第44話 思わぬ緊張と来客


 ちょっ、ちょっと待て紅玉って相当レアなアイテムだよな? なんでこんなところにポンと落ちているんだ?


 ってかこれを持ち帰ってら絶対に前みたいに問題になる奴だよな。絶対に見せちゃダメな気がする。よし、これは見なかったことにしよう。俺は薬草採取をすればいいだけだ、そうだ、変なことはしないに限る。


 んー、でもだからと言って放置するのもなー。これが物凄い値打ちだったら売るだけでボロ儲けできるかもしれない。だから見なかったことにはするんだが一応キープだ。


 でも持っておくと言ってもゲームみたいにアイテムボックスがあるわけじゃないから、少し不安だな。何かの拍子にポロッと落としてしまって見つかったり逆に盗まれたりするかもしれない。


 まあ、盗まれる分に関しては元から俺のものじゃないから別にいいんだが、ちゃんと気をつけておかないとな。


 俺はその後、薬草を無事に採取を終えて報酬金を受け取った。マラルルスの時に比べてば流石に見劣りするが、日銭は稼ぐことができた。これでまた数日間は宿でゆっくりできるな。


 とりあえずー、寝るか。


 ボフッ


 俺は今日一日、ギルドへの緊張もあってか、思ったよりも疲れていたようだった。そりゃ一ヶ月も労働をしていなかったのだから当たり前と言えば当たり前なのだが。


 そこに加えて紅玉もきたのだ、即寝以外選択肢が無かった。


 俺は地底に引き摺り込まれるかのように眠りについた。



 ❇︎❇︎❇︎



 俺はギルドマスター直属の暗部、情報収集部隊の猿だ。今日はマスターから監視命令がでているヤマダ・タロウの監視のため、宿に潜入する。


 この者は最低ランクの冒険者で監視の必要性がまるで感じられない小物なのだが、マスターが厳重に監視するよう仰ったのだ。


 なんでも今までに無い存在、だそうだ。だとしても宿に潜入する必要までは無いと思うのだが。


 キィーーッ


 俺は野鳥も寝静まる深夜に目標が寝泊まりする宿に潜入した。コイツはずっとこの宿に泊まり続けているらしい。


 持ち家は無理にしろ部屋を借りれば良いものを、もしかしてコイツは金持ちなのか?


 対象はまるで危機感の一つもないような格好でベッドの上で寝ていた。ま、まさか自分が監視されているとは思わないだろう。


「っ……!?」


 こ、これは赤竜の紅玉!? な、なぜ紅玉をコイツが持っているんだ? コレは各国の貴族が喉から手が出るほど欲しがっている、とても高価なものだというのに……


 それにこれは滅多に市場に出回らないものなんだぞ? なんでコイツが? しかも仮に発見されたとしても無秩序に値段が吊り上がる代物だ、最低ランクのコイツが持っていいものではない。


 ゴクリ


 自分の喉が無意識になった。情報部隊の俺がまさか無意識に反応させられるとは……


 一瞬でもこれを盗めば、と思わせるとはなんたる魔力なんだ。


 それに、こんなものを普通にこんな所に置いておくコイツは何者なんだ? 普通仮に持っていたとしても厳重に管理するだろう? せめて鍵のかかる場所にいれるのが普通だろう。


 もしかして、コイツにとっては……


 これ以上は推測の域を出ない。それに、マスターへの報告が急務だ。これは下手すればものすごい存在へと首を突っ込んでいるのかもしれない。


 より厳しい監視網を設けるべきだろう。


 俺はギルドマスターへと報告するため、音も立てずその場を後にした。コレはもしかしたら予想だにしないことが起ころうとしてるのかもしれない。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

この武器で一体どうしろと?〜ランダム武器生成というクソスキルを貰った男の末路〜 magnet @magnetn

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