第六話 解呪と女神

「王様、悪魔族とは一体何なのですか?」


「それについても娘の呪いを解除した後にすべて話すでな」


 俺達は姫様が寝ているであろう部屋のトビラの前へと到着した。


 コンコン! コンコン!


 王様がトビラをノックするが返事はない。


 ガチャ!


 返事を聞かずに部屋へと入る王様。


「王様! 勝手に中に入るのはどうかと」


「いや大丈夫だ。娘は寝ているからの」


「それほどの呪いなのですか?」


「ああ、呪いにかかってから娘は一度も目を覚ましていない」


 かなり厳しい状況のようだ。


「一度教会の者に見てもらった時にはあと数か月で命はないと言われたのじゃ」


「教会の人でも呪いの解呪は出来なかったのですか?」


「そうじゃ。それ以外にも名の知れた解呪師にも依頼を出したがダメじゃったのじゃ」


 よほど強力な呪いなのか。悪魔族について唯一分かるのは人間の敵であるであろということくらいだが、まさか姫様に呪いをかけるとわな。


 俺達が部屋の中に入ると、ベットの上で寝ている少女が一人。たぶん姫様であると思う。


「スレイブ君、娘のミリアリアじゃ」


 姫様ことミリアリア=クリセリアは、この国で知らない人がいない程有名であった。この国の第一王女ということだけでなく、十五歳にして既にこの国ではかなう者がいないと言われる剣士でもあった。彼女の持つスキル剣神は、神様か与えられた唯一無二のスキルと言われている。得意戦闘は高速で放たれる一撃による攻撃、放たれれば防御不可能と言われており、そこから神速の姫君と呼ばれている。金髪の長い髪に金色の目を持ち、すらっとした長い脚を持つ姫様は、誰であろうとあこがれる存在であった。


 そんな彼女の名前をここ半年くらい聞かなかったと思ったが、まさかこんなことになっていようとは思わなかった。


「早速お願いできるか?」


「分かりました」


 俺は寝ている姫様へと近づきよく見てみると、遠くでは分からなかったが姫様の体の周りを何か黒い物が包んでいる。


「ではいきます」


 俺は両手を姫様へと伸ばす。


「聖域」


 聖域のスキルを発動。


 すると姫様の体が光始める。それから暫くの間は、光っているままだがやがて消えていく。すると、先ほどまで姫様を包んでいた黒い物は消えている。


「どうじゃ?」


 少し心配そうに聞いてくる王様。


「成功かと思います」


「そうか」


 少し安心した顔を見せる王様。


 王様が姫様へと近づく。


 すると、俺の目の前に、


 ☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★


 聖域がレベル2へとアップしました


 ☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★


 と表示されたと同時に俺は、意識を失ってしまった。






 次に目を覚ますと、白い空間の中にいた。


 辺りを見渡しても誰もいない。


 その場から立ち上がり何かないか探そうとすると、


「君! どこへ行く気かな?」


 後ろから女性の声が聞こえてきた。


「だ、誰ですか?」


 俺は恐る恐る後ろを向く。すると、


「初めまして! 女神でーす!」


 なんかすごい変な人が出てきた。


 まず自分のことを女神と言っているのがおかしい。それにどこからどう見てもただの人間にしか見えない。


「君~、私のことを疑っているね~」


 当然と言えば当然だがな。


「まあそうだよね。分かるよ、こんなどこの誰かもわからない人が、いきなり自分は女神だと言ったんだもの、疑って当然だよね」


 一人で納得している。


「でもこう言ったら信じてくれるかな?」


 何を言う気だ?


「君に聖域のスキルを与えたのはこの私です。つまり君を勇者に選んだ本人でーす!」


「え、え~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~!」


 驚きのあまりかなり大声を出してしまった。


「そうだよ。君が生まれた十八年前、聖域のスキルを与えて勇者に選んだんだよ」


「なぜ、私なんかを」


「適当かな?」


「適当ですか」


「うん。誰でもよかったのよ。ただ、その能力を悪用しない人であればだけどね」


「ですが俺には、何の能力もありませんよ」


「もう君には新たな力が与えられているよ。意識を失う前、目の前になにか表示されなかったかな?」


 確かにあの時、聖域のレベルが二へとアップしたと表示された。


「それわね、君が勇者として戦うための準備が整ったってことなんだよ。だ・か・ら、君はもう元パーティーメンバーにバカにされたりなんかしないよ。それどころかあれくらいの相手なら瞬殺だろうね」


 今すごい一言が聞こえてきた。


「そんなに凄いのですか?」


「すごいよ~! 今の君なら剣術と火と風の魔法なら最強クラスで使えるはずだからね。それにもうすぐ新しい仲間も増えるしね」


「それは誰ですか? どんな人なのでしょうか?」


「それは、まだ言えないよ~。だけど、その子も強いよ。君がいなければ間違いなくこの世界で最強になれる一人だからね。それとね、君には伝えないといけないことがあるんだよ」


 女神様は、真面目な目で俺を見つめてくる。


「君はこれから大変な戦いに身を投じていくことになる。その最初の相手が王様の言っていた悪魔族になるんだ」


「その悪魔族とは言ったい何のですか? 全く聞いたことがないのですが……」


「そらそうだよ。だって、私達女神が過去に悪魔族に関わった者達の記憶を消しているからね。でも王族と勇者達は別だよ。彼らにはその記憶を受け継いでもらわないと困るからね」


 確かにそれなら納得なのだが、


「後もう一つ君に伝えないといけないことがあるんだ! 君には新たに加わる子の他に三人仲間がいる。その子達は、全て私から能力を授けた子達だ! そしてその全ての仲間を集めないとこの世界を救うことは出来ない。だから頑張って集めるんだよ」


 女神様の話が終わると同時に、俺は意識を失った。そして、姫様の部屋で目を覚ましたのだ。

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