第2話生徒から恐れられている教師にみられる

空き教室を出て、廊下を並んで歩いていた。

「そろそろ機嫌、直してくださいよっ。平塚先輩。スタバでおごりますから、ねっ平塚先輩ってばぁ!」

杏美の手が、俺の手を握ろうと指が触れると同時に振り払う。

「無理だってぇの。先に謝ってほしいんだよ、まだごめんの一言を聞いてないんだけど。スタバに寄らないわ、今日は急いで帰るんだよっ!」

「っうぅ。えっとぉ......ごめんなさい。もしかしてぇ、録画したえっちぃアニメとかぁ~?」

「おまっちげぇっつうの!健全なのだよ、杏美が言うえっちぃのはお前だからなっっ!感動ものだっわぁ、杏美の脳内は、そんなことしかないのかよ」

「はっははあぁっ!私はえろくありませぇーんだぁっ!平塚先輩のことなんですけど。言っておきますけど、したことないですから、欲求不満じゃないですからぁっ!」

動揺しながら、大声で叫び否定してきた。

唾を飛ばすなよ、ほんとに。

すれ違うカップルに避けられながら、ひそひそされる。

「ばっっばかか、お前っ!でけぇよ、声が。叫ぶなよ、そんなことを!はぁぁ、疲れるぅぅよぉ」

「平塚先輩が言わせたんでしょっ!私の方が怒りたいんですけどぉっ!恥ずかしいこと言わせて」

「言わせてないわ、杏美が言い出したんだろうがっ!」

胸ぐらを掴み合い、言い合っていると横から低い声が聞こえ、身体が震え始める。

「何、廊下で喧嘩してんの。職員室で聞こうかな、お前達ぃ」

黒のスーツに身を包んで、上に羽織った白衣のポケットに手を突っ込んだ、遠蔵先生が睨みつけていた。

校内で怒らしてはいけない女性教師に目撃されてしまい、身体から冷や汗がふきだしてきた。

「えっとぉ、これには深い──」

逃れるために、事情を説明しようとしたが、遮られ、失敗に終わる。

「言い訳は職員室でいくらでも聞くからついてこいよ。逃げるなよ、平塚ぁ」

杏美が恐怖で動けずにいる隙に離れようと歩き出したが、遠蔵先生に腕を掴まれ、職員室に連行される。



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