雪女がオンライン!?【下】~雪女の【雪女】による、プレイヤー狩り♪~

『……何処どこだぁ?』


 外は猛吹雪だったが、今は静かな雪原に立っている。


 私が管理していた、立山じゃないな。




 雪女が飛ばされた世界は、2ヶ月前に発売を開始した【NEXT×STAGE】第4作、ーーー【NXST×STAGE~SNOW & COUNTRY~】だった。


 舞台は、【雪国】。

 期待値はほどほどなので、参加プレイヤーもほどほどになり、まさに常識と未知が混ざりあった世界になっている。


『ゲッ!ゲッ!

 コイツ、ヨワイ、オモチャ!』

『『ヨワイ!ヨワイ!』』


『やめてくれ~、助けてくれ~』


 目の前で、白いゴブリン3匹につの付きウサギがリンチにあっている。


ーーーう~ん。ここは、何処だ~?


『うん?

 何か、着物が綺麗なような?』


 雪女が着物を触れると、アニメでよく見る、【ステータス画面】が広がった!


種族【雪女】Lv.1


『こ、これは!?』

『(もしかして?)(あの!)

 ゲームの世界に入れた!?』


ーーーえっ?

 でも、種族とレベル以外、【■■■】なんだけど…


『助けてくれぇー!!』


 ウサギが助けを求める!


『ログアウト!……何も起きない』

『ゲームアウト!ヘルプ!メニュー!』


 メニューだけが反応し、さっきほどと同じ画面が開く。


 ま、いっか!


 日本に未練なんて、50年くらいで失くなったからな!


『助けてくれぇ…』


ーーービキッ、


『うっせぇぞ!!』


 ウサギをリンチしていたゴブリンが、雪女の怒鳴り声に振り向く。


『ギャギャ?

 オマエ、シラナイ』

『ヨソモノ、ハイジョ?』

『ヨソモノ!』


『カカレ!!』

『『ギャギャギャ!』』


 白いゴブリン共が、短い棍棒を持って襲ってくる!


ーーーあ?


『てめぇら、誰に向かって来てんだ、ごら゛ぁ?』


 手から冷気を放出し、一瞬でを作る!そして、向かって来たゴブリンを殴り飛ばす!


『ギャ…』

『ギッ!』

『キギャッ!?』


 もちろん、

 釘バット風に作ったバットは、ゴブリンの身体を容易に破壊する!


『生意気だなぁ?1発で死ねよ』


ヒュォオー!!


 雪女が白い息を吹くと、その風は吹雪となり、見た目以上の威力でゴブリンたちを襲った。


ーーーみるみるうちに、ゴブリンの氷漬こおりづけが出来上がる!


じょうちゃん、すげぇな!』


 ボロボロの角付きウサギが話しかける。


『あ?てめぇ、誰だ?』

『てか、ウサギがしゃべんじゃねぇよ』


ーーー夢が壊れるだろ。


『まじか…』


ガサッガサッ……ズンッ!!


 ウサギが落ち込んでいると、隣の茂みから、さっきほどより大きなゴブリンが現れた。


『オレのブカを、よくも、ヤッテくれたナ!』


『部下の管理くらい、ちゃんと見とれや!!』


ガンッ!!


 ゴブリンたちの親玉、ホブゴブリンが大きな剣を振るうが、雪女がバットで地面を殴ることで隆起した氷に押し流されてしまう。


『嬢ちゃん、魔法が使えるんかいな!?』


『魔法?

 雪女なら、これくらいできるだろうが?』


『え?【雪女】って、何や?』


 はぁー?

 ……ゲームの世界だったわ。ここ。


 このウサギが、ナチュラルに話しかけてくるから麻痺してたわ…。


『■■■、■■■■?

 ーーー■■!■■■■■■■■!』


『あぁ!?

 …お?人いるじゃん♪』


 雪女が、聞こえた声の方に振り向くと、プレイヤーと思われる男2人と女1人のパーティーがいる。


『お~い♪ーーーぁ?』


 パーティーは雪女をひとしきり見た後に剣や杖を構える!


 PKかっ!?

 ゲームの世界でLv.1の私を相手に!?

 …やってやるよ!!



ーーーあれ?

 これ…、今…死んだらどうなんの?



 死



 雪女は恐怖を覚えた。

ーーーせっかく来たゲームの世界をのに死ぬことに…。



≪Side:プレイヤー3人組≫


『あの子、可愛くね?

 ーーーって、モンスターじゃん!』

『本当だ、新キャラか?』


『どっちでもいいでしょ!

 2人とも、警戒!』


『この新武器のお披露目には、充分じゃん!』

『それに、Lv.1だぜ~?』


『あれ…まじで買ったの?』

『課金したのか…、あの高いの』


『…行くぞ!!』


ーーーーーー『!!』ーーーーーー


『分かってるーーー』

『なっ!?

 て、撤退ーーー』


 雪女が氷のバットを投げて、パーティーの女の子の顔を

 新しく作った氷の槍が、背の高い方の男の胸に


『ーーーへ?』


 雪女に向かって走り出していた男が、仲間が静かになったので振り向いた瞬間、吹雪が男を包む!


