勇者の守護霊なのにパーティを追い出された件

猫根 捏涅

今北産業

 何故こうなったのか。三行で説明すると、


現代日本の凡人から勇者の守護霊に転生する

勇者以外は俺が守護霊であることを知らなかった

勇者の取り巻きにパーティを追い出される


 イマココ、である。


 まとめてしまえば実に簡潔だ。まあ、明らかに大元の原因は二行目だな。



 勇者と魔王、人族と魔族が戦う剣と魔法の世界に、勇者の守護霊として俺を転生させた張本人_____運命を司る女神リスラテアとの契約で喋れなかったとはいえ、こうなるのは必然だっただろう。


 何故なら、勇者のパーティメンバーは、今は元になってしまった俺を入れて六人の内、勇者と俺を除いて全員が女性といういわゆるハーレムパーティだったからだ。


 誰もが勇者_____リエンが魔王を倒した暁に手に入るであろう莫大な財宝と、勇者というネームバリューにつられてすり寄ってきたものばかり。

 それでも実力はある女性ばかりだったし、彼女達も別に死にたいわけではないので勇者には協力的だ。打算で動いているからこそ逆に信用できる部分もある。



 だが俺は、女神によって強引にこの世界にねじ込まれた存在だ。女神の神託があったためパーティへの加入はスムーズだったが、彼女達にしてみればどこの馬の骨とも分からない輩なのだ。

 加えて、女神との契約によって勇者パーティの旅程を調整したり、神託とまではいかないが、勇者に伝えるべき女神からのアドバイスをさりげなく伝える係も受け持っていたため、勇者との玉の輿を狙う女性達からするとさぞかし邪魔な存在だっただろう。



 ちなみに俺はあくまで『霊』だ。普通に物も触れるし透けてもいないが、人間ではない。ついでに、霊になったせいなのか、人間を発展させてきた原点とも言うべき三代欲求は極限まで薄れている。食べ物だって本当は食べなくてもいいし眠らなくてもいい。パーティの前では色々な手を使って誤魔化していたが。


 とはいえそれは俺と勇者だけが知っていることであって、彼女達は一切何も知らない。

 女神の『勇者の周りに侍るのは見目麗しい者であるべき』というよく分からないような分かるような趣向によって、見た目だけは確実にイケメンと呼べる容姿だが、男性の見た目という時点で恐らくダメだったのだろう。

 別に彼女達を襲いたいという欲求すら俺にはなかったのだが。勇者の前では仲良さげにニコニコとしているが、テーブルの下では足を蹴り合っているような本性も知っていることだし。



 そして、再三繰り返して言うが俺は『守護霊』だ。

 最初の頃こそ戸惑ったものの、今は勇者たるリエンの旅を支えることに意気を感じているし、やりがいもある。女神との契約だって忘れていない。


 だがそれ以前に、俺は_____






「まあ、こうなるよねえ」

「これじゃ守護霊ってより背後霊だよな」






 勇者リエンから、物理的に離れることができないのである。

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勇者の守護霊なのにパーティを追い出された件 猫根 捏涅 @nekonekone0721

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