立つ頭首を見つめる。彼女の願いは分かるが里を護ることを第一に考えれば、頭首が里を離れることはあってはならない。









  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る