第21話

プロポーズから数日経ち、今日は始業式の日。

 紅愛と雅紀とは今年も一緒のクラスである。

 俺の予感(第17話参照)が当たっていたのか元々書いてあった人の名前が黒く塗り潰され、紅愛の名前が横に書かれていたので、紅愛に問い質そうとしたが手違いだったのでは?としか答えてくれなかった。ちなみに紅愛は隣の席だ。

 指輪の件も相まって篠崎グループに不可能は無いんじゃないかって最近思い始めている。


 それと今は体育館で始業式を行っている。校長の長ったらしい話を聞き流している最中だ。周りをざっと見渡すと半数くらいの生徒か下を向いていた。


「えー私から皆様に伝えたい事は以上であります。今年度も本校の生徒としてあるべき姿をえー心がけてください」


 あっ、やっと終わった……

 長時間座りすぎて痛くなった尻を少し上げる。マジで体育座り考えた奴アホでしょ。胡座で良くないか?


「以上をもちまして始業式を終了致します。後ろの生徒から順番に退場してください」


 始業式は終わったし、授業も無いからあとはホームルームだけで放課だ。今日は家に帰ったら紅愛とぐうたらするって決めてるから早く帰りたい。紅愛って本当に抱き心地良いから癖になるんだよな。まさに一家に一人の紅愛だな。








「みゃ〜♡♡」


 家に帰り、速攻で着替えた俺達はベッドに寝転んでいた。紅愛を抱き寄せるとすごく甘く蕩けた声を漏らした。めっちゃ可愛い。


「何今の声。もっかい出してよ」

「えっ、で、出ませんよ///これは意図してやったわけふみゅぅ……」


 どうやら紅愛を強く抱き締めると声を漏らすみたいだ。まるで腹を押すと声を漏らす玩具のようで少し面白い。


「あ〜可愛い。紅愛も遠慮なく俺の匂い嗅いでいいからね」

「……そうですね。私も蒼太くんの匂いを堪能することにします」


 そう言って俺の胸板に顔を埋める紅愛。荒くなった鼻息がくすぐったい。嗅いでもいとは言ったがくすぐってもいいなんて一言も言っていない。なので腹いせに紅愛の服の下に手を入れて脇腹をくすぐった。ついでにスベスベの肌の感触も楽しむ。


「ひゃっ!」

「くすぐったい?」

「あふっ、やめっ……んふふふっ」


 笑いを堪えているような感じがしたのでもう少しくすぐってみる。しかし……


「痛っ!?」

「はふぅ……ふざけないでください。次やったら怒りますよ。私くすぐり弱いんです」


 紅愛に背中を抓られてしまった。その代わり良い情報を手に入れた。紅愛はくすぐりに弱いと…これは使えるな。


「……ほんとに駄目ですからね?」

「分かった分かった」

「それは分かってない人がする返事です」

「ほんとに分かってるよ。心配しなくて大丈夫。俺が紅愛に嫌な事した時あった?」

「……偶にあります」

「偶にはしょうがないな」


 さらに強く抱き締めてこれ以上口を開かせないようにする。紅愛は一度抵抗するように俺の背中を叩いたが、俺の匂いに当てられたのかすぐに抵抗をやめて俺の腕の中で静かになった。俺も紅愛の頭頂部に鼻をうずめて、紅愛の甘い匂いを堪能した。


 それから暫く無言で抱き締め合っていると、いつの間にか二人して眠ってしまっていた。俺が起きた時にはまだ紅愛は寝ており、久しぶりに紅愛の寝顔を拝めることが出来た。

 頬をつまんでみても起きる気配はない。よほど疲れが溜まっているのだろう。やっぱりそっとして眺めるだけにしとくか。


「すぅ…すぅ…」


 だが紅愛の静かな吐息を聴いているとまた眠くなってきてしまった。


「……やっぱ俺も寝よう」


 紅愛を少し抱き寄せ、再度眠りについた。




〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

体育座り嫌いな人って僕以外にもいますよね?

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