ディオスの怒り!

 ディオスは現在自室で怒り狂っていた。



 「くそがくそが、あの大嘘つき野郎が!」



 ディオスは部屋中にある物を片っ端から投げて壊す。

 それを見たメイドが止めに入るが、そのまま殴られる。



 「引っ込んでろブスが!」

 「ひいっ」



 メイドは恐怖からか足がすくんでその場から動けなくなる。

 


 「許さねえライルの奴。俺をあんな大勢の前で恥かかせやがって」



 ディオスが荒れ狂っていると、勢いよく部屋の扉が開いた。



 「大変よディオス。国王が暗殺されたわ」

 「何だと!?」

 


 ディオスには次から次へと不幸な状況が降りかかる。

 まあライルとの決闘では自業自得なんだが。



 「誰にだ!?」

 「知らないわよ。どうするのよこれから」

 「どうもこうも新たな国王に媚びるしかねえだろうが」

 


 現国王が暗殺されたとすれば、次の国王は、国王の子供達で争われる。

 王位継承権を持つのは四人の子供達だ。

 長男のアガール、次男のデリウス、長女のセネア、次女のグラルー。

 醜い王座の争いが繰り広げられるだろう。



 「兎に角エルシー達はこの四人に近づき媚びておけ。俺も後で挨拶に伺う」

 「分かったわ。それよりまだ気にしてるの? ライルとのこと」

 「当たり前だろうが。俺は大勢の国民の前で大恥をかかされたんだぞ!」

 「ライルはそんなに強かったって事?」

 「偶然に決まってるだろうが!」



 ディオスはあくまでライルの実力を認めない。

 リーファの言葉も右から左へと受け流す。



 「絶対屈辱を味わわせてやる大嘘つき野郎」



 ディオスは荒れた自室を出て行った。



           ◇


 俺達は冒険者ギルドで話し合う。

 話し合う内容はこれからについての事。



 「で、これからどうする?」

 「私はこの国にこだわりはないけど、リーファは……」

 


 リーファは教会の代表。しかもアイドル的存在。

 この国をすぐには離れられないだろうな。



 「私はアクアラプラスとして行動します。教会の立て直しは告発してくれた秘書を含めて信頼できる人物に任せてあります」

「大丈夫なのか?」

「はいシスターマディアは信頼できます」



 シスターマディアはこの教会の子供たちの面倒を見ている。

 アレイグルとは険悪の中だった。

 現在アレイグルが失脚したことで、教会はリーファ派が仕切っている。



 「なら何かクエスト受注するか?」

 「ええー国王暗殺の犯人見つけようよ」

 「手掛かりが無さすぎだろ」

 「まあそうだけど」



 アーニャはどうしても国王暗殺の犯人が気になるらしい。

 まあ俺も凄く興味はあるけれど。



 「その件ならシスターマディアが知っているかもしれません」

 「シスターマディアが!?」

 「はい。国王の古くからの友人でして、腐れ縁みたいなものだと」

 「成程。何か国王やこの国の秘密について知ってるかもな」

 「案内します」



 俺達はシスターマディアと会う事となった。


         ◇


 「おやリーファじゃないか。まだこの国にいたのかい」

 「はいまだこの国でやり残した事がありますから」

 「そうかい。でももう自由に旅立っていいんだよ。子供達や教会は私達に任せておくれ」

 「はいありがとうございます」



 シスターマディアは修道服に身を包み厳格な顔つきで俺達を見る。

 若いころはさぞ美人だっただろうな。



 「あんた達がアクアラプラスだね。噂には聞いているよ」

 「ライルです。こっちはアーニャです」

 


 俺達が深々と頭を下げる。

 その時、シスターマディアの背後から小さい子供たちが一斉に飛び出してきた。



 「リーファだ、遊ぼう」

 「お兄ちゃんも一緒に遊ぼう」

 「お姉ちゃんも」

 「うわあっ」



 俺達は子供たちに引っ張られて教会内で子供たちの世話をする。



 「悪いねえ。この子たち親や兄弟がいなくてね」

 


 そうか孤児だもんな。

 仕方ない遊んでやるか。



 「ほら」

 「わーい」



 俺達はその後数時間子供たちの相手をした。



 「はあーっ、疲れた」

 「飲み物とお菓子だよ。休憩するといい」

 「ありがとうございます」

 


 俺達はその夜子供たちが寝静まった頃、シスターマディアと話をすることにした。



 「それでリーファ何か用件があったんだろう?」

 「はい。その前に教会は大丈夫ですか? 修繕費や食費など子供たちが満足に暮らせるだけのお金は?」

 「取り敢えずは心配ないよ。アレイグルが貯め込んでいたお金で教会も立て直す予定さ。生活費も心配ない。その後は次の国王次第だね」

 「そうですか。取り敢えずは安心しました。私もクエストで稼いだ金は寄付しますので」

 「有難いけどリーファは自身の幸せを一番に考えておくれ。今まで窮屈で不幸な生活だっただろう」

 「大丈夫ですよ。私は」



 次の国王か。確かに王位継承権を持つ四人の誰かだろうな。

 醜い利権争いが始まりそうだ。



 「シスターマディア、国王とは腐れ縁ですよね。でしたら何か暗殺される要因は思い当たりませんか?」

 「そうだね。可能性があるとすればアイギス家代々に伝わる何かが地下にあるという情報を耳にしたことがあるよ」

 「地下に!?」

 「ああ。昔酒の席で聞いたことがあるね」

 「ありがとうございます。貴重な情報が聞けて良かったです」

 「気を付けるんだよリーファ。暗殺と言い、王位継承争いと言い、きな臭いからね」

 「はい、気を付けます。でも私には信頼できる仲間がいますので」



 リーファは俺とアーニャを見る。

 その様子を見て安心したようにシスターマディアは微笑む。



 「じゃあ地下に行ってみるか」

 「ええ」

 「はい」



 俺達はアイギス家に伝わる何かがある地下へと向かった。

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