第二夜

 

 

 こんな夢を見た。

 調査隊ちょうさたい行進こうしんをしている。その中の、る一人の男は、アリの触覚しょっかくみたいなものがえた独特どくとくなデザインの宇宙服を着ている。隊員たるわたしは部屋の四隅よすみからぐんと飛ばしたラインの先にある消失点しょうしつてんを探す任務についており。消失点を探すための線を、延々えんえんと室内へ書き込んでいた。

 けれどわたしというのは元々もともと三角形さんかくけい」が書きたくてこの調査隊へ入っていたから、「消失点を探すための線を、どうしてわたしが書かねばならぬ」と、心の中で愚痴ぐちていた。が、それは声に出ていて。不服ふふくを聞いた隊員たちは「やめろやめろ」と、わたしのことをバッシングした。

 そんなわたしの眼前がんぜんに、プロビデンスの目があらわれた。

「これだ!」わたしはさけんだ。プロビデンスの目が示す光背こうはい、そのラインこそが、わたしたちのさがもとめる『消失点しょうしつてんへといた筋道すじみち』―――そのものであるとさとったからだ。

 みつけたわたしたちはとてもうれしく。先ほどまでのいざこざも、なにもかもを忘却ぼうきゃくして、歓喜かんきをして、うんだーばらばーと気持ちをうたい、ちりりりりん、とかねをならした。

「ぢゅーんぢゅーん」

 アリ宇宙服の例の男が、あたりをうろつき空にさけんだ。

「わしはラインをなぞります」

 犬を探す、隊員でもないおじさんが、わたしたちに宣言せんげんした。

「とてもユニークな調査隊ですね」

 上級職の、塔を管理・保護する人たちが、わたしたちのことを不敵ふてきわらった。


 洞窟どうくつを出る。

 会館かいかんだった。

 わたしたちは錯乱さくらんしていた。錯乱しながら、必死になにかを探していた。さがしものはプードルのような、とても小さい、小さな犬だ。

「ぐわり」音がした。

「ぢゅーん」


 田中君へ


 というニュアンスのこもった、なぞこえがあたりにひびいた。

 犬をみつけた。 


 犬と一緒に散歩をしていると、謎のちびっこ軍団が、わたしたちの前に現れた。ちびっこ軍団のすぐそばには猫が一匹。ちびっこ共の親みたく、すりすりい歩いている。

 それらの邪魔じゃまをせぬようにと、われらはひっそり横を通った。

 ちびっこ軍団の中から、シマシマ服と、ピンクズボンをはいた女の子二人がやってきて、「ふふふ、ふふふ」とわれらを笑った。

 彼女たちの行動に、親めいた猫は「あ」と思い、「わたしは無関係むかんけいですのよ」と、しばらくしらばっくれていた。が、わたしが知り合いとしるや、急にゴロゴロスリスリと、「なでて、なでて」というように、子供みたいにわたしにあまえた。って、ころがって、おやであることをやめてしまった。

 

 

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