「君、勇者じゃなくて村人だよ」職業貸与者《ジョブ・レンダー》~パワハラ勇者達に追放されたので、貸してたジョブはすべて返してもらいます。本当は外れ職業と気づいて貸してくださいと泣きつかれても、もう遅い!
【ラカムSIDE】フィオナ姫にアプローチをするもこっ酷い扱いを受ける
【ラカムSIDE】フィオナ姫にアプローチをするもこっ酷い扱いを受ける
「へへっ。考えたんだよ。なんで、俺達がドラゴンに負けたのか?」
ラカム達は作戦会議をしていた。
「なんだ?」
「俺達連戦ばっかりだっただろ?」
「ああ。そうだな。確かに」
「それもそうね」
「確かにそうですね」
「だから俺達! 疲れがたまってたんだよ! だからたまたま負けたんだ!」
「そうかもしれませんね!」
「きっとそうよ!」
「ああ! そうだな! たまたま調子が悪かっただけだ! その通りだ!」
ラカムの言葉に三人は頷く。彼らは自分達が当たり職業についていると信じて疑っていなかった。その為、都合が悪い事からは目をそらしていたのだ。
「次はいける気がするんだ! 国王陛下に頼んで、今度もまた、ドラゴン退治をさせて貰おうぜ!」
「そうね! いけるいける! 次はいけるわよ! 私の大魔法も次は復活してるわよ!」
「ああ! その通りだ! 次こそは俺の聖剣が火を噴くであろう!」
「僕の回復魔法も!! 調子を取り戻しているはずです!」
「そうだ! 勤続疲労ってやつだ! 行こうぜ! 国王のところまで!」
◇
「何の用だ……貴様等」
明らかに国王の態度が変わっていた気がした。態度が悪くなっている。その目は面倒くさそうな目だった。できるだけ関わりたくないような目。
「わかったんですよ! 国王陛下! 無敵の俺達が、なぜドラゴンを倒せなかったのか!」
「なにがわかったのだ? ええ?」
「たまたまです! 俺達、たまたま調子が悪かっただけなんです!」
「そうなんです! そう、たまたま調子が悪くて魔法が使えなかっただけです!」
「そうだ! たまたまだ! たまたま俺の聖剣の切れ味が悪かっただけなんだ!」
「僕の回復魔法だって、たまには使えなくなる時もあります!」
四人は都合のいいように物事を解釈していた。
「ですから、国王陛下! もう一度俺達に北の洞窟のドラゴン退治に向かわせてください! 今度はきっとやってみせますよ!」
「それに関してはもうよい。既に方がついている」
「な、なんだって! ど、どうして! 誰かがドラゴンを倒したっていうんですか?」
「お前達のパーティーにもいただろう。あのトールという少年だ。戦うところを見たわけではないから何とも言えないが、あのドラゴンを倒すくらいだ。彼は恐ろしいまでの闘う力をもっているのであろう」
「「「トール!」」」
「う、嘘だろっ! あのトールがっ!」
「そ、そんなわけない!! 信じられないわっ! あいつはただの『荷物持ち』の嘘つき野郎じゃないの!」
「し、信じられない。あの『お荷物』トールが!」
「し、信じられません! あんなただの『荷物持ち』にドラゴンが倒せるなんて、とてもではありませんが!」
「ば、バカ者!」
「「「「ひいっ!」」」」
国王の怒鳴り声にラカムのパーティーは委縮した。
「我が国を救った英雄に対して、なんていう口の利き方じゃ! いくら勇者としての功績があろうとも、決して許されぬ狼藉だぞっ! 前の功績がなければ、即刻地下牢にでも叩き込んでやるところだわい!」
「そ、そんな……」
「いいから早く出ていけ! 貴様たちの顔など見たくもないわ!」
こうしてラカム達は追い出された。
◇
「不思議ね……なんで、トールの奴の名前が……」
「あんな俺達『荷物持ち』をしていた奴が、ドラゴンを倒せるわけがない! そんな事あるわけがない!」
「きっと何かの間違いですよ。他人の空似。たまたま名前が同じだっただけです」
「だよな。あいつはきっと他のパーティーの荷物持ちでもしている事だろうぜ」
国王の言葉を信じられないラカム達は都合のいいように解釈していた。
――と、その時であった。
王国一の美少女と謡われる、フィオナ姫と遭遇するのである。
「フィ、フィオナ姫。この前は無様なところを見せてすみませんでした」
ラカムはかしづく。
「ですが、あんな事二度と起きません。なぜなら俺は最強の勇者だからですっ! フィオナ姫、よろしければ俺とお茶をしませんか。それで二人の将来について熱く語り合いましょう」
「申し訳ありませんが、私は心に決めた人がいますので」
フィオナ姫は通り過ぎようとする。
「ま、待ってください!」
ラカムはフィオナのスカートを引っ張る。
「な、なによ! 無礼者!」
「だ、誰なんですか!? それは!!」
「トール様ですわ……あなたのようなまがい物ではない。真の勇者ですっ!」
「な、なんだって!! トール!! 本当にあのトール!! お荷物トールなのかっ!! 別人じゃないのかっ!!」
「トール様を馬鹿にしないでくださいっ! この無礼者!!」
パチン!
ラカムは頬っぺたをひっぱたかれた。
「ふん!」
フィオナは顔を背けて、その場を後にする。ラカムの顔が赤く腫れあがった。ちょうど手の形が残った。
「トールだと……ふ、ふざけんなっ! あのトールなわけがねぇ! 絶対に!! それに俺は最強の勇者様だ!! そしてこのパーティーは最強の勇者パーティーなんだ!! ここから絶対挽回してやるぜっ!」
ラカムは意気込むが、それが返って、どんどんと泥沼にはまっていく結果になるのだった。例えるなら底なし沼で必死にあがくようなものだ。沈んでいく速度を早めるだけの結果になる。
ラカムがやっている事はまさしく、そういう事であった。
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