第31話 最恐の勘違いはでっどおああらいぶ










「(なんかめちゃくちゃ疲れた…)」



 俺をダーリン呼びして怪しさ満載の書類に署名させようとしていた、女子力高い婆さんに絡まれはしたもののシロを無事取り戻しミラに何も告げずに移動したのですぐ元の場所まで戻って来た。



 先程セイ達がいた所にはミラとユリアナが待っていた。

ミラは両膝を地面に突き泣き叫び、ユリアナは眠そうに欠伸をしている。

2人の間は空間がズレているかの様な温度差であった。



「ほんどにお゛いでっだぁぁぁぁっっっっ!!ぜんばいのばがぁぁぁぁっっっ!!!ひとでなしぃぃぃっっっ!!!おごっでもらうづもりだっだのにぃぃっっっ」



 通行人はミラを避ける様に遠くを通る。

当たり前である。こんなヤバそうな人間は誰だって避ける。



「大丈夫だよーまだ食べてないよ☆シロちゃんが攫われたから追いかけてたんだっ!」

「そ、そうなんですかぁ〜?ーーー良かったーーーっっ!!奢りだ奢りだっ!!」

「誰も奢るとか言ってねぇだろうが…このクソ守銭奴」

「私別にお腹空いてないんだけど?宿屋で寝てて良いかしら?」



 マリアがミラにまだ食事していない事を伝えると安堵した様で涙は止まっていた。

しかも勝手にアクスの奢りにしてミラは喜んで身体全体で喜びを表している。

こうやって少しでも隙を見せたら搾取されていくのかと得心した。

ーーユリアナは魂食ったからお腹空いていないとかでは無いよね?生きてるよね?あの冒険者のおっさん…。



 結局ユリアナは眠い事もあって1人で宿屋に帰って行き、残りの4人とシロで食事に向かう事になった。

明日も早いので近場の大衆食堂に入り全員オススメを頼んだ。



「ここも中々美味しいねぇ?」

「そうだな。人の金で食う食事はうめぇだろうよ」



 アクスの嫌味も気にせずミラは遠慮なく料理を口に放り込む。

アクスは眉間に皺が寄り、幸せそうに食べるミラにガンを飛ばす。

シロは大人しくセイの隣の椅子に鎮座している。



 俺は大衆食堂でユルイ雰囲気に乗じて冗談混じりに聞きたい事を聞く事にした。



「ユリアナが追いかけて行った冒険者のおっさん宿に帰って来てんのか・・・な?」



「え?流石に帰って来て無いでしょ?ユリアナに追いかけられたんだよー?もう死んじゃってるよーっはははっ」



ミラは食事の手を止める事なく笑いながら答えるが、リアルなのかジョークなのか全く判別が付かねぇよ!



「まぁー…生きてないだろうな」


「ユリちゃんはそんな事しないよーっ!!もーっ!!」



 マリアだけが擁護するものの、それが逆に懐疑心を煽ってくる。



 全く判別が付かん!!お前ら分かりにくいんだよ!!

ーーだんだんホラー映画感満載になって来たんだけど…。

冒険者のおっさんはどこかで生きていて、ユリアナはたまたま人気の無い路地裏に用事があって居たんだ…うん!!そうだよな!!シロもそう思うよな!!



 イスに鎮座するシロに顔を向けると、すやすやと眠って居た。



 遂に宝箱の姿をしたシロの眠っているかどうかすら理解出来るようになってしまった…。この姿のシロに完全に慣れてしまっている。だめだ!こんな事じゃ…シロがご飯が美味しそうに食べるのを見るのが好きだったのに…俺は…俺は…こんな駄目な飼い主じゃシロに合わせる顔が無いっ!!くっ…!!




「またセイさんが…」

「本当シロの事考えている時だけは変人だよな…」

「きっと事情知らない人から見れば奇人だねぇ☆」




 冒険者ギルドからも頭のおかしいパーティーと思われている3人に、まさか自分が変人扱いを受けているとはシロに夢中なセイは思っていなかった。









♢♢♢♢♢♢






 1人宿に戻ったユリアナは窓辺に立ってじっと外を見ていた。




「見た事ない色の魂…何者なのかしらアイツ…それに私に疑惑の目を向ける時があるから何か見たわね…。それなのに問い詰めないなんて………もしかして…………気がある!?……うふ…うふふふふっ……ちょっと頼りないけど私が守ってあげれば問題ないわね!ーーどっかのメス豚に手を付けられる前に狩らなきゃ……」




 盛大に勘違いしたユリアナは昼間おっさんを追いかけた後で、町中で買った化粧品を使い入念にお肌の手入れをしてお肌のためにみんなが帰ってくるよりも前に就寝した。



「……せぃっ…そんな……まだしりあって……」



 恥ずかしい寝言を呟きながら熟睡した。








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【一章完結】宝箱に転生してしまった!!・・・愛犬が。ーーえ?俺は転移して来たただの一般人です。 @narumitojinntarou

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