魔導兵器!
俺達が地下へ行く先日――
「ちょっとこんな場所に本当に魔導兵器が存在するの?」
謎の紫色の綺麗な髪を腰まで伸ばした女性が不満そうに目の前を歩く青年に言う。
「必ず存在する。
「起動できない兵器なんて役に立たないわよ」
「だから俺達ではだ。あの方ならあれが出来る」
「まあそれが私達の任務だものね」
二人は地下深くへと歩いて行く。
道中地下牢を見つけた。
「地下牢か。囚人が沢山いるな」
「何か臭いんですけど。腐敗してるわ」
二人が匂いに嫌悪感を現していると、地下牢の一つから必死で醜い声が聞こえた。
「お、おい貴様ら。儂を助けろ。金ならくれてやる」
声を大にして助けを請うのはアレイグル。詐欺罪など多数の罪で地下牢行きとなった爺である。
「国王の記憶を呼び起こせ」
「はいはい」
紫色の髪の女性は渋々黒髪の青年に従う。
「ブレインリバース」
一度吸い取った国王の記憶が女性の中で呼び起こされる。
所謂記憶の起動だ。
「この先に扉があってその先よ」
「そうか行くぞ」
「お、おい貴様ら聞いているのか!!」
アレイグルは牢に両手を力強く掴み、必死に二人に訴える。
他の囚人共も必死に訴えてくる。
「黙れ死ね」
黒髪の青年が地下牢に収監されたアレイグルを漆黒の剣で突き刺す。
アレイグルはその場で大量の吐血をして倒れ込む。
「がはっ! き、貴様!」
「薄汚い爺が話しかけるな。俺の存在が汚れるだろうが」
その後他の囚人も黒髪の青年によって全員殺される。
地下牢は大量の血と死体だけに成り果てた。
「全員殺す必要あったわけ?」
「ただの処理だ」
「変わってるわね」
「黙れ、さっさと行くぞ」
「はいはい」
二人は地下牢を抜けて魔導兵器の下へ辿り着く。
扉は青年が漆黒の剣で破壊した。
「これが魔導兵器か」
「随分小さいようね。只の薄汚れた杖にしか見えないけど」
「これはカースケインだ。呪われた杖なんだよ」
「アイギス家代々に伝わる魔導兵器と言うからには、もっと豪勢な物を期待していたんだけど」
「兵器の強弱にサイズは関係ない」
「まあ正論ね」
他に目ぼしい物はなく、青年と女性は、薄汚れた杖を持ち帰りその場を去った。
◇
そして現在――
「何これ!?」
「囚人が皆殺しに!?」
「アレイグルさんもいますね」
俺達が目にしたのは、地下牢で死体となっているアレイグル含む囚人たちだった。
この傷跡、国王の暗殺の時と同じ。
「血生臭いわね」
「まだ殺されてからそんなに時間が経過していないんだ。それにこの傷跡」
「ライルも気づいていましたか」
「ああ。国王暗殺の犯行と同じ手口だ」
「じゃあこの先に居るってこと?」
「それは分からない」
俺達は醜く悲惨に死んでいる哀れな囚人たちを横目で見ながら、奥深くへと進む。
「扉が破壊されているな」
目の前の大きな扉がバラバラに破壊されている。
そしてその先には――
「何もないな。一足遅かったか」
「ですね。問題は何があったかですが」
「このスペースだと巨大兵器ではなさそうだが」
「どちらにしろここにもう用はありませんね」
「だな。地上へ戻るぞ」
「ええー戻るの!? 無駄足だったって事?」
「そうなるな」
「そうなります」
愕然としたアーニャを連れて俺達は地上へと戻った。
◇
「ディオスか。何の用だ?」
「第一王子アガール様。次の国王の座は貴方だと思いまして、ご挨拶を」
「くだらん。俺はこの国の次期国王になる予定はない。父上が死んだ今、やっと自由になれる」
「国王になる気は無いんですか!?」
「ああ。俺の目的は別にある。アイギス国は別の者が引き継ぐだろう」
「そ、そうですか」
ディオスは内心焦っていた。
何故ならアガール以外とは殆ど面識がない。
【ホーリーナイト】を目に掛けてくれる、謂わば特別扱いしてくれる存在がいなくなってしまったからだ。
「媚びへつらいたいのなら、デリウスなど他の奴に当たれ。俺はこの国を出る」
「な!? それは正気ですか!」
「ああ。父上がいた頃は、何かと縛りが多くて動けなかったが、今は父上が死んで自由になれる。まあ頑張れアイギス国英雄ホーリーナイトのディオス」
アガールはそう言って部屋を出て行った。
ディオスの顔は青ざめていた。
「くそっ、デリウスに挨拶するしかない」
ディオスは慌ててアイギス家次男のデリウス王子の下へと向かう。
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