私とあなたの恋の駆け引き。

奈代 澪

第1話 無視って苦しいんだね。

「多分君の彼氏は僕じゃなくてもいい気がするんだ」

海は深呼吸して真面目な顔をして言う。

手はとても震えている。


私と海は幼なじみ。

近所の悪ガキ共が寄ってたかってきては

海がいつもボコボコにしてくれる。

そういう仲で、海の家は両親が共働きで

ほとんど家にいない。

気がつけば、学校が終わると

いつも家に連れてきては自分の手料理をふるまうのが当たり前となり、いつしかかけがえのない存在にまでなっていた。


こんなことになるなんて夢にも思わなかった。

きっかけは多分些細な事だと思う。

海がいきなり私を無視するようになった。

他の人には優しくするのに、

私になると、とても冷ややかな声で

「あっそう。」

ぐらいしか言わない。

このやり方はとてつもなくシンプルで、

しかし、とても心をえぐり取られるような

今まで味わったこともない心情になる、

言い難い凶器。

この凶器は3日も続いた。

1日目はとても辛くて耐えられなくて、

ふとした瞬間に涙が零れてきた。


それでも海は前のように私を視界に入れては

くれない。

歯を食いしばるしかないんだ。

自分に呪文みたいに言い聞かせ、

髪型を海が好きなように変えて可愛い私で家をでる。

そんな日々が3日間続いた。

私の精神はボロボロ。

理由も分からないまま無視をされることが

こんなに苦しいなんて。



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私とあなたの恋の駆け引き。 奈代 澪 @solel

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