第2話 3 2000/3


---------------------[短文のコーナー]------------------------------------


[Frost flower poetry]




ロッヂの朝は、ひっそりと。


遠く、滑らかな曲線を描いた稜線。

白く輝く、峰峰。

遥かに高く、尖鋭に、蒼く。


吐息が白く、凍りつく。


扉の硝子に、雪の結晶。



外に、でてみようか。


深雪は、さっくりと。

踏音だけが、爽やかに..。


白樺の木に、氷の華が。

朝日を浴びて、透明に。



白く輝く(Alpion)。

霧氷の梢(Frost flower)。



指で、そおっとふれてみる。


さらりと白く、さりげなく。

氷の粒は、零れて落ちる...。


「....だめ!....」



誰かの声が。



「・・・?」



だれも、いない。



確かに聞こえた、ような、気が。

不思議な感覚 ゆめ現...。



朝日が昇る 空を染めつつ

ゆっくり、静かに、あかあかと。


梢の雪も、とろけ始めて。

雪の雫を、深雪に。

短い命の、終わりのように、

雪の雫が、零れて落ちる。



フロスト・フラワー・ポエトリィ


掌の 霧氷のかけらも

涙のあとの ようだった...。



[作:shoo 1999/12]


---------------------[長文のコーナー]------------------------------------




[海沿いの駅にて]




日曜日の通勤電車は、どこか寂しい。

普段、見ている電車なのだけど。

ガーター高架ホームで、僕は電車を待っていた。


快速電車が駆け抜けて行く。

赤いボディに、白のライン。

吹きぬける列車風に、すこし、潮の香り。

夏は、もうすぐかな。


ふと、対面を見る。

風に吹かれたおさげ髪。

古典的な、しかし気品のある風貌の少女は、ミディ・スカートを

なびかせていた。


どこがどう、というのではないが、緊張感が。


僕にも、あんな頃があったな..。


永遠が存在する、と信じられた。

夢を信じられた。

まっすぐに、人を愛せた。

心に、淀みが無かった。

何も、おそれるものは、なかった....。



もう、初夏のように、陽射しがエナジィを強める。


海風が、また、さっぱりと。


対面ホームの到着アナウンスが。

滑るように、がら空きの電車が入ってきた。


ドア・エンジンが動作する。

少女は、ロング・シートに人物を見つけると、表情を崩す..すこし俯く。


ほぼ無人の電車に乗りこみ、微妙な間を空け、少年の隣に。

車掌のホイッスル。

ドアは閉じ、列車は唐突に走り出す。


二人、ならんで窓の外、眺めている...。

なにも、語らず、楽しげに。


その様子が、焼きつく。

残像。


過ぎ去った記憶が、flush。

over-lap。


赤い電車は、スピードを上げ、走り去る。

彼等の未来へ、向かうかのように。


ノスタルジィを、置き去りして、

過去から未来へ、走り去る.......。







[作:shoo 2000/1 ]



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