第12話 弟の彼女

就職して初めて迎えるクリスマスは

サービス業と言う事もあって慌ただしいだけのものだった

彼氏がいるわけでもないし

別にいいのだけど・・・


ママからは


「クリスマス

暇なら帰っておいでよ

涼太も遊びに行くらしいから

パパとママだけじゃ寂しい」ママ


私が一人だと決めつけて気を使ってそんな事を言う

もちろん私は家には帰らない

それは見栄を張っているからではなく

繁忙期でゆっくりしている余裕はないからだ


職場にはたくさんのカップルが訪れる

笑顔で対応しながらも

小さくため息をついた


毎日ヘトヘト


12月25日

クリスマス当日

休憩中に呼出しがあった

私を希望するお客様が来たようで

私は嬉しくて足早に店頭へと戻った


「いらっしゃいませ」悠


満面の笑みでその方たちの前に出ると

そこには

涼太と女の子


はっ?


呼び出したのは弟

しかも彼女連れ

と分かるとあからさまな不愛想になる


「客にそんな顔すんのかよ!!」涼太


ニタニタ笑う涼太を私は睨む


「何の用?」悠


「彼女の來未(くみ)」涼太


涼太はそんなに背が高くないのに

それ以上に小さな子

ショートボブに真っすぐの前髪で幼さが際立って可愛らしい

來未は頬をピンク色にしながら

チョコンと頭を下げて


「よろしくお願いします」來未


とアニメ声で挨拶した

私はその可愛さに笑顔になり

涼太には全く見せない優しい顔で


「こんにちわ

こちらこそ宜しくね」悠


と言った

來未はそれに対しても可愛くはにかんだ

それを見て涼太は嬉しそうな顔で來未を見つめたりして

なんだか幸せそうな弟が羨ましくて

私もなんだか嬉しくなった


「來未にクリスマスプレゼントでリップ買ってやりたくて

姉ちゃんとこに行ったら選んでくれるかな?って思ってきた」涼太


珍しく可愛いことを言う弟

私は期待に応えるためにも來未に色々とプレゼンした

あーだこーだと結構時間はかかったけど

彼女にお似合いの桜色のリップに決めることができた


「姉ちゃん

ありがとう」涼太


久々に見た弟の素直な態度に私は顔が緩む


「ありがとうございました

涼太くんにこんな綺麗で優しいお姉さんがいるのが分かって

私、嬉しかったです」來未


そう言って二人は手をつないで帰っていった


充実感でいっぱいの日

高校生のくせに涼太もませてるな・・・

あんな可愛い彼女を連れてくるなんて

しかもクリスマスにデート


私があの子たちのころはそんなんじゃなかったな・・・

クリスマスは家にいたし

家族で過ごしてた

涼太はまだ小学生で

無邪気にサンタさん待ってて

栞と一緒にサンタさんにお手紙なんて書いたりしてて

そうだ

我が家のクリスマスパーティーの日は毎年

栞はお泊りにきて

みんなでケーキを食べて

ゲーム大会をして

賑やかにすごしたな・・・

栞のお母さんからプレゼントを預かって

眠った二人の枕元にパパとママがプレゼントを置いて

次の日の朝は

サンタさんからの贈り物に気が付いた二人は

ワイワイ大騒ぎして・・・


子供だったな・・・二人とも

無邪気で純粋で可愛くて


何してるのかな?


今年は彼女と過ごすんだろうな


私は一人

冷たい部屋に帰っていった





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