第3話 出会い

 さて、目標を決めたはいいものの、どうやってこの雨の中を出歩こうか。

 そもそも、どうしてわたしはこんな体なのだろう。


 ……そうだよ。どうしてわたしがこんなことになっているんだろう。


 少なくとも、お兄さんは平気そうだった。

 ニンゲンだから? 

 そうだとして、どうしてニンゲンは平気なの?


 ……分からない。

 どうしよう。何も手がかりがない。

 わたしはどうすればいいのだろう。


 ……いや、わたしはあきらめない。

 決めたんだ。この本にのっている場所を直接見に行くんだって。


 




 とりあえず図書室に行って、もう一通り調べてみることにした。 

 とくに、ニンゲンについて。


 床に散らばっているたくさんの本を片っ端から読みあさった。

 いくつか破れて読めないものもあったけど、それでも文字だけはひろっていった。


そこら中に落ちている本をひろって読んでは放り投げ、読んでは放り投げを繰り返した。 


 けれど、どの本も暗記しているくらい何回も読んだものだから、新しい発見なんてあるわけなかった。


 だんだんと視界がぼやけてきている。

 もうベッドに行かなくては。

 そう思って図書室から出る。


 ふらふらとした足取りで階段を上った。

 でも、押し寄せる眠気に耐えられなくて、一階の廊下で倒れて、そのまま眠ってしまった。





 次の日目を覚ました時感じたのは、違和感だった。

 いつも聞こえるはずの音が聞こえなかったのだ。


 そう、あの忌々しい雨音が。


 いそいで外の様子を見てみると、空からふる光が、地上を明るく照らしていた。

 ……晴れだ。

 久しぶりの晴れだ。


 こんな日に家の中に閉じこもってはいられない。

 わたしは急いで家の外に向かった。

 嬉しさについ裸足のまま外に飛び出すところだった。

 危ない危ない。外はまだたくさんの雨水がたまっているから、それに足をつけると大変なことになる。

 ちゃんと靴を履いてから外に出た。


「ふわぁ……」


 そとでは、まぶしいほどの光が周りを照らしていた。

 地面にたまっている雨水でさえも、きらきらと輝いていて美しいとさえ思える。


 家の周りは少し開けた草むらだけど、その周りを木々に囲まれていた。

 前にも晴れた時があったけどあの時は森の中に深く入りすぎて危うく家に帰れなくなるところだった。

 今回はそういうことがないように、家の近くで我慢する。


 ……でも、ちょっとだけならいいよね。


 わたしは、草をかき分けて、少しだけ森に入り込む。

 そこは光が入りづらく程よく暗くて、また違った美しさがあった。


 そうだよね。あのしゃしんにある所だけじゃなくて、そもそも外はきれいな世界が広がっているんだ。

 ……うん。私は絶対あきらめない。何としてでもこの世界を旅するんだ。

 

 もしかしたら、この森に何か手がかりがあるかもしれない。

 わたしは、できる限り森の探索を進めることにした。

 とはいっても、森の中で迷って雨でぐちゃぐちゃになったら意味ないから、家が見える範囲に決めた。


 探索といっても、何を調べればいいのかわからない。 

 とにかく陰になって隠れている場所を調べていった。

 

 木の幹、岩の下、草の中。

 とにかく手当たり次第に見ていった。


 でも、なかなかそれらしいものは見当たらない。

 

 まあ、そう簡単に見つかるわけないよね。

 分かっていたこととはいえ、ちょっと期待してたからがっかりした。


 そうして、ため息をついたとき、近くの草むらから音がした。


 びっくりして音のした方を見ると、草がかすかに揺れていた。


 ……もしかしたら、なにかヒントがあるかもしれない。


 ゆっくりと様子を見ながら近づいてみようか。

 

 わたしが草むらに向かって足を進めると、はおびえたように激しく揺れた。

 のんびりしてたら逃げられるかもしれない。


 わたしはその草むらに飛び込んだ。


「うわあ!?」


 が声を上げるのと同時に、わたしは何かを抱え込んだ。

 じたばたと抵抗するのを必死に抑え込んでいると、やがて動くのをやめてすすり泣く声が聞こえてきた。


「……ぐすん」


 



 ――は、わたしと同じくらいの大きさの女の子だった。

 

 


 

  



 


 


 

 

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