【革命紀 SLIVED EKURIPUSU/スリヴドゥエクリプス】

第25話 宇宙と言う場所

エマノフ「準備完了さえな　発射できるぞえ。　お世話になったえ。　急激な重力がかかるから皆気を付けていってらっしゃい」

エールス「よし！「急いで機体を収納しろ！！　　サーゲンレーゼ発進！　射出させろ！　急いで上がれ！」

サフィ「艦長！　い一機こちらに、向かって、きゃぁぁぁあ」

　揺れる艦内。カールスが牙をむく。　もう、ADはすべて収納している。　反撃はできない。　

エールス「発射するぞ！　みんな衝撃に耐えろ！」

マイロ「艦長、並びに隊の皆さん。　これまで皆さんにはほんとにお世話になった。　数々の非礼があったことはお詫びさせてほしい。　皆さんの無事を祈っている」

エールス「大臣……。　ありがとうございます。　我々一同も、この星の皆様の無事を遥か上から願っています。　一同！　大臣に敬礼！」

　そうして、サーゲンレーゼは動き出す。　みんなを載せて、発射台を猛スピードで駆け上がった。

カールス「上がると言うのか！　新型！　私をあざ笑うようにして、絶対に止める」

ジャン「艦長、発射台が！」

エールス「攻撃に耐えろ！！　絶対に上がる！」

　カールスの攻撃が発射台を破壊していく。　

カールス「固いな！　せめて」

　カールスは発射台の先端を破壊した。

ジャン「艦長！　先がなくなった」

エールス「構わん！全速力で飛ばせ！！」

　滑走路が途切れた中、カールスは更なる追撃を迫る。　アルカーナの騎士の。　意地を見せて。

　サーゲンレーゼは打ち上がった。　その速度と爆風にカールス機は吹き飛ばされる。

カールス「うあわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁあ」

　その、空に描かれる一本の白い線を皆が見上げていた。　

シース「行ったか、やっとこれで俺たちも休めるな」

クルセル「がんばれよ、シーキュウナ隊」

マイロ「行ったな……」

　絶望するカールス。

カールス「あげてしまった。　私は、また失敗してしまったのか……」

　自艦に戻ったカールスはすぐさまニストルに報告した。

カールス「敵の艦が、宇宙へ上がりました」

ニストル「そうか、上がってしまったか。　仕方がない.

カールス隊には、もしかすると収集がかかるかもしれない、　準備だけはしておいてくれ。

　しかし、連合軍とつながっていたとなると、その星も気になるな」

　カールスはニストルの言葉が耳には入ってきてなどいない。

カールス「申し訳ございませんでした」

ニストル「あぁ、その件はもういい。　所詮は、敵に強力な武器が何点かわたるだけだろう。　対処するさ。　君もそう自分を責めないでくれ」

カールス「しかし、ニストル様の左腕だったギエン隊も、ニストル様きってのスラッグ隊も失うことに……」

　ニストルは顔を曇らせた。　

ニストル「ん、それについては私も、思うところはある。　惜しい人をなくしてしまった。　だが失っただけではない。彼らの意志を継いだものはここにいる。そして彼らの死を無駄にはしない。　我々は彼らに見せねばならないのだ。　彼らの望んだ、その環境を。

