第7話 危険な罠

そんなある日の事だった。



「ヤベ…飲み過ぎた…」と、俺。


「お前、ペース早過ぎだから」と、潤



俺と潤は、二人で飲んでいた。


俺は、事情があってかなり飲んでしまった。


俺も人に言える立場じゃない今日。




その時だ。


「あれ〜?澪君と潤平君じゃない?」



優羽の友達の、和佳奈ちゃんが俺達の前に現れた。



「奇遇ね?二人で飲んでるの?」


「ああ」


「澪君、凄い泥酔?」

「あー、まあ…ちょっと…」


潤が答えた。



「そうなんだ」

「和佳奈ちゃんは?」

「私は後輩の子と飲んでて、今、別れて来た所で、偶々、二人見掛けたから声掛けちゃった♪」


「そっか。優羽ちゃんとは一緒じゃないんだね?」

「あー、あの子、今日は残業で」

「残業?そうなんだ」

「二人共、もう帰る感じ?」

「まあ…コイツを早目に連れて帰った方が良いから」


「手伝おうか?」


「あー、大丈夫!俺、慣れてるし心配しなくても良いよ。それに女の子には手伝わせる事は出来ないよ」



その時、潤の携帯が鳴った。


「潤…電…話…鳴ってる…けど?」


と、俺は泥酔の状態で潤に言った。



「分かってるよ!ちょっと待ってろよ」



潤は電話に出る。



「はい、もしもし。お疲れ様です。えっ!?今から?いや…俺、もう飲んでて今から友達送らないといけなくて…すみません。分かりました」


と、潤は電話を切る。



「潤平君、澪君、私が送ろうか?同じ方向だし」

「えっ?同じ方向だったっけ?」

「うん。そうだよ」



《いや…違う気がするんだけど…どちらかというと優羽ちゃんの方が…》



潤は疑問に思う。



「いや…大丈夫だよ。俺が連れて帰るから」


「大丈夫だよ。ほら、こっちは任せて!電話、職場からだったんでしょう?行って良いよ」




潤は、強制的に和佳奈ちゃんに追い帰されるかのように押し退けられる。



「………………」



「じゃあ連れて帰るね」

「えっ!?あっ!和佳奈ちゃん!」




潤が止めるも彼女、和佳奈ちゃんはタクシーを拾い俺を乗せて帰って行く。


潤は、すぐに、ある人に連絡した。




「優羽ちゃん?今、大丈夫?」

「うん」

「仕事中にごめん」

「えっ!?仕事中?ううん。私、もう自分の部屋だよ」

「えっ…!?本当に!?」

「うん」

「…騙された…」

「えっ…?どういう事?」

「今から出れる?」



私は潤平君から事情を聞いた。



和佳奈が澪を連れて帰って行った事。


澪とは逆方向なのに彼女はどうして?と、私は潤平君に和佳奈の部屋の真実(こと)を話した。


私達は和佳奈に対して、疑問を抱いた瞬間だった。


私は、足早に部屋を飛び出し和佳奈の元へと急いだ。




「…っ…あれ?…俺…」

「澪君、大丈夫?」



ビクッ

俺は一瞬、体が強張った。



「…えっ…?…和佳…奈…ちゃん…?どうして…?潤は…?」

「会社の人に呼ばれたっぽくて私に任せられちゃった♪」


「いや…アイツはそんな事する奴じゃ…運転手さん止め…」

「送るから大丈夫よ。同じ方だし。運転手さん、そのままで大丈夫です」

「何言って…」



俺はすぐに降りてでも、この場を離れたかった。


だけど、お酒が入っている以上、体が思うように動かずにいた。




《くそ…マジ最悪…体が思うように動かねぇ…》



タクシーは、俺達を乗せて、全く逆方向に進んで行く。



《全然…逆方向じゃねーかよ…ふざけんな…一体…何が目的なんだよ…意味…分かんねーし…》




俺は自分が腹立だしかった。


お酒の影響により気付けば俺は眠っていた。


俺が寝ている間、彼女、和佳奈ちゃんの部屋と思われる所につく。




ふと目を覚ます俺の前には、彼女が肌の露出度の高い格好で俺に股がっている状態だった。


そんな俺も上着が脱がされた状態だった。




「…えっ…!?…ちょ…和佳奈…ちゃんっ!何考え…」



抵抗する俺に、キスをし押し倒した。


俺の体は強張る。



「私を抱いてっ!」




ドンッ


俺は彼女を押し退けた。



ドサッ


床に転倒する彼女。





「澪君っ!」


「何考えてんだよ!帰るっ!」



