今はまだ

牛寺光

第1話

気づくと既に周りが暗くなっていた。ここは家から五キロほど離れた大型の公園、時間は多分9時半を過ぎたぐらい。いつもは8時半ぐらいには終わらせていたのだが今日はそうも行かない。何故なら試合で負けたのだ。競技は長距離、俺は男子の部に出場した。中学ではそれなりの成績だったのに入賞すら出来なかった、タイムも約一分落ちてた。これがただの大会だったらましだった。この大会は高校になって初めての大会だった。いい成績を残したら、いろいろなトレーナーから話がきてもっと速くなるチャンスがあったのに。

もう試合の後家に帰って来てから三時間は走り続けてるから足が痙攣してる。これ以上続けて走ったら足を壊しそうなので休憩をするために近くのベンチへ歩く。ありきたりな表現だけど足が鉛みたく重い。自分が思ってるより疲れてた。。

ベンチが遠い。目測十メートル、それを一分ちかく掛けて歩いて行く。


「起きてください。」体がゆすられる。目の前には同い年ぐらいの人のよさそうな女の子がいた。というか俺寝てた?ベンチにたどり着いたとこまでは覚えてる。だから多分座ってから直ぐに寝てしまったんだと思う。今何時だ?下手すると11時になってるんじゃ…時計を見ると10時過ぎ。この時間なら練習に夢中になってたらこの時間だったといえば親を心配させずにすむ。ただ今すぐ帰らないと。「えっと時間大丈夫でした?」不思議そうな顔をしていると「あ、慌てて腕時計見てたので。」と教えてくれた。「大丈夫でした。えーとすいません、なんて呼べばいいですか?」「あーそうえば自己紹介まだだでしたね」笑って返してくれた。笑顔を見てから心臓が長距離走り終わった時と同じぐらい強く脈をうってて妙な気分。「じゃあ…インディーとでもよんでください。」数秒考えて出てきた名前偽名だよな。顔日本人ぽいし、帰国子女っかんじでもない。

「偽名ですいません。私は仕事柄用心をおこたれないんです。あなたのことを警戒してる訳ではないのでごかいしないで下さい。お詫びと言ってはなんですが、あなたも偽名で構いませんよ。」じゃあ本名の百瀬要の読み方を変えて「じゃあ俺はヨウと呼んでください」「分かりました。結構話してましたけど時間大丈夫ですか?」そう言われてい見れば。「私は基本的に毎日この時間にここにいるのでよければ明日も話しましょう」

その後すぐ家に帰った。時間は門限のギリギリ十半時。明日も行こうと決意しながらシャーワーを浴びる。


翌日も10時まで練習をしてその後インディーと話した。お礼も言えた、それに明日も会う約束をすることが出来た。

こんな関係がしばらく続いて気づけばあの惨敗した試合の後から初めての試合の二日前になっていた。フラグになるとわかっていてももう決めてしまった。この試合で自己ベストタイムを更新し出来たらインディーに告白する。今まで話してきてもインディーは自分より年上でめったにいない職業についていること、結婚してなくて恋人がいないことぐらいしか知らないけど気づいてしまった、俺は少し抜けててそれでもしっかりしてるインディーがすきだと。青臭い言葉で表すなら一生支えても後悔はないと言い切れる。そして明日は試合前日でここにはこないと伝えそのあとで試合当日のこの時間にここで伝えたいことがあると言う。

そわそわして練習に身が入らなかった。ついに10時なりインディーがきた。いつも通り雑談をする。そして別れ際明日これないことと言いたいことがあると「改まってどうしたの」っと伝えたら笑われた。

そして翌日は宣言どうり家で休憩し試合本番に挑む。

試合当日は少し寒いの日だった。幸い風は吹いていない。

会場に着いたのが開始一時間前軽くアップをして時間を調整する。不思議といつもより落ちついている。そして開始の合図の笛がなる。先頭集団に入れた。

自分が思うように進んでいく、景色がよく見える。

入賞、それもトップ。

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