『何なんだ!?これは!?』


ーーーあれ?凍らねぇなぁ?


 雪女は、首をかしげる。


 男は課金装備の【炎の赤剣せきけん】の効果の【3回まで【凍結】無効】によって無事なのだ。


『クソッ!クソがっ!!』


 男が剣を振り、スキルを乱発するが、吹雪を一瞬だけ退しりぞけるだけで、振り切れはしない。


『足元に注意が足りてねぇ』


ザシュッ……


『グゥッ!?

 何だ、これ、Lv.1の攻撃だろ!?』


ザシュッ!ザシュッ!ザシュッ!ザシュッ!


 地面から生えた氷が身体を下から貫く度にHPが減っていき、5本目で0になった。


ーーー吹雪が晴れると、そこには男たちの装備やアイテム、お金などが山積みになって残っていた。


『はははは!

 これ全部、戦利品なのか♪』

『すげぇ~♪』


『なぁ…嬢ちゃん、MPはあとどれくらいや?』


『誰だ、お前?』


 喋るウサギとか、キモッ…


『嬢ちゃんが、助けたホーン・ラビットやで!?』


 いたか?……いたな、そういえば。


ーーーで?MP?


『メニュー。

 ありゃ?MPはもぅ、ねぇや?』


『そうか…。

 嬢ちゃん、すまねぇがな、これも勝負の世界や!!』


 ホーン・ラビットが角を突き出して跳躍する!

 そして、雪女がその角を鷲掴みにする!


『てめぇ、私に喧嘩売るとは、良い度胸だな…』


 掴んだ角の表面から霜が走り、ホーン・ラビットの身体に広がっていく。


『ワイの身体が、凍っていく!?

 MPが失くなったんじゃ!?』


『1本目のゲージが、なっ!』


 雪女が角を強く握ると、芯まで凍った角がバキバキっと砕けた。


『ゆ、ゆる、許してくだせぇ!』

『ど、どうか、命だけは!』


『いいぜぇ~♪『ありが…』その代わり、死にたくなるほどボコるけどなぁ?』


………………

…………

……


あねさん、【山田】の旦那ですぜ』


『……んん?ろうしたぁ…【山田】ぁ…』


 氷の城の中心部、【王座の間】でゴブリン・ナイトの【】が報告に来た。


 さっきまで、ジャイアント・ホーン・ラビットの【】のふわふわな背中で寝ていたので、雪女の呂律ろれつが回っていない。


『ニンゲンがクル、どうすればいイ?』


『何人?』


『いっぱい、オトリがセントウ、ゼンメツしタ』


『へぇ…、遂に本気になったか?』


 この5日間。

 雪女はプレーヤーに会っては戦闘、…を繰り返していた。   


 不思議に思っていたが、

 ある日、自分のプレーヤーネームである(◼️で塗り潰しされているが)部分の枠が、モンスターと同じ赤色であることに気づく。


 舎弟になり、雪女ののもと、プレイヤー狩りをして、ホブゴブリンから進化した【山田】(名付けた)と、ホーン・ラビットから進化した【ポチ】(こちらも、名付けた)に確認を取ると……


 え?モンスターじゃないの?


ーーーみたいな反応だったので、軽くボコった。


『モンスターなら、モンスターらしくプレーイングするか!』


っと、ポジティブに考えて、雪女はプレーヤー狩りをしていたのだった。


………………

…………

……


《Side:プレーヤー》


ーーー4日前。


『おい、聞いたか?

 新人達が、【白雪の森】で新キャラに会ったんだとよ』


『ほぅ…、あそこは攻略されてたのにな?』

『俺も行ってみるか?』


『やめとけ。

 その新キャラは、見たことないスキルを使うらしい』

『しかも、レベル以上の攻撃力で、戦闘したプレーヤーはになっているみたいだ』


『俺は、そこら辺のザコとは違うぞ?』


『一番ヤバいのが、負けたプレーヤーは所持金、装備、アイテムボックスの中身、さらには経験値までそうだ…』


『ーーーは?』

『んなバカなことがあるのかっ!?』


『実際に研究班がザコ装備で負けてみると、装備が消えて、プレーヤーレベルがらしい』

『そして、もう1度戦った時には、【白雪の森】のゴブリンどもが装備を着ていたらしい』


の強さが上がる……ってか?』




ーーー2日前。


『おいおい!

 あそこのモンスター達、強すぎだろ!』

『レベルだって、最前線と同じくらいの奴がいたぞ!』

『ザコを倒しても、装備もザコだしな…』

統率とうそつしている個体がいるな』


 冒険者ギルドの中では、プレーヤーたちが【白雪の森】の異変について話していた。


『イベントかな?』

『イベントじゃなかったら、何だよ!?』

『まぁ、落ち着けよ』


ーーーバンッ!!!


『あの森の霧まで入ったぞ!』

『『『何ぃっ!?』』』


 初心者装備の男が、扉を勢いよく開く!

