第5話 初めての世界


「おーい!遅いぞノア!」


「そうよ!それでも男なの?」


「うるさいぞー! てかなんで2人ともそんなにはやいんだよ」



何事もなく誕生パーティーは終わり、数日が経った


俺はハリーとチコが、「外の世界を見に行きたい!」


とか言って、街の北2キロ程の場所にある山の中腹にある湖へ行くと言うので、心配で着いてきた


俺たちはまだ3歳、子供だけで行くのは絶対に間違っているとゆうことはわかっているのだが、俺も外に興味があったので、止めることは出来なかった。


近隣の山は街の人たちも頻繁に出入りするので、危険な魔物も少ないが、それでもいない訳では無い


万が一のため、シア姉さんに貰ったマジックワンドを装備して、山の麓まで3人で走っている


「俺もチコも普段から鍛えてるんだよ!」


「鍛えてるって、たかが3歳じゃないか!」


ハリーもチコも、見栄を張るためか、大きな剣を背中に背負って走るが、俺は2人に追いつけない


「3歳でも、鍛えればこれだけの差が出るってことよ! 悔しかったらノアも鍛えなさい!」


くそ、3歳児に論破された。。。



ーーーーー


15分ほど走り、俺たちは山の麓へ着いた


「よし、やっとここから冒険だな!」


「そーね!何があるのかワクワクするわね!」


2人はノリノリで山へ入っていく


と言っても先程も言った通り、ここは街の人がよく来る場所


舗装こそされていないが、人の往来で土がむき出しになり、小さな道のようになっている場所を歩いていく



するとハリーがなにか発見し、騒ぎ始める


「おい!なんだよあの虫!始めて見るぞ!」


「すっげー!なによそれ、角鋭っ!」


そこには木の樹液に群がるカブトムシやクワガタがいた


最初は仕方なく着いてきた俺だが、幼少の頃、連休に田舎の祖父母の家に遊びに行き、そこの地元の子供と山に虫取りに行った時の事を思い出し、段々と楽しくなってきた



と言ってる間に、ハリーが木によじ登り、クワガタを捕まえようとしている


「おい! そのまま捕まえたら危ないぞ!」


普通のクワガタならいいんだが、ここの奴は訳が違う


角?あご?が、まるでカッターナイフのように鋭いのだ


それに大きさも15センチ程あり、力も強そうなので、ハリーを止める


「じゃあどうすればいいんだよ!」


「今回は初めての山だ、いわば偵察調査だな、今日の経験を踏まえ、次回は何か対策をして、奴を捕まえよう!」


「ふっふっふ、そうゆうことなら仕方ないな」


「ええ、今回は偵察だもんね!」


懐かしさと楽しさから、テンションが上がり、ついそんなことを言ってしまった


偵察なんて、いかにも冒険者らしい事を行ってしまったので、2人は謎のテンションになり、どんどんと山を進んで行く


「あの穴はなんの穴だ?」


「ふふ、私には分からない、調査が必要ね!」


「そうだな! よし!行こう」


こんな感じの茶番をしながら、色んな初めてを観察していく


まぁ、俺も楽しくてつい一緒になって2人と茶番をしてるけどね


それにしても、ここは面白い!


地球では見たことも無い花や木、生き物が数多く生息していて、34歳の少年の心が飽きることなく疼いている


「ねえ!あれが湖だよね!!」


「そうだな!やっと着いたか」



気がつくと、俺たちは目的の湖へ辿り着いていた



探索に夢中になりすぎて、一瞬で着いてしまった


そんな感覚だ



「結構でかいんだね!」


「ああ、うまい魚も居そうだな!」


「それいいわね! ノア、どうにか魚取れないの?」


コイツらは景色よりも食い気か、まあ3歳児に景色を楽しめって言っても、3分で飽きそうだな


俺は2人に言われた通り、魚を捕まえる方法を考えてみる


釣りは道具が無いので無理、罠を設置するか? 原始的な葉っぱや細い木を編んだカゴを罠として設置・・・


無理だな、魚が何を食べるかも知らないし、編み方もわからん


色々考えていると、チコが透き通った湖の水を手ですくい、ゴクゴクと美味しそうにのんでいる


「あ、俺も飲む」


「俺もー!」


ハリーも俺もさすがに喉が乾いたので、チコの真似をして水を飲む


「あ、思いついた」


「お?取れそうか?」


「本当!?」


「多分行けると思うよ、多分だけど」


俺は思いついた方法を2人に伝え、魚の群れを探してもらう


湖の外周を回っていると、ゴツゴツとした岩場の傍に、無数の魚影が見えた


「ノア!あそこあそこ!」


ハリーに急かされながらも俺は片手を水に突っ込み水魔法を使う


魚群が居る周囲の水を球状に切り取り、水上に持ち上げた!


これぞ俺が思いついた水魔法を使った漁方、名付けて『切り取り漁』だ!


そのまんまだけどね


1mほどのアクアボールの中に、川魚が十数匹入っている


「獲ったはいいけど、これって食べれるの?」


俺は今まで、ほとんど屋敷の敷地内でしか遊んでこなかったので、何が食べれるかなんてよく知らないのだ


「どうなんだ?チコ!」


ハリー、お前も知らないのかよ


「多分食べれるよ、酒屋のおっさんがたまに庭で焼いて食ってるやつと同じだからな!」


お、チコは知ってたか


「よし!なら俺らも焼いて食うか!」


「ふふふ、楽しみだね」


「あぁ、塩があればさらにいいんだけどね」


2人は料理の知識なんてないので、俺が調理する


まあ鱗を取って、手で内蔵を抜き取るだけだけどね


1人3本、計9匹だけ下処理をして、後は口の所ににツタを刺して括り、持ち帰る事にした



乾燥してそうな落ちている枝を集め、火魔法で焚き火を作り、枝に刺した魚を焼いていく


俺は前世でもこんな事はしたこと無かったので、焼き上がりがめちゃくちゃ楽しみだ!



焼けるまで時間がかかるので、すぐ側に土のベンチを作って、3人で他愛もない話をする


「なぁ、あの虫捕まえるにはどうすればいいんだ?」


ハリーは先程のクワガタがどうしても取りたいらしい


「鎧のコテでも付ければいいんじゃないの?」


「でもあれってデカいし重いだろ!」


「ノアは何か思いつかないの?」


と言われてもな、今あるもので安全に掴むものと言ったら蛇掴みか?


ん?別に物に頼らなくても、『切り取り漁』みたいに魔法で捕まえれるんじゃ?


「魔法使えばいけるかも!」


「「マジかよ!」」


「ほら、さっきの魚みたく、土で囲めば行けると思うよ」


そう言うと、2人はめちゃめちゃ嬉しそうな顔をさせる


「さすがは魔法バカだな!」


「本当よ! やっぱりノアがいれば、冒険も楽になりそうね!」



おいおい、その言い方はないだろ


と思いながらも、悪い気はしないので放っておく


ま、冒険をする気は今のところは無いけどね



焚き火で焼いている魚は先程から、ぱちぱちと皮を爆ぜさせながら、いい匂いを放っている


早く食べたいな~。

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