第七話:妖刀葉桜を探せ!

万之葉 文郁

時間を少し遡る

「で、なんで葉桜を海外に持ち出すことになったわけ?」

 女は男の上に跨ったまま尋ねる。


 ここは高級でもなく安くもないホテルの一室。二人はCAの服も忍者装束も脱ぎ去ってベッドの上にいた。


 地降傘を使って公園に降りた二人は、空中戦の勢いそのままに熱をぶつけ合った。

 今はその熱も冷め、女は冷静さを取り戻しつつあった。そして、こうして尋問を始めたのだ。昔から口の固かったこの男だが、快楽にめっぽう弱いことは経験からよく知っていた。


「ねぇ、答えて」

 女が耳元で囁きつつ不意に動き、男はウッと息を詰める。

 そのもどかしい刺激に我慢できなくなったのか男はついに口を開く。


「……うちの集落には力は十分にありながら、巡り合わせ悪く妖刀を受け継げなかった者の執念が籠もったはこがあった。あまりの念の邪悪さから厳重に保管されていたが、それが先日盗まれ、海外に流れてしまったのだ。あれに対抗できるのは妖刀葉桜のみ」

「だから、その落とし前を付けようとして葉桜を奪ったのね」

 女の言葉に男は頷く。


 男の集落は日頃から赤目の里に引け目を感じている。そのつまらないプライドが事をここまで大事にしてしまった。

 今回の騒動でこの事態は広く世界に伝わったはず。おそらくより多くの勢力が葉桜を狙ってくるだろう。


「葉桜は今どこにあるかはわかっているのよね?」

「あぁ。俺の使い魔が様子を見ている。今は近くのポリスにあるらしい。隙を見て取り返すよう命令してある」

「そう簡単にいくと良いけど。明日は私たちも服を買ってすぐに動かなきゃね」

 さすがに街中をあの格好で移動するわけにはいかない。女は夜が明けてからの段取りを思案する。


「おい」

 不意に男が呼びかけてきた。

「何よ」

「この状態の儘では辛いのだが」

 依然、女は男に跨ったままだ。

「そうね。朝までにはまだ時間があるし」

 女は男の背中に指を這わせると男がビクッと体を揺らす。

「お楽しみはこれからね」

 女はワセリンと歯ブラシを手に妖艶に微笑んだ。

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第七話:妖刀葉桜を探せ! 万之葉 文郁 @kaorufumi

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