　今日、明日はゆっくり休め。　よくやってくれた。　彼らの隊の生き残りは？　」

カールス「はい。　元スクレイ隊のマレー兵長も」

ニストル「そうか、なら、マレー兵長を呼んでくれ」

オペレーター兵士「第二部、第三部切り離し、ロケット切除完了、エンジン点火させます」

　宇宙空間に出たサーゲンレーゼ内ブリッジでは、ロケットの切り離し作業を行っていた。

　エクリプスの中にいるライルはベルトを外す。

ライル「うわぁ、なんだこれ！！　体が勝手に浮く」

ニフティ『無重力化による現象です。　宇宙ではごく普通の現象です』

ライル「そ、そうなのか。　どうしたらいい。　体が浮いて自由が利かない。　席に戻りたい……」

ニフティ『軽く辺りを押して、席に戻ってください。　慣れれば何ともないです』

　ライルは席に何とか戻ると急いでベルトを締めた。中は熱かった為、ヘルメットをとろうとするライル。

ニフティ『駄目です！　何故ヘルメットをとるのですか？』

ライル「え？　なんか暑いんだ、この中」

ニフティ『そうですね。　どこかで温度の異常が発生しているのかもしれません。　ですが、ヘルメットなどは取らないでください』

ライル「えぇ～、なんでだよ。　蒸されてしまう」

ニフティ『あなたは死にたいのですか？』

ライル「なんでそうなるんだよ。　こっちの方が暑くて死ぬわ」

　ライルが忠告を無視してヘルメットをとると、驚いたことに呼吸ができない。　宙に浮いたヘルメットは優雅に浮遊する。

ライル「うっ、くはっ、」

ニフティ『何故ヘルメットをとるのです？　それはユーモアにしては過ぎますよ？』

　ライルはがぜん苦しそうにもがく。

ニフティ『何をやっているのですか？　生命反応に異常をきたしています。　早くヘルメットを付けたらどうでしょう？』

　見かねたニフティーはコックピットを開けた。　

グロス「この感じだと大気圏も抜けただろ。　俺たちもそろそろ降りてブリッジに行くぞ」

　そう無線が入ると。グロスはライルの乗る機体のコックピットがすでに空いている事に気が付き、駆け寄る。

グロス「おめぇ、何ヘルメット外してんだよ！！」

　グロスが慌てて来てくれたことによりライルは何とか事なきを得た。　グロスは慌てていたにしても、かぶせるように、何とも強引なヘルメットのつけ方をした。

ライル「ごほっ、ごほっ、　お前、助けてくれたのか……？　ありがとう、」

　ライルはニフティーにお礼を言ったがニフティーは何も言わなかった。

　宇宙に上がったサーゲンレーゼだったが、たちまち、トラブルに見舞われていた。　

オペレーター兵「艦エンジンに異常、出力停止。　供給元が立たれています。　左翼裂傷、シグネットに異常発生、上下運動不可。操作受け付けません」

サフィ「艦内第二動力部にて停止を確認。　温度調整に異常発生。　第四区画に空気漏れ発生。　どこかに亀裂があるかと思われます」

兵士「艦長！　技術部より、第二格納庫の門が閉鎖、開封を受け付けないとのことです。　閉じ込められている兵が複数」

　ブリッジに鳴り響くサイレン。　まるで急かすように艦内は赤く染まっていた。冷静に判断を下すのはノンだった。　

エールス「おちつけ！　技術兵に連絡。　第二動力部の確認を急がせろ。　スキャットマンとニルスは空気漏れの応急処置を。

　右翼シグネット部については、整備兵と共に、パイロットに当たらせろ。　格納庫封鎖はエレクとそのチームで頼む」

エレク「了解したぜ」　

　手際が良いとはまさにこのことだ。　

ライル「これはなんだ？？」

　ライルは艦の壁についているレバーみたいなものを不思議がっていた。　

クレイド「ライル！」

　そのレバーを握って反対側から、上手にライルに近づいてくるクレイド。　

ライル「クレイド！」

クレイド「見てみて、ライル！！　すごいよね。　これが宇宙！　私浮いてるよ！！」

　クレイドはライルに近づくくと、レバーを話して浮いて見せた。

ライル「危ないぞクレイド！」

クレイド「大丈夫だよ。　ほら、こんな事だってできちゃうんだから！　私アスリートみたい！」

　クレイドはアスリートのように、くるくると前転して見せる。

ライル「あぁ、ほんとだよな。　俺もびっくりだ」

クレイド「見てみて！　あれが地球でしょ。　私たちの星、あんなだったんだ。　青くてとってもきれい。

　宇宙って真っ暗だね。　でも、なんか星空の中にいるみたい。　すごく不思議……。　

　それにこのふわふわ～。私、すごく軽くなったみたい。　体重無くなっちゃたのかな」

　そのやり取りに大笑いするグロス。

グロス「単に無重力なだけさ。それにしたってクレイドちゃんはこのレバーの使い方よく知ってんな」

クレイド「いやまぁ、教えてもらっただけなんだけどね。実際使ってみたら、面白いね。これ」

グロス「こいつを使いこなせるなんざ、大したもんだ。ライルもさっさと慣れれば使えるようになるさ」

　パンパンと大笑いしながらライルの肩を叩くグロス。

クレイド「？　　ライル、具合、悪いの？　なんかしんどそうだよね……、大丈夫？」

ライル「……っ大丈夫だよ。　ちょっと頭が痛いっていうか、疲れがたまってるだけだと思う。　少し寝たいだけだ。　全然寝れてないから」

グロス「さっきの酸欠が響いたか？　まぁ、確かに、お前は特に疲れてるわな。ましてや宇宙なんて初めてだし、もうこのままうゆっくり休め。　医務室に案内してやる。　クレイドちゃんも大丈夫か？」

　クレイドは可愛く頷いた。

ライル「医務室って……これ……、なのか？？」

　酸素カプセルのようなベッド？　ライルはそこに寝かされる。　

グロス「ここならヘルメットとっていいぞ。　ただし部屋から出るなら、警報が止まるまではスーツを着用してろよ。　今色々トラブってるみたいだからよ」

クレイド「ねぇ、これは何なの？」

グロス「まぁあれだ。早期回復がしやすくなってる特殊なベッドって感じだ。　じゃあ俺はいったんブリッジに戻るからよ。　お前らはここでゆっくりしてろ。　ここにも窓はあるから、星とかいっぱい見れるぜ！　クレイドちゃんも、疲れてたら、このベッド使っていいからよ。　俺も酒が切れた」