慌てるようにフラつく体を支えながら部屋を出て行き始める俺。



「待って!澪君っ!」



俺に抱きつくように引き止める和佳奈ちゃん。




「は、離せよっ!触んじゃねぇっ!」



和佳奈ちゃんは、再び床に転倒した。




「…ごめん……」




俺は申し訳なさに軽く謝り異性に対する恐怖感がぶり返してしまい急ぎ足で部屋を出るとエレベーターに乗り込む。



「…澪君…せっかくチャンスだったのに…」



「チクショーっ!ふざけた事しやがって……!……せっかく…少しは落ちついてたのに…」




ガンッ


俺は、エレベーターの側面をグーッで殴る。




ガクーッ ズル…


俺は崩れ落ちるように寄りかかるように座り込む。




「…ふざけんなょ…」




エレベーターの扉が開く。


俺はゆっくりと立ち上がりフラフラと降りる。


場所が把握出来てない俺は、ただひたすら歩くしかなかった。





そんな中、私は入れ違いで和佳奈の部屋を訪れた。




「はい…」



和佳奈の格好に違う意味で胸が跳ねる中、目のやり場がない。




「ご…ごめん…」

「何?どうしたの?別に良いわよ。女同士だし」

「…それは…そうだけど…」

「で?何の用?」

「…澪は?」


「えっ!?」


「…潤平君から…連絡があって…」

「…彼なら、もういないわよ!とっくに帰ったからっ!」




バンッと和佳奈はドアを閉めた。




「ごめん…飲んでて…それに眠いし疲れてるの。またね」



「…私こそ…ごめん…」




私は渋々帰る事にした。



ガンッ


ドアを叩く和佳奈の姿があった。




「…どうしてよ…。私が遥かに美人でスタイルだって良いのに…お酒飲んで、すぐに眠るあの子に男が寄るわけ?あんな奴…最初の時に傷付けてしまえば良かったのに…!マジムカつく!」




彼女の本性が現れた瞬間だった。



私は、そんな事など知るよしもなく………




「…澪…」



私は澪に電話を掛ける。



「お願い…澪…電話に出て…」



「お掛けになった電話は……」


「…澪…」




私は近辺を探してみる。



その時、ふと公園に人影を見掛けた。


私は歩み寄る。




「…澪…?」

 



ビクッ


俺は名前を呼ばれ肩が強張った。





「…優…羽…」




私が見る限り、澪が少し怯えているようにも見えた。



「…澪…傍に行っても…平気?」



「……………」



澪は下にうつ向き目を閉じていた。


私はゆっくりと歩み寄る事にした。




「…澪…」



私はゆっくりと優しく澪に触れながらも、そっと抱きしめた。



「…優…羽…。…俺…」


「何も言わなくても良いよ。落ち着くまで抱きしめててあげるから…私が傍にいてあげるから」



澪は震えながら、ゆっくりと私を抱きしめ返した。


まるで仔犬のような小さな子供と思われるような素振りで、自分に言い聞かせているのだろうか?


多分、気持ちを落ち着かせているような気がした。




しばらくして。



「…悪い…」

「ううん。大丈夫?少しは落ち着いた?」



私は澪の前に腰をおろす。



「…ああ…まだ完璧じゃないけど…」

「…そっか…」


「…俺…すっげぇ怖かった…せっかく落ち着いていたのに…って…」


「うん」


「俺…お前と向き合おうって思っていた矢先だったし…」


「うん」


「好きとか嫌いとか、そういうのじゃなくて今のこの関係を崩したくなくて…お互いの苦手な部分を克服出来ればって…俺達は…それを克服しねーと恋愛に踏み込めない訳じゃん?」



「…澪…」




澪は、私の頬に触れる。




ドキン



「…優羽…もう少しだけ…俺の不安取り除いてくんねーか?」


「…えっ?不安?」



その直後、澪はキスをし私達は長いキスを交わした。



ドキンと胸が大きく跳ねる中、その後、私の胸はドキドキと加速していた。



「…悪い…」

「…ううん…」




澪は私を抱きしめ、私達は再び抱きしめ合った。















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