 

 誰しもが、こいつも死んだか…っと思ったが、突如とつじょ、現れた濃霧に包まれた【白雪の森】の最奥さいおうまで、この男は見てきたという。

 

 あそこには何かあるっと、プレーヤーたちが向かったが、地の利を使い始めたモンスター達が、違う種族との連合を作って奇襲してくるという異常事態が、プレイヤー達の侵入を阻んでいた。


 そして今日、


 今まで知られなかった謎のベールが開かれる。


『城だ!

 巨大ながあった!!』


『『『城?』』』


『……、……まさか、【氷魔城ひょうまじょう】か!?』

『【】の!?』

『まだ、PVのやつだろ!』


………………

…………

……


『(これだけのプレーヤーと、最前線のプレーヤー達の集団がいれば……)』


『皆!油断するな!

 負けると敵が強くなると思え!

 負けるなら、逃げろ!』


 先頭せんとうでは、新進気鋭しんしんきえいのルーキーになり、急スピードで最前線プレーヤーの仲間入りしたプレーヤー、【漆黒☆堕天使】が指揮をとっている。


『ーーーモンスターだ!

 右5、左4…いや、8!』

『総員、戦闘配置!!』

『壁役は前へ!遠距離は、中間まで引きつけてから攻撃開始!』


………………

…………

……


『ここは、捨てる』


『しかし…、アルジがいればカてるのでハ?』


『そうやで!嬢ちゃんなら勝てるやろ?』


『別に、ここに居座る必要はねぇし』

『レベルも、装備も充分だから、別の場所に行く!』


 冒険したいしな!


『このチは、どうするのデ?』

 

 【山田】が不安げに問う。


『【山田】に任せるわ♪』

『【ポチ】は、案内役な!』


『え、嫌『…』おともさせて貰いやす!!』


………………

…………

……


『総員!突撃!!!』

『『『ウオオオオオッ!!!』』』


 プレイヤー集団が、雪女が3日かけて作った氷の城の中に入り込んでくる!


『モンスターなし!…総員、散開!』


 正面以外にも奥に続く廊下や扉があり、集団が城の隅々すみずみを見て回る!


ーーーすでに人数は半分まで減っていたが、城まで来れた集団の士気しきは充分だ。


………………

…………

……


『アイズがアがりましタ』


『思ったより持ったな。【解除】!』


『うーわぁー……』

『嬢ちゃん、悪魔やな』


 霧が晴れ、

 向こうに見える城が、


ーーー大きく崩れ落ちていく。


『しゃあああああ!!』


 雪女が突然、右腕を空に突き上げる。


『めっっっちゃ、レベルが上がったぁぁあ!』


種族【雪女】Lv.32


『じゃっ!行くわ!私。

 また来るから、それまで【山田】頼んだぞ♪』


『ありがたき、シアワセ』


………………

…………

……


《Side:プレイヤー》


『クリア!』

『クリア!』

『クリア!』

『奥に、装備があったぞ!』

『『『何っ!?』』』


 これまで、雪女に負けたプレイヤー達が【玉座の間】に押し寄せていた。


 そして、として置かれていた、自分の武器を見つける!


『ふざけやがって!』

『クソがぁ!!』


ビキッ…


『おい、何か聞こえなかったか?』

『そうか?』


 小さな亀裂音にいち早く、【漆黒☆堕天使】のプレーヤーが気がつく。


『(ーーーまさか!)総員!撤退!

 今すぐに、城から出るぞ!!』

『何言ってんだ!!』

『俺の武器があんだぞ!』

『武器を返しもらう!』


バキッ!!!!!


『!、天井が崩壊したぞっ!?』

『いや、これは!

 城全体が壊れてーーー』

『各自、防御を張れーーー』


………………

…………

……


 城が崩壊する、少し前。


 雪女は城の内部を確認できないが、1つだけ分かっていることがある。


『【城】が壊れるんだぜ?

 当然、割れるだろ?』


 遠くの丘から雪女が城を見ながら、持ってきた装備のスキルで炎を作り、だんをとっていた。


『嬢ちゃん、突然の独り言は恐いでぇ…』


ゴンッ


『痛っ!?動物虐待や!?』


 あの床の先は、地獄だぜぇ?


『(また、笑ってるわ…)』

 

………………

…………

……


『皆!大丈夫か!』


バキバキッ…バキバキッ…


ーーーまさか!


『生きてる者、もう一度、身を守れぇぇ!!』

『床が決壊する!だぁ!!』

『『『クソがぁぁぁあ!!!』』』


ーーーだが…、俺の防御力なら落下したとこで!


『なっ!?』


 その時、一瞬だけ見えたのは、床下の深い穴底に氷のの輝きだった……


………………

…………

……


ーーー雪女と【ポチ】が、次なる地を目指して旅に出た頃。


、東のてにて、この【氷魔城】に似た城があるらしいです』


『へぇ?』

『私と同族でもいるのかしら?』


 【】は、嬉しそうに微笑む。


『そんな…、女王様は唯一ゆいいつにして至高しこうの存在であります』


『それは、悲しいわね』


 女王は、

 悲しげに…、しかし、少しだけ笑みをこぼして、つぶやいた。

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