クレイド「待って！　私も一緒に行くよ。　ここにいてもライルゆっくり寝れないだろうし、私は元気だから、私も何か手伝いたい」

　カプセルに入って装置を作動させるグロス。　相当疲れていたのだろう、ライルはすぐに眠りについてしまった。　

　丁度その頃、辺りをシーファースが飛んでいた。　

ヨーデル「偵察任務完了。　辺りに特に異変は無し。　周りには残骸のみ」

リース「了解した。　シーシャ、そっちはどうだ」

シーシャ「こちらも問題なし。生物の確認なし」

リース「了解。次の場所へ移動する。　各機、一度帰還せよ」

　4機のADが残骸の海の中を一つの艦目掛けて帰って行った。

　サーゲンレーゼは応急処置を完了させて、艦を進ませていた。だが、艦は無理な打ち上げで、修理が必要だった。でなければ、本拠地、惑星エレクには到底つけない。　サーゲンレーゼはここから近い、11《イレブンワン》アークシップへと向かうことになる。　

シノ「悲惨な場所　」

エールス「仕方がない。　話は聞いていたが、負けたらしい、激戦だったようだ」

クレイド「戦艦の残骸が……いっぱい……」

エールス「残骸には気をつけろ。　終了次第ここを抜けて、イレブンに入る。　気を抜くな。異常事態があれば、すぐに知らせるように」

　宇宙空間に漂っているのはまる焦げになった連合軍の主力巡洋戦艦エアロシップワン。　夥しい数が鉄屑となっていた。　勿論ADの残骸も漂っている。　

ニルス「使えるものは回収しろ」

　スキャットマンとニルスは整備兵と共にこの戦場の後から部品の調達に出ていた。こんな物でも、少しでも修理に当てたい。使える部品は交換したい。それだけ戦艦に負担を掛けてきているのである。

　彼らの目的は、急いで、包囲されようとしている本国へ駆けつける事。　間に合わせなければ、このために作られた新型戦艦に乗っている意味がないのだから。

オペレーター士「艦長！　艦内のエンジン部に、故障が発生。　右舷エンジン停止します」

サフィ「動力部にも異常。　重度の熱反応を確認。　エンジンが弱まっています」

シノ「艦長！　艦を止めなければ熱暴走で爆発の可能性が」

エールス「艦を停止。　事態を収拾しろ

　……くそ、こんなところで、　この艦はもつのか？　……頼むからもってくれよ」

　ニルスやスキャットマンの集められた残骸で急遽の修理と補強が行われた。　その間また、サーゲンレーゼは動きを停止した。

エールス「やはりだめか……」

　その時サフィーがレーダーで何かを捉える。

サフィ「艦長！　こちらに近づいてくる反応あり、　敵、かもしれません」

エールス「こんな時に……」

　エールスは全隊員に命令。明かりを消して、やり過ごすことにした。　サーゲンレーゼは残骸の一部へと溶け込んだ。　

　ライルが目覚めた時、　自身が来ていたスーツはなくなっていた。　クレイドが汗だくなのを見て、持っていってくれていた。　代わりに、白いダボっとした宇宙服が用意されていた。

　一つの戦艦が、鉄屑の残骸の舞う中を飛ぶ。　

「酷いもんだ」

「敵影の影はありません」

「よし我々は次の場所へ移動しよう。　後は後ろの部隊がしてくれるだろう。　我々は見回りだけでいい」

「こちらA地点。　異常なしどうぞ」

「こちらも異常なしだ」

　人型のADが各拠点を確認している。　

　そんな中一機の桜色をした機体が大きな戦艦を見つけた。　それは見たことのない戦艦で、辺りに散らばっているそれとも全く形が違っていた。

「なんだ？　この戦艦は？　こんなものが向こうの軍にはあったのか？」

　不審に思った桜色の機体に乗るパイロットは、その艦を目掛けて物色する。

「不思議だ。　ぼろぼろではあるが、まるでまだ真新しい感じがする。　なにかの戦力になるかもしれない」

　艦の中は真っ暗で、人気もしない。　　まして、こんな残骸の塊と共に、明かりもつかない状態で浮遊している戦艦に人などが生きていられるはずがない。　

　パイロットは侵入経路を見つけると、一人その戦艦の中に入って行く。戦艦の中は真っ暗でヘルメットに付けた小さな光だけが頼り。パイロットは銃を手に取り進んでいく。

　まわりは全く分からない暗闇の通路を分からず進んでいくと、前から白い大きな人が現れた。

「しまっ……」

　パイロットは急いでその銃口を向けて構える。　照らされたライトに映るずんぐりむっくりな白。

「民間人！！？　どうして、こんなところに……」

「う、うわぁぁああぁぁ、」

　民間人は騒ごうとしたので急いで口を黙らせる。

「うごっ……、」

「どうしてこんなところに？　ほかに人は？」

「知らなよ、真っ暗だったから何もわからない。　あなたは誰？」

　パイロットは察した。　ここには普通に敵の兵が乗っている事。生きた艦に乗ってしまったのだ。　そしてこいつらは民間人を捕虜にしている。　出会ったのが民間人でよかったものの、今の自分のこの状況はまずいと。

