第8話 再会と変態

 夕食が終わり店を出ると、外はすっかり暗くなっていた。

 四人は雑談しながら宿へと向かう。

 取り敢えず、これからの計画を四人で話し合わないとならなかった。

 残りのメンバーを探す事、どうやって元の世界に戻るのかを調べる事。

 さしあたっては、この国の女王に会う事。


 大通りから一本入って人通りが少なくなった所で、事態は彼方あちらから勝手に動き出した。

 ぞろぞろと王国兵が現れて周りを取り囲まれてしまう。


「おい、神妙にしろ! 抵抗するなよ! 大人しくお縄につけ!」

 隊長らしき人物が命令する。


「何だ、この人達?」

「土御門君、王国兵ですよ」

 杏子が呟く。


 こちらはチートスキル持ちが三人も居るから、多分誰にも負ける事は無いだろうけど、できれば誰も傷つけずに収めたいんだよな。

 この世界はまるでゲームみたいだけど、モンスターと違って人間を殺すのはダメだと思う。

 設定がゲームみたいなだけで、この世界に存在している人間は、とてもNPCには見えないから。


「何か用ですか?」

「そこの男! おまえはハルチカだな? 女王陛下が御呼びだ。大人しく城まで来てもらうぞ。というか抵抗されると困る。陛下には傷一つ付けずに丁重に連れて来るように命じられているのだ」


 隊長さしき人物の発言で、疑惑は確信へと変わる。


「ねえ、ここの女王って、絶対渚様だよね?」

「それな、アタシもそうじゃないかと思ってたんだよ」

「絶対、渚っちだよね。うちもそう思う」

「私も実際に女王に会った事はないのですが、噂を聞くところによると大嶽さんにそっくりみたいですよ」


 全員の意見が一致した。


「女王に会いたい。付いて行くから案内してくれ」


 四人は王国兵に連れられ城へと入って行く。

 これが例え罠だったとしても、最強のチートスキル持ちが三人も居るのだから、誰にも負けないという安心感があった。


 王城に入ると、控室のような場所に通され、春近だけが女王への謁見が叶うのだと言って、春近一人を連れて行こうとする。


「え~っ、うちも渚っちに会いたいっ!」

「あいちゃん、ちょっと待っててね。渚様に説明して会えるようにするから」


「おい、ハル一人だと危険だぞ」

「咲、相手は渚様だから心配いらないよ」

「渚だから心配なんだよ!」


 春近と咲の間で危険の意味が少し違っているようだ。


「もう、どうなっても知らねえからな」

「じゃあ皆、ちょっと行ってくるね」




 呼ばれたのは女王の間ではなく、女王の寝室だった。

 春近が部屋に入ると、そこには女王のドレスを着た渚が座っている。

 もう女王の衣装が似合い過ぎて、何処から見ても女王だ。

 渚は感極まったような表情で立ち上がると、凄い勢いで春とかの元までやって来る。


「ははは、春近! ホントに春近なの? 春近よねっ! 春近!」

「あ、あの、渚様……お久しぶりです」


「ちょっと、人払いを!」

「畏まりました」

 渚の一言で部屋にいた側近とメイドが急いで退出し、厚いドアが閉められ二人っきりになった。


「春近、この世界で一人にされて、あたしがどんだけ寂しかったか分かってる?」

「それは分かりますけど……こっちも大変だったんですよ」

「まあ、良いわ。取り敢えずお仕置きよ。あたしの足を舐めなさい!」


 渚はベッドに腰かけると、ブーツを脱ぎ足を組んで美しい脚線美を見せつける。

 全ての動きが流麗で、美しい脚から目が離せなくなってしまう。


「さあ、舐めなさいっ!」

「あ、あの、渚様……感動の再会に先ずソレですか? 変態過ぎますよ」

「はあ? 変態はどっちよ! 先ずは服従の証として足を舐めて、それからじっくり調教でしょ!」

「でしょって言われても、そんな再会の儀式は初めてです」

「ふーん、じゃあ舐めなくても良いんだ?」


 ぐはっ、何故だ! そう言われると舐めたくなってしまうような……

 ゴクリッ、渚様の美しく魅惑的な脚……たまらん……

 見れば見る程、吸い寄せられてしまいそうだ……

 ダメだ! そんな事ばかりしていたら変態になってしまう!

 オレは変態にはならないぞっ!(すでに手遅れです)



 渚は目の前の春近を見て、心の中では歓喜に踊りだし抱きつきたいのを我慢して、春近が足を舐めるのを待っていた。

 春近は渚の足に吸い寄せられるように近付き、美しく伸びる足の前にひざまずく。


 ダメだ……渚様の目を見たり声を聞くと、もう体の芯まで服従してしまいたくなってしまう。

 渚様は元の世界でもドS女王なのに、異世界に来てもドS女王なのかっ!

 なんて女王体質な女子なんだ!


 目の前の白い足を手に取り顔を近づけて、そのまま服従のキスをする。

 渚は心底嬉しそうな表情で、その光景を見下ろしていた。


「さあ、そのまま丁寧に指一本ずつ綺麗に舐めるのよ」


 興奮で少し上気した顔をして、更に変態チックな命令をしようとした時、急に厚いドアが勢いよく開いて仲間が飛び込んで来た。

 春近が飛び跳ねて渚との距離を取る。


「渚っち、ひさしぶりーっ!」

「あい……あと少し遅く来てくれても……」


 感動の再会になるはずが、春近とのエチエチタイムを邪魔されて少し不満そうな顔になってしまった。

 春近の方は、変態的なシーンを見られていないか気が気でない。


「おいハル、渚とエッチなコトしてなかっただろうな?」

「えっと、何でもない……」

「あやしい……」

 咲に怪しまれてしまう。


「土御門君、私のスキル鑑定Lv.10で分かったのですが、この城の衛兵達のレベルが8くらいなので、レベル120の皆さんを止めれる人は居ませんよ」

「確かに……もう何でもアリだな」


「春近、そういえば、この世界に召喚された理由を王国の側近から聞いたのだけど」

 渚様……足舐めさせる前に、それを先に説明してくださいよ……


 果たして、この世界に召喚された理由とは――――


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異世界転移したら職業調教師 最強ヒロイン達を使役して天下統一します みなもと十華@書籍化決定 @minamoto_toka

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