第5話入りゆくや落葉松


(記2021/3/14)

引用句「入りゆくや落葉松(からまつ)未知の青籠めて」(橋本多佳子 命終,261)


(読みかた:いりゆくや からまつ みちのあお こめて)


落葉松からまつの林で数振りの宝剣「矛盾丸」をお鍛えになった宝剣匠さま。落葉松にも悲喜こもごもの記憶は刻まれていて、その歴史に学ぶところ・感じるモノは一人一人異なると思う。様ざまな記憶が刻まれた落葉松林、だけど共通する記憶もある筈。記憶が多くの人に共有されるとき地域文化となり、民族文化へと拡大し、そして人間文化へ発展するのかもしれない。もちろん泡の想像‥泡にはそう想える。萬葉集も「縁語えんご」でまれている気がする。縁語は共通感覚・共有の記憶‥違った?


落葉松の林に入ったら共有する記憶が呼び起される。長居ながい)したくない所、淋しい侘《わびしい所、そんな場所の落葉松は泣いてそう・友を恋しがって呼んでいそう。樹々も生き物も通る人も、辛《つら)い想いを分けあっていって当然ね‥人も動物も草木も互いを慰めあわなければならない‥とっても心やさしい文化に違いない。みんなで泣きながら生きていこうね‥泡は哀しいとき激しい孤独を覚える。児が泣くとき母は泣きたい。母が泣くとき児も吊られて泣く。それしか知らないものね?


共に泣くことしか出来ないのだもの、ほかにどうしたら好いのよ‥って泡も思う。あなたもそうでしょう?うまいセリフでも掛けられたらそうしてるさ‥でしょ?みんなに共通の感覚が具わっている。その感覚の一つが「じょう」だよね。いっしょに泣いてくれる人を好きになるのよね。ナンとか成りそうなら?励ますんだ。強い口調で「泣くな」と励まし、「負けるな」と叱りつけたり、だけど泡に体力のないのを知ってた母はどうするの?黙って耐えるしかないと知ってたら・母は悔しかっただろうな。


母は泡に分りやすく教えてくれた。泡の母が泣いたことはなかったし、ツライと嘆いたことは一度もなかった。だから自分の背中で教えるしかなかったのね。泡は泣き虫だけど、口と文字で教えることにしているけれど、それは耐えてばかりいられないって思ってるから。共に泣く・共に笑う‥泡の哲学。だから泡をいじめるヤツとは共に泣いてやる・泡にやさしい人とは共に笑えるように頑張る。おなじ人間同士だもの「共に」の関係が好き。泡はやさしくないって、あなたにもバレチャッタね。


カラマツ林の小道の先に希望がいっぱい輝いてるのが好いな。喧嘩して・共に不幸になっても詰らないもの。だったらどうする?落葉松林でトンテンカントンテンカンやってる工女がいるみたい。ダレだろ?そんなこともう知ってるよね。矛盾丸を鍛え拵えてる工女・匠さま。まだ誰も見たことない希望の青を秘めている落葉松の宝剣が仕上がったのじゃないかな。下手して自分を傷つけないことだよ。矛盾丸を手に取る資格が自分にあるか?資格もないのに奪いとったら?そりゃあ、盗んでみれば?

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