「いいから、急いでここから出ないと」

　パイロットは民間人の手を引いて強引に歩く。　

「ちょっとどういうことですか？　」

「この艦から出ないと」

「艦から出る？」

　その時足早に、音を殺して走ってくる足音が複数聞こえる。　

「まずい、隠れて！」

　パイロットに押し込まれるように、どことも知らぬ陰に隠れる。　息を殺すように潜むパイロット。　息が上がっていた。　

「何とか行った……」　

「どうして隠れるんだ？」

「私が見つかったら殺される」

「？　ここの人じゃない？」

「さぁ、急いで」

　民間人は引かれる手を思い切り振り払う。　

「！？」

「いけない。　ここには大切な人がいるから」

　何かを察したパイロット。　そうか、彼は捕虜ながら、守りたい人がいて、その人も囚われているのだと。理解したパイロットは一人艦を離れようとした時、また足音が向かって近づいてくる。　

　パイロットの息が上がる。　見つかれば殺される。　民間人はその言葉を聞いて、ある出来事が頭を駆け巡った。　昔軍に捕まった敵の兵隊を見た事があった。　その時その兵隊は、聞き出された事を話すよう、暴力を受けると問答無用で殺されていた。　自分たちの目の前で。　そんな出来事を彼は見て来ていた為、一人でいたこのパイロットの心細さと、恐怖を理解することができた。

　それにこのパイロットは銃を持っていたにせよ、自分を殺しはしなかった。　それどころか、何故か自分を助けようとしていたように見えた民間人は目の前のパイロットが悪い人のようには思えなかった事から、

「こっち、」

　民間人は手を引いてパイロットを隠した。　

「いったたたぁ、」

「しーっ、」

　どこかに押し込まれるパイロット。体の自由が利きにくいほど狭い。　しばらく二人は暗い狭い空間で息を潜めた。

「ありがとう。　助かった」

　パイロットは落ち着いた様子でお礼を言ったが、民間人はその体が震えていたのが分かった。　

「あなた一人なんだろ？　早く逃げて！　今のうちに」

　握手をした手が何かに触れる。

「これは……何かの操縦席？　まさかＡＤ……」

　パイロットは一瞬これでハッチを壊して外に出ればと考えたが、事態を大きくして、囚われる恐れを考えるとそれをすることを止め、隠密に出る事が最善だと考えた。それに民間人を巻き込めない。　また中の構造もどうなっているのかわからない。

「これを。

　あなたに渡しておく。　もし何かあった時それを使ってくれ」

　渡されたのは、銃。

「それはとても古いものなのだが、私の大事なものだ。　何かあったらそれを撃てば、きっと私が駆けつける」　

「これは……」

「閃光発信弾だ。　すごく旧式の年代物だから、今のジャミングにもレーダー探知にも引っかからない。　今となってはの優れものだ。　私が持っている受信機にしか通知されない。　逃げ出せそうな時が来たら知らせてくれ」

　そう言うと、パイロットは周りを見渡し、狭い空間から飛び出すと暗闇の中に消えていった。　

「なんだったんだ。　どうしてこの艦に？」

　こんなものを持っていると怪しまれる。　民間人はその銃を今いる場所に隠すと、彼もまた、普通に戻って行った。　捕まっていない事を願って。

　サーゲンレーゼ、ブリッジ内では

ジャン「艦長！　敵の機体が去っていきます」

エールス「ふぅー、何とかやり過ごしたか。　あたりに敵はないか」

隊員１「目視、レーダー共に確認できません」

サフィ「こちらもです」

エールス「よし！　エネルギーを復旧させろ」

　サーゲンレーゼが移動しようとした時だった。　

シノ「艦長！！　敵の艦隊が一隻こちらにむかって来てます！」

　艦長はもう一度やり過ごせないかと沈黙作戦をとったが、敵はADを展開してきたため、臨戦態勢に入った。　

　エールスとしてはいつエンジンが止まってしまうかもわからない状態で戦いたくはなかったが、運命はそうはさせてはくれなかった。　

　艦内放送が響く

シノ「各員、戦闘配置。　敵ＡＤが接近中。　パイロットは至急出撃せよ」