第27話

「ぐぬぬっ! なぜこんなことに」


「それはこっちのセリフですわ! と言いたいところですが、ふふふ。ついに手に入れましたわ」


 めぐるにカッコ良く別れを告げた余は見事死ぬことに成功した。転生に必要な魔力をしっかり残し、他は全てトラックを止めるのに使った。正直、片乳で足りたがせっかくなので全てを出し切った。そう! 再び転生するために!


 まあ、たしかにめぐるとの生活は悪くない。が、そうは言っても不便で仕方ない。


 しかし、あの勇者のことだ、今度は転生する隙を与えずに殺しに掛かってくる可能性がある。そんな時にたまたまトラックが走ってきてのは運が良かった。一瞬で転生する計画を立てる余はやはり頭脳も優れておる。優れておるのに……。


「なぜ貴様の乳に転生しておるのだ!」


「知りませんよ。あなたが勝手にやってきたのでしょう」


「くぅ~~~~なんとなく聖なる力が溢れていて居心地が悪い」


「ふふふ。そうでしょう。あのデカ乳……いえ、もう元の真っ平らに戻っているのでしたね。めぐるさんとは違い、私は確実にあなたを封印して、乳としての生活を歩ませます」


「貴様、魔王よりも魔王みたいなやつだな!」


「なんとでもいいなさい。この乳から魔王の意志だけ消し去れば、わたくしは巨乳として第二の人生を歩めるのです。勇者様、待っていてください」


「ふん。その勇者はどの世界に飛ばされたのやら」


「二人は愛の力で繋がっています。こうして旅を続けていればいつかきっと」


「ほほーん。まあせいぜい頑張れ。余の『ちくビーコン』を使えば勇者のおおまかな位置をつかめるが、光魔法に対して無力なのでなーんにもできんからな」


 ちくビーコン。対象の乳首から発せられるオーラを探索する技だ。めぐるとの捜査中に身に付けた技がプラートルとの交渉材料になるとはな。やはり研鑽けんさんを重ねること大切だ。


「聖なる神官が魔王の力を借りるなど問題外ですわ。愛の力で自力で探し当てます」


「そうかそうか。頑張れよ」


 こうして、巨乳を手に入れたプラートルはその武器を利用して勇者を誘惑するために旅立った。武器である魔王は言えば、三度転生を果たす機会をうかがっている。


「別にプラートルは死んでも構わないから適当に旅をさせておけば転生できるだろう」


「なにか言いました?」


「おっと。心の声が漏れてしまったか。そうそう、勇者も修行を怠らないタイプだから道に迷ったら険しい方を選ぶといい。さすれば勇者と再会できるであろう」


「そんなこと、わたくしが一番よくわかってますわ。勇者様の隣に並び立っても恥ずかしくないよう、道中で修行を積まなくて」


「いいぞいいぞ。その調子だー」


「魔王が聖なる神官を応援するなんて気持ち悪いですね。まさか、何か企んでいるのではないですか?」


「何も企んでなどおらぬ。ほれ、足元に気を付けろ」


「へ? ……きゃっ!」


 慣れない巨乳で視界が悪くなったプラートルは小石につまずいた。この調子なら道中で死ぬのも時間の問題だろう。魔王は期待に胸躍らせた。いや、胸として躍った。


「ちょっと! もぞもぞと動かないでください。その……乳首がこすれて……」


 頬を桜色に染めたプラートルと魔王おっぱいの旅は始まったばかりだ。

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