Sランクモンスター討伐!

 俺達は闇の森の中間層以降無駄な戦いをしない為、《ラプラスの悪魔》を用いて戦闘を回避した。



 ここで右に曲がったら――

 ここで左に曲がったら――



 「左はモンスターがいない。進もう」

 「凄いですね。未来が分かるんですか!?」

 「まあな。俺の能力なんだ」

 


 サレンは俺の《ラプラスの悪魔》に驚いている。

 未来予知なんて唯一無二だから仕方ないとも言えるが。

 そんな話をしているうちに深層へと辿り着く。



 「思ったより代り映えはしないな」

 「そうね。調査するにもこれじゃ……」



 とその時だった。

 


 グルルルルルルルルルルル。



 「奥から唸り声がする。サレンは俺達の後ろに」

 「は、はい」

 


 俺とアーニャが剣を抜いて構える。

 深層の奥深くで唸り声を上げる一匹のモンスターをこの瞳に焼き付けた。



 「あれはSランクモンスターの魔獣ダークドッグ!?」

 「まさかこんな森にSランクモンスターがいるなんてね。幸運なのか不運なのか」

 


 アーニャは楽しそうで余裕そうな表情をしている。

 全く流石【剣聖】だ。



 「戦闘は避けられるがどうする?」

 「浅層へと降りてこられても困るしここで討伐しましょう」

 「オッケーだ。じゃあ俺がサポートするから攻撃頼む」

 「任せて。久々のSランクモンスター。楽しみだわ」



 俺はサレンを後ろへと下がらせて《ラプラスの悪魔》を使用する。

 同時に魔獣ダークドッグがこちらに気づき口から炎の球体を吐く。



 ここで回避したら――

 ここで立ち向かったら――



 「指輪の効果で炎を無効化できる。アーニャそのまま突っ切れ」

 「オッケー。はあああああああああああああ!」



 アーニャが炎の球体に突っ込みダークドッグへと向かって行く。

 そしてサレンから貰った指輪が青く光り輝き炎の球体を無効化した。



 「終わりよダークドッグ」



 ダークドッグはアーニャが居る空中に炎のブレスを吐く。

 しかし指輪の効果で無効化される。

 アーニャは高価な剣を右手に携えて空中で数回転してダークドッグへと攻撃する。

 


 グガアアアアアアアアアアアアアアアア。

 ダークドッグは体を切断されて苦しみの悲鳴を上げる。

 皮膚が比較的硬いダークドッグをいとも簡単に切って見せた。

 アーニャの剣は特殊な物質で出来ているのは間違いないだろう。



 「す、凄い。Sランクモンスターなのに一瞬で」

 


 サレンは俺達の活躍に驚いている。

 と言っても今回は俺は殆ど何もしていないんだがな。

 アーニャと指輪が凄かっただけだ。



 「この指輪って一体?」

 「どうやら火を無効化できるようだな。どの程度の温度や規模までかは知らないが」

 「サレン返すわ。タダで貰っていい物じゃないし」

 


 アーニャがサレンに指輪を返そうとする。

 しかしサレンが焦って両手でいりませんとジェスチャーした。



 「いいの本当に? 火を無効化できるのよ」

 「いいんです。冒険者でない私が持っていても宝の持ち腐れですから」

 「そう。じゃあ有難く頂戴するわね」

 「はいこの指輪もアーニャさんに貰われて幸せだと思います」



 まあ指輪の件は置いておいて、深層を調査しないとな。


 その後深層を調査したが特に代わり映えした様子はなかった。

 Sランクモンスターに限って言えば一匹だけだった。

 そんなに広大な森でもないしな当然の結果か。



 「じゃあ調査も終えたし森を抜けて隣国のガラパルドへと向かおうか」

 「やっと森を抜けられる。もう日も暮れてるし早く宿に泊まりたい」

 「だな。道案内は任せろ。ラプラスの悪魔を使用する」

 


 ここで東に行けば――

 ここで西に行けば――

 ここで北に歩けば――



 「森を抜けられる。隣国のガラパルドに無事到着する未来が見えた」

 「ありがとうございます。何とお礼を言っていいか」

 「いやいいって。困ってたら放っておくわけには行かないしな」

 「お優しいんですね」

 「普通だと思うが」



 サレンは何度も深く頭を下げてお礼を言ってくる。

 ただ護衛しただけなのに。

 おまけに指輪まで頂いちゃって。

 最後までしっかり護衛しよう。



 「じゃあ今日はもう遅いしガラパルドで一泊しよう」

 「やったあ。一緒に寝ましょ」

 「二部屋とるからな」

 「ええ!?」



 俺とアーニャのやり取りを見てサレンはクスクスと笑った。

 俺達は無事に闇の森の深層調査を終え森を抜けた。

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