【ホーリーナイトサイド】ディオスの思わぬ誤算!

 ディオス達は冒険者ギルドにある一つの個室で雑談していた。



 「やっと嘘つきのお荷物がいなくなったな」

 「全くよ。未来予知ラプラスの悪魔ですって。笑っちゃうわ」

 「笑えるよな。偶然を予知だと豪語しやがって、馬鹿じゃねえの」

 「そう言えばいつも最初に口だしてたわね。本当にうざかったわ」

 


 ディオスとエルシーは豪華な椅子に座りながら追放したライルの悪口で盛り上がっている。

 ライルを嘘つき呼ばわりして馬鹿にしている。



 「そろそろ到着する頃か?」

 「そうね。最強の魔聖女リーファが来る頃よ」

 「これで俺達は最強のパーティーの完成だな。この国トップは揺らがない」

 


 魔聖女とは最上位職に位置する役職である。

 この国最大の教会が最年少最高成績で魔聖女認定したのがリーファだ。

 回復だけでなく、魔法で戦闘も行える万能な役職だ。



 「これで俺達は安泰だな。はははっ!!」

 


 ディオスがそう笑った時、扉がコンコンと音を立てる。

 ノックの音だ。

 丁寧なノックは育ちの良さが出ていた。



 「待っていたよ入ってくれ」

 「失礼します」

 


 魔聖女リーファは黒と白の修道服に身を包んで綺麗な背筋で綺麗な立ち振る舞いをする。

 用意された豪華な椅子に姿勢正しく座っている。

 ディオスやエルシーとは大違いだ。



 その後すぐに乱暴なノックでゴンゴンと音を立てるものが居た。

 それは【ホーリーナイト】のパーティーメンバーガロンだった。

 そのすぐ後ろにはオリアスが居た。



 「ようこそ我がホーリーナイトへ」

 「どうそ宜しくお願いします」

 「いやあ本当に美しい女性だ。リーファが加入してくれて嬉しいよ」

 「こちらこそかの有名なホーリーナイトに入れて大変光栄です。宜しくお願いします」

 


 ディオスは美しい女性を嘗め回すような視線でリーファを見る。



 「ちょっと見すぎじゃない」

 「いいだろ。こんな美人滅多にお目にかかれないぜ」



 エルシーは嫉妬心丸出しの表情をしている。

 女性は自分より美人であれば嫉妬するものだ。


 

 「俺はディオスだ。宜しく」



 ディオスはリーファより腰を低くし右手を差し出した。

 だがリーファは何故か部屋中を見渡し、首を傾げ困惑している。

 そしてその右手を取らず、テーブルに用意されたコーヒーすら手を付けず、淡々とあることを口にする。



 「一つお伺いしても宜しいでしょうか?」

 「ああ何だ? 何でも言ってくれ。リーファの為なら何でも答えるよ」

 「未来予知ラプラスの悪魔を持つライルさんはいらっしゃらないんですか? 何処かへお出掛けですか?」



 魔聖女リーファの一言で【ホーリーナイト】のメンバーは凍り付く。

 そして内心焦りだす。



 「何故そのようなことを聞く?」

 「それはこのパーティーに加入するのを決めたのはライルさんがいらっしゃるからです」

 「な!? あれの何処を評価して?」

 「先ずユニーク職というだけで凄いです。そして何より未来予知ラプラスの悪魔は最強です。実力に疑いは無いかと」

 


 ディオスは内心焦りと苛立ちを覚える。

 焦りの感情の原因はこのままでは魔聖女リーファが出て行ってしまうというものだった。

 そして苛立ちの感情の原因は嘘つき呼ばわりして追放したライルが高い評価を得ているからだ。



 「居ないのですか?」

 「いや、ええと……今は生憎外出中なんだ。少し遠出をしていてな」

 「そうですか。では取り敢えずライルさんが戻るまで待たせていただきます」

 「あ、ああ」



 魔聖女リーファは静かに部屋を出て行った。



      ♦


 「ちょっとどうするのよ? 不味いんじゃないの?」

 「分かってるがどうすればいいんだよ。知らねえよ」

 「何であの女ライルなんか評価してるわけ。大体ディオス、あんたもデレデレしすぎなのよ」

 「はあ!? 仕方ないだろあんな美少女そうはいねえよ」



 ディオスとエルシーは不毛なやり取りを交わす。

 そこに筋肉馬鹿のガロンが口を挟む。



 「まあまあもういないと言えばいいだけだろ」

 「馬鹿かてめえは。そしたらリーファも加入しないだろうが!」

 「あ、そうか。じゃあどうするんだ?」

 「それを今話し合ってるんだろうが!」



 ガロンの言動に呆れるディオス。

 それと同時にオリアスが口に出す。



 「ではライルが居なくても問題ない所を見せつければいいのでは?」

 「それで納得するのか?」

 「するでしょう。ライルに好意があるとは思えませんし、実力を評価しているというのなら居なくてもパーティーが成り立ってさえいればいいのですし」

 「そうだな。オリアスの言う通りだ。あんな大嘘つき呼び戻すなんてごめんだからな」

 「当然です。僕達だけでリーファに実力を証明しましょう」



 こうしてオリアスの意見で纏まった【ホーリーナイト】のメンバー。

 しかしそこには不穏な空気が流れ始めていた。

 徐々に徐々に崩壊の足跡が聞こえてくる感じを漂わせていた。

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