侵略!UMA娘

雪車町地蔵

話は聞かせてもらった、UMA娘は実在する!!!

 その日、すべての人類は馬になった。


 突如として宇宙から飛来したUMA娘のウマニナール光波を浴び、奇蹄きてい目ウマ科ウマ属ノウマ亜種のウマと成り果てたのだ。


 必然的に、人類は車を運転することが出来なくなった。

 船も、飛行機も、バイクでさえも運転できない。

 文明の利器のほとんども放棄するしかなく、ウマたちは走って暮らすことを強いられた。


 だが、UMA娘だけは違った。


「ホースホスホスホス! 愚かなウマたちよ、まだ四つ脚で地面を駆け抜けているウマか!」


 彼女はことさらにウマたちを煽った。

 なぜなら、UMA娘には脚がなく、空を飛んで移動することが出来たからである。

 これは大変なアドだ。じつに丸い。


 大空に舞い上がるのは、人類の夢だ。

 これを奪われては、生きていけない。火を見るよりも明らかだった。

 ……ウマになったので火は怖かったが。


「ホースホスホスホス! 私にかしずき、奴隷となることを誓えば、魂を売った奴らだけ空を飛べるようにしてやるウマ! 代わりに、この青い星はいただくウマ! ホースホスホスホス!」


 事実上の植民地宣言であった。

 これに、各国首脳はおおいに揺れた。

 すでに統治機構は崩壊していたが、権力はキープしたいのでリーダーを気取っていたからだ。

 その割に役に立たないので、民草からの評価は腐った干し草よりも低かった。


 困った、困ったと。

 頭を抱えようにも、ウマなので前脚が上がらない。

 困惑を続けている間に、UMA娘が唱えた選民思想はすべてのウマたちに周知され、社会問題にまで発展。

 ついには、自らの脚を切り落とすことで忠誠を誓おうとするものまで現れた。


 義憤に駆られた有識者たちは、調査隊を結成した。

 UMA娘特殊対策室の結成である。


 UMA娘特殊対策室の面々は、命がけでUMA娘に取り入り、接近し、なんとかスキャンダルを掴もうとした。

 あわよくば自分たちだけが助かるための、ゆすりのネタにするためである。


 こびへつらい、魂を売り、好物のにんじんまで譲り渡して行われた彼らの、その必死のパパラッチ活動の結果、ある真実が判明した。

 なんとしてでも、これを白日の下にさらさなければならない。

 へこへこと平身低頭しながら、UMA娘特殊対策室のメンバーは使命感を燃やし、アヴェンジの機会を虎視眈々とうかがった。


 そして、とうとうその日がやってきた。


 UMA娘はいつもどおり出待ちの信者たちを、軽やかに空を飛んでかわし、地球の観光を行おうとしていた。

 だが、突如彼女のに飛び出した対策室のメンバーたちが、フラッシュをいた。


「し、しまったウマ!? UMAは背後に立たれたら思わず蹴ってしまうウマ!」

「ふん、馬脚を現したな」


 宙を舞いながら、対策室室長は会心の笑みを浮かべた。

 なぜなら、彼の顔にはU字型の蹄の跡がしっかりと残っていたからだ。


 そう、UMA娘には脚がないのではなく、体内に収納されていただけだったのだ。

 彼女は四肢を引っ込め、ジャット噴射で空を飛んでいたに過ぎなかった。

 とんだペテンだったのである。


「こ、こうなれば仕方がないウマ。さらばウマ~!」


 かくして、UMA娘は地球を去り、地には平和が戻った。

 ウマたちは今日も草原を駆け抜け、平和に暮らしている。

 あたりまえだが人類は滅亡した。



 馬鹿馬鹿しい話めでたしめでたしである。

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