第18話

なんてことはなく、重い頭が胸を押し潰す。

「無理だ……無理……抱くことは出来ない」


――――だろうね。

良く頑張ったよ、ここまで。


喜び、楽しさ、信頼感、親近感、安心感……

負の感情を上回るこれ迄に築いた想いが溢れてくる。


「お前、勘違いが過ぎるよ。何で許しを乞うの、悔いる事なんて何にもしてないのに。そもそも俺らに非はない。全ては腐った脳ミソのクソ野郎の罪だ。だからそんな顔するな。

 利用するだけならここまで心を通わせる必要もないのに、こんな俺の側にずっと居てくれるし、感謝以外に語れるかよ 。本当、バカだよ、お前。

 まぁ、今後も好きに利用して構わないけど、お前の言葉を借りるならば、今まで通り仲良くしてくんないかな、都合良すぎ?」


「すまん、守れなかった、本当にすまない」


「相当の自惚れ屋だな、誰が守れと言ったよ、それ以上繰り返すならやっぱり体で払わせるぞ!」


「…………抱くのは、無理……」


「じゃあキス頂戴、今度は激しいのが良い」


「…………、…………、…………」


視線が交わる。

俺の髪を掻き分け頬に触れる大きな手。

この手に包まれる人は幸せだろうな。


「ぷっ、おでこじゃなくて唇だから!」


「うぅぅ、俺にはお前に与えられるものが何ひとつない……」


「ははは、決定的な一言いただきました!」


これいい。

いや。

俺たちはこういう関係いい。


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