第9話 2000/12

----[短文のコーナー]------------------------------------


[16]


やさしい気持ちで 目覚めた朝の

今日は とっても 素敵な気分...




ハッピー・バースディ・トゥ・ユー。

Happy birthday to you...




はじめていえたら どんなにいいか..

まだ、会話さえ したことなくて。


でも、きょうの日は 言えそうな気が。

今日は、あなたの、誕生日。




私のハートに、リボンをかけて。




「16さい...おめでとう.....。」







[作:shoo 2000/8]


---------------------[長文のコーナー]------------------------------------




[Valletta] #1




旧い、木造校舎を夕日が照らし始めた。

それとなく季節の移ろいを感じさせながら、

オレンジ色の光線は次第に深みを増している、

現在は部室棟として利用されているこの旧い教室。

その、一室で彼女は画架に向かっていた....


後ろでUPにまとめられた髪は、バレッタで止められている、

が、フロントサイドの髪が伸びきりで

そのまま伸ばすつもりなのか)ちょうど不思議な存在感を醸している。


木枠に真鍮の木螺子。そこに薄い硝子板が留められていて、

窓を構成する、という現在となってはレトリックな感じさえする

ウインドウ。(という表現が似合わない。やはり『窓』だろう。)

そこから入ってくる斜光線が、油気のない木床に、

影を伸ばして行くのを眺めるようで、そうでもなくて。

何気なく、外の風景を。....と。


一人の同級生の姿。


「あ...。」



彼女は、声をかけようか、と、一瞬思った、



画架の肖像の彼。



一瞬の迷いが、結果として幸運だった、のか。どうか?



彼を追いかける、ひとりの女生徒。

長い髪。

やや、細身な。


「.....。」




彼に追いつくと、一歩引き気味に並び、俯き加減に。



なにか、話し掛けている。


楽器のケースを下げた「彼」、そっけなく頷く。


ふたり、帰路へ。


長い影が後を引くように、夕映えに伸びる。



その、様子を眺めるような、見守るような。

茫洋とした表情で見ていた彼女は、画架に向き直ると、



ノー・デッサンで。彼の肖像に、一葉の銀杏を書き加えた...。


背景。



秋風に舞う、Yellow。





「...........。」




"風"の表現に悩みながら。




いつしか、美術教室を夕闇が包みはじめ、澄んだ大気は


空を藍に染め、やがてブルー・ブラックに暮れてゆこうと....する。




彼女は、窓越しのその光線に寂寥感を覚えながら、その硝子越しの


つい、さっきの出来事を思い出していた.....。




美術教室の明かりを落とすと、ぼんやりと夕闇。

窓からの光線が白く、カンバスを照らしだしている。




「さて、と!」




振り切るように、部室棟から出る。

前髪を揺らす風は、もう夜風の様相。



中庭の照明が、白く。

すこし、寒い。


空は、夕闇と、暮れてゆく空とのグラディションが美しく。

ブルー・ブラック、ターコイズ、オフ・ホワイト、ヴァーミリオン...


「...fine.」


そんな、感嘆が口につい。


...と、人に気配に気づき、彼女はどきりとした。



「あ...o、遅いのね...あなたもクラブ?」



とっさに出た、照れ隠しのこんなひとこと。



「彼」は、アコースティック・ギターのハード・ケースを下げたまま。

柔らかく微笑んだ。


「....自然に、英語なんだね...。」




その言葉に、


「あ、ゃあねぇ、見てたのね、もぅ^^;。ぁ、ぁれはねぇ..^^;。」



恥ずかしいやらあわてるやら。

日本語になってない。(^^)。





「...でも、らしいよな。」




「so, あたしはぁ、でも、Japanese-girlよ。日本、好きよ。」



「ほら、また。」



「あ..っも。ふふふ。」



「ははは。」



無人の校庭に、ふたりの笑い声。


コンクリートの新校舎に響く。




「...でもさ、最近一緒に帰れなかったから、気になってたんだよ。」



「.....ちょっと、描きたいものが、あるのよ。」



「....今日は、もういいんだろ?途中まで、帰ろうぜ。」



「..okey, いきましょ。」


彼女らしくもなく「...」とためらいが数秒。

それは..やはり...?





....待っててくれたのね..?

....でも...あたし、は..もうすぐ..?





そんな、胸のうちはともかく。

さっぱりとした言葉で彼女は答えた。




校庭の隅の常緑樹が、彼の肩越しに見えて。


彼女に、[Legend]という単語を想わせた....。




----[つづく(^^)]-------(不定期連載です)











[作:shoo 2000/11 ]

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