動物さん達のおうち時間競争

無月兄

一番長くおうちにいられるのは誰?

 ここは、いろんな動物さん達が仲良く暮らす森。通称、『動物の森』です。

 えっ、どこかで聞いたことがあるぞって? ふふふ、気のせい気のせい。


 この森のリーダーは、まん丸な体をした一羽のトリさんです。トリさんは森のリーダーであるのと同時に、人間の世界にある小説投稿サイトのマスコットもやっています。だから、人間のことだってとっても詳しいのです。


 ある日、そんなトリさんが、他の動物達を集めて言いました。


「今、人間の世界では、とっても怖い病気が流行っているんだ。それをこれ以上広げないために、人間達はできるだけおうちにいようとしている。だけど中には、退屈になってついつい外に出かける人もいるんだって。みんなはそれをどう思う?」


 思わぬ質問に、動物さん達は考えました。

 まずは、狐さんが言います。


「外に出たい気持ちはわかるよ。思い切り走りまわると気持ちいいもん」


 これにはたくさんの動物さん達が賛成しました。動物さん達は、みんな体を動かすのが大好きなのです。


 しかし今度は、蝶々さんが言いました。


「だけどそれじゃ、病気が広がっちゃうんだろ。じゃあやっぱり、がまんしておうちにいた方がいいんじゃないかな?」


 これにも、多くの動物さんが頷きました。動物だって、病気にかかるのは嫌なのです。


 外に出るのは楽しい。だけど今は、できるだけおうちにいた方がいい。みんなで話し合った結果、しだいにそんなの意見はそんな方向にまとまってきました。


 するとそこで、トリさんが言いました。


「ボクも、外に出るのは楽しいけど、今はできるだけ、おうちにいようと思うんだ。そこで、どうだろう。これから一ヶ月、誰が一番長くおうちにいられるか競争しない? ゲームみたいなものだって思えば、楽しくおうちにいることだってできるはずだよ」


 この意見には、今までで一番多くの動物達が拍手を送りました。みんな、外に出ちゃダメと言われると窮屈に思いますが、こんな風にゲームみたいにすれば、ずっとずっと前向きに取り組むことだってできるのです。


「さんせー」

「やろうやろう。競争だー」


 こうして、動物さん達による、おうち時間競争がはじまりました。







 クマさんは、まずはじめにたくさんの食料を確保し、それから自分のおうちである穴の中へと閉じこもり、そのままスヤスヤ寝てしまいました。冬眠です。


「これからずーっと冬眠してれば、きっとボクが一番だ」





 クモさんは、たくさんたくさん糸をだして、とっても大きなおうちを作りました。人間の基準で言えば、大豪邸です。


「こんな大きな家なら、ずっと閉じこもっていたって退屈しないぞ」






 オシドリの夫婦は、二人仲良く自分達の巣ですごします。


「ずっと家の中にいて、君は退屈じゃないかい?」

「全然。あなたがいてくれたら、どこだって楽しいわ」

「そうかい。僕もだよ」


 元々仲のいいオシドリ夫婦。おうち時間が長いほど、よりいっそうラブラブになるようです。




 そうして、森のみんながおうちですごすようになってから、一ヶ月が過ぎました。今日はいよいよ、誰が一番長くおうちにいたか、発表する日です。


 結果を伝えるのは、やはりみんなのリーダートリさんです。


「みんな、長い間おうちにいてくれてありがとう。人間達もこれを聞いたら、きっと自分達も頑張ろうと思ってくれるよ。それじゃ、一位の発表をするね。なんとその子は、ずっーとずっーと、一瞬だっておうちから離れなかったんだ。窓からちょこんと頭を出すことはあったけど、それはおうちにいたとみなすからね」


 それを聞いて、みんなは驚きました。冬眠していたクマさんだって、最初に食料をとるため外には出たのです。

 豪邸を作ったクモさんも、作っているその間は家ができていなかったので無効です。

 いったい誰が、一瞬たりともおうちから離れないなんて凄いことを成し遂げたのでしょう。

 全ての動物さん達が見守る中、ついにトリさんがその子の名前を言いました。


「おうち時間競争。優勝は、カタツムリさん!」

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

動物さん達のおうち時間競争 無月兄 @tukuyomimutuki

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