第8話凍華は、愛依と仲良し

「お邪魔しまぁす」

玄関から凍華の安らぎを誘うオルゴールのような高い声が聞こえた。

食卓テーブルに置かれた皿から手作りクッキーを手に取り、一口かじっていた愛依が玄関に走っていく。

「遅いよ、凍華姉ちゃん。ゆづにぃが何か言いたいらしいよ」

「ごめんね、部活があって遅くなったの。ゆづが私に?なんだろう......」

リビングに続く廊下からそんな楽しそうな会話が聞こえてきた。

リビングに入ってきた二人がソファに近付き、座り込む。

「暑ぅ~涼しいと思ったのに。扇風機がまわってるだけなんて。なんでクーラーつけてないの、暑いのにぃ~」

ブラウスの胸元を摘まみ、ブラウスの中に風を送り込み、愚痴った凍華。

「パパが節電しろって煩くて。ごめんね、凍華姉ちゃん。ゲームしようよ~」

「そうなんだ、仕方ないね。しよっか、ゲーム。ゆづ~言いたいことって、なにぃ~?」

愛依の提案に乗ってから、俺の方に顔だけ向けて、高校とは違う態度の柔らかい声音で聞いてきた。

「えっとぉ~なんて言うの......その、凍華がっ──」

「聞こえないよぅ~はっきり言ってよ。ゆづらしくないよ。何うじうじ言ってるの?」

首を傾げ、再び聞いてきた凍華。

「もうっ!いいよ、この話は忘れてっ」

身体の前で手を大きく左右に振り、慌てて話を終わらそうとした。

「もう、ゆづにぃは意気地無しなんだから」

愛依が小さく呟いたが、俺と凍華には聞こえなかった。

「何か言った、愛依?」

「なぁんにもっ!凍華姉ちゃん、やろ早くっ」

「う、うん」

愛依は、ゲーム機の電源を入れて、ソフトを挿入した。

二人は、コントローラーを手にして、ゲームが始まるのを待機していた。

「ゆづ~テーブルのクッキー持ってきてぇ」

「ああ、うん。持っていくよ」

俺は、椅子から立ちあがりクッキーの入った皿をソファの前のテーブルに運んだ。

「あーとう」

短く、感謝の言葉を言う凍華。





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