第32話 モンスターハウスを駆除してレベルアップ!

「ジェイク……これじゃあやってることただのストーカーだぜ」

「うっせえな。あいつらが調子乗ってるからモンスターハウスでピンチになったところを馬鹿にしてやるんだよ」


 先ほどロアに絡んでいた赤髪の冒険者──ジェイクはパーティメンバーを連れて、ダンジョンに潜るロアたちを尾行していた。


「それにしてもあの魔法使い、本当に噂通り一撃で魔物を仕留めていくわね。雷属性の魔法でも一撃で仕留めるにはそれなりの魔法じゃないと無理よ。あの《投雷》って魔法、間違いなくCランク冒険者の上位層が覚えてるようなものだわ」


 ローブを着た女性は茶色の長髪をつまらなそうに人差し指でクルクルと巻きながら言った。

 彼女の名はドリー。

 ロアが予想した通り、魔法使いである。


「ってことはドリーよりも実力は上ってことか?」


 実質パーティのまとめ役を務めるタンクのイワンは興味深そうに尋ねた。


「そうなんじゃない?」

「ッハ、くだらねぇ。少し強い魔法が使えたぐらいで良い気になりやがって。銀色(シルバー)の分際でよォ〜」

「あぁ、そういえばあの人たちのギルドカード、銀色(シルバー)だったね。よく見てるじゃんジェイク」


 弓使いのニコライはジェイクを小馬鹿にするように発言した。


「あの野郎が調子に乗ったことしやがるから見えちまったんだよ! ったく、どいつもこいつもプライドってもんが足りてねぇ。最近だとルンベルクの冒険者ギルドでNo.1パーティって言ったら俺らだろうが。あんなぽっと出の雑魚供と比べてる奴らがいるんだぜ。俺は許せねえよ」

「うーん、ぽっと出の雑魚ねぇ。そんなにすぐ有名になるんだったら別に雑魚じゃないでしょ。どう考えても」


 ニコライはジェイクに反論するが、それはジェイクをヒートアップさせるだけだった。


「うっせえ! 冒険者としての実力じゃ俺たちが一番なんだよ!」

「はは、困ったリーダーだぜ。まぁそういうところ嫌いじゃないけどな」


 イワンはジェイクを落ち着けるように明るい声色で話した。


「ねぇ、あんたら喧嘩するのも良いけどそろそろモンスターハウスに到着するみたいよ」

「早いよな。道中の魔物もスルーする訳でもなく、ちゃんと倒してもう6階層だぜ。それに魔物の素材も魔石しか回収してるように見えない」

「あの魔石も魔法使いが手にとったら消えてるよな? バッグに入れてるような動作は何一つ行ってないぜ」

「なにか私も知らないような魔法を使っているのかもしれないわね」

「なんだドリー。やけに評価が高いな」

「みんなそうじゃない? まぁ、あの人がイケメンだってところは個人的に加点が入ってるかもね」

「……面食いだもんなドリー」

「ったく、んなもんどうだっていいだろうが。俺たちはあいつらがモンスターハウスで痛い目見るところを笑いに来たんだろ」

「「「それはジェイクだけ」」」

「……ッチ、ノリが悪い奴らだぜ」




 ◇




 モンスターハウスを見つけたので、俺たちは魔物に気付かれる前に物陰に隠れた。

 ぱっと見た感じ魔物の数は20体前後って感じか。

 モンスターハウスの規模を見る限り、角度さえ気を付ければ魔物を一掃できるだろう。

 これは一気に《紫電一閃》と[ミスリルの剣]を取得するチャンスだ。


 道中の魔物を倒してきたおかげで俺は152レベルになったので、これから【アイテム作成】で[ミスリルの剣]を作ろうと思う。

 《紫電一閃》から取得してもどうせ使えないしな。


「ソニア、モンスターハウスの駆除は俺に任せてくれ」

「はい、分かりました。危なそうになったらいち早くお守りしますね」

「ああ、そうしてくれると助かる。パーティも解散になっちゃうから経験値俺に集まることになると思うんだけど大丈夫か?」

「全然平気ですよ」

「ありがとな」

「……ロアさんって他人には気にするなっていうのに自分は結構気にかけたりしてますよね」

「んー、そうか? 言われてみればそうな気もするっちゃするけど」

「そうですよ。私ぐらいはあまり気にしなくてもいいんですよ。好き勝手わがまま言ってください」

「ソニア……じゃあ早起きをやめよう」

「それとこれとは話は別です」


 やれやれ。

 まぁ何はともあれ、モンスターハウスの経験値は一気に俺が稼ぐことが出来そうだ。


 まずは《稲妻雷轟》をぶっ放す前に[ミスリルの剣]を作成して……っと。



『【アイテム作成】の効果により[ミスリルの剣]を1つ作成しました』



 [ミスリルの剣]はその名に相応しい光沢を放っていた。

 カッコいいな。

 銅の剣とはまるで格が違う。


 俺は早速[ミスリルの剣]を装備してみる。

 うん、カッコいい。

 こうやって使う機会が増えてくると【アイテム作成】は凄まじく便利なスキルだ。


 そして俺は2レベルになったが、恐れずモンスターハウスに立ち向かおう。

 なに、《稲妻雷轟》をぶっ放すだけさ。


 モンスターハウス内の魔物の討伐推奨レベルは230〜240ぐらいだ。

 Dランクの魔物の討伐推奨レベルは大体100〜300ぐらいなのでDランクでも上位の実力を持つ魔物達だ。


 ふふ、以前よりも大幅なレベルアップが期待できそうだな。



「──《稲妻雷轟》」



 モンスターハウスの前で俺は詠唱を開始した。

 《稲妻雷轟》の詠唱時間は7秒。

 しかしクールタイムも5秒あるので連続して使用することはあまり現実的ではないだろう。

 ソニアに負担をかければ2発撃つことは可能だが、そんなことをしなくとも工夫すれば1発で全員仕留めることが出来る。


「おい魔物ども! かかってこいよ!」


 俺が大声で叫ぶと、魔物どもは雄叫びをあげながら襲いかかってきた。

 これで魔物の位置は先ほどよりも少ない範囲におさまる。

 つまり《稲妻雷轟》の絶好の的ってわけだ。


 魔物の攻撃が俺に届くよりも前に7秒が経過し、《稲妻雷轟》が放たれた。



 ビリビリビリビリビリビリッ!!!!

 ドカーンッ!!!!



 全ての魔物を一撃で倒し終わると、かなりのレベルアップのメッセージが鳴り響いた。

 これじゃあどれだけ上がったか、聞き取れねえな。

 俺はステータスを開いて、現在のレベルを確認する。



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 ロア・フォイル 19歳 男 

 称号:[フォイルのダンジョン踏破者]

 レベル:170

 HP:750/750 MP:1170/1170

 攻撃力:579

 防御力:162

 ユニークスキル:【アイテム作成】【魔法創造】

 魔法:《生活魔法》《火槍》《アイテムボックス(極小)》《豪火球》《投雷》《稲妻雷轟》


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 おお、一気に170レベルまで上がるとはな!

 すごいなモンスターハウス!

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