春をくゆらす

犬丸寛太

第1話春をくゆらす

 喫煙者が嫌われ始めてからどのくらい経つのでしょうか。

 健康増進法が施行されてからなのか、そもそも初めから実は嫌われていたのか。

 赤いスイートピーは所詮男の幻想なのでしょうか。

 私自身タバコを吸い始めて随分と時間が経ち、初めは市販の紙巻タバコを吸いつけ、最近は手巻タバコやキセルなんかもやり始めているのですがどうにも肩身が狭くてやりきれない。

 そこで、ここはひとつ小説サイトらしく偉大な文豪の力を借りて、タバコの楽しみ方とは、格好のつけ方とは何ぞやというのを書いてみようと思います。

 取り上げるのは稲垣足穂著「星を売る店」です。

 ある男が星を売る店を訪ねるという珍妙な内容なのですが、不思議な世界観、ロマンチックでなんだか胸が締め付けられるような懐かしさを感じる。そんな作品です。

 この星を売る店に”星を砕いて葉っぱに混ぜたタバコ”が登場します。火をつけ静かに吸い付けると小さくパチパチと線香花火のような音がするのだそうです。

 嫌われ者のタバコにしては中々格好いいじゃありませんか。

 その昔、試しに金平糖を星に見立てて一本作ってみたのですが現実は金平糖の様に甘くはありませんでした。(結果はご想像にお任せします。)

 今しがた、お酒を飲みながらふとそんなことを思い出しひとり笑っているとあることを思いついたのです。

 手元にはキセルとズブロッカというお酒。

 このズブロッカというお酒はウォッカの一種で、瓶の中にバイソングラスという香草が入っているのですが、なんとほのかに桜の香りがするのです。

 キセルは定期的に管の中を専用のこよりとエタノールを使って掃除するのですが、エタノールの代わりにズブロッカを使うともしやタバコの煙に混じって桜の香りがするのではないだろうか。思い立ったが吉日。早速実践です。

 これが大当たり。ゆっくりとキセルをくゆらすと一足早く春の匂いが鼻を抜けます。

 嫌われ者の喫煙者の皆さん。どうせ嫌われるのならせめて自分の中でだけでも格好をつけようじゃありませんか。

 ちなみに、ズブロッカは40度あるのでストレートはあまりお勧めしません。(香りはとても良いのですけれど)

 シードルというりんごのお酒と割って飲むと美味しいらしいのですが、私はあまり強い質ではないのでりんごジュースと炭酸水で割って飲んでいます。

 なかなか美味しいものです。

 さて、眠くなってきたので寝ます。おやすみなさい。皆さまに良き春が訪れますように。

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春をくゆらす 犬丸寛太 @kotaro3

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