第23話 散り逝く人



「よそ見している場合じゃないぞ」


 追いかけてきたスラックがライル目掛けてライフルを連射。ライルのアルバの右腕をかすっていく。



「追いかけてきていたのか。 あの二機は居ないのか」


 ライルはモニター越しに残りの二機を探したが姿がない。 通信回線が開く


スラック「L.S.E.E.Dの隊長さんよ。 お前らはまた新しい力で残虐しようというのか」



 途轍もない怒りの声がアルバ内に流れた。 その声は何かを止めようとしている声だった。



ライル「何だこれ? どこから? あいつが話してる通信回線か? よくわからないけど、俺は隊長じゃねぇ。 ここに住む地球人だ。 お前らの争っている相手とは何の関係もない。 お前たちこそ地球から出ていけ」


 ライフルを持つエターの手を掴み上げ、二機は激突する。


スラック「お前たちは、そうやって悲惨な戦争を生んできた。 今度は絶対止めて見せる。 お前ら兵隊もそれを望んでいると言うのなら!」


ライル「何を言っている、俺は別にお前らを殺そうなんて思っていない。 とにかく攻撃を止めろ」


 エターは左手でフォトンソードを取り出すと、それをアルバに刺す。 


ライル「止めろ」


 アルバの脇腹に刺さる。スラックのこの一撃はライルを殺そうとしたものでは無かった。 


スラック「質問に答えろ、隊長機。 なぜあの時ジータを生かした?」


 ライルは顔をしかめた。 対話を望んでいる?! この人なら、もしかしたら話し合えるかもしれない。 ライルは会話を続ける。


ライル「俺は誰も殺すつもりは無い。とにかく攻撃をやめてくれ。 なんでこうなってるのかを知りたい」


スラック「お前の戦い方を見て、何か違うものを感じた。 本当は戦争に反対なんじゃないのか? 何故一機で突っ込んで来た?」


 スラックも確証がある訳ではない。 それこそ目の前のアルバが交渉をネタに自爆テロを考えての単機行動だってあり得る。 戦争をしているんだ。 簡単に人を信じれる訳ではない。だから、フォトンソードを緩めはしない。


ライル「俺は、お前らの敵対している人間じゃない。 通じてないのか? くそ、どうやったら」


スラック「そうか。だんまりか。 特に話す気は無いと。 なら俺の勘違いか」


 スラックはアルバを蹴り飛ばすと、フォトンソードを向けて突っ込んでくる。戦争はやるかやられるかだ。


ライル「何でこうなる」



 そこを間一髪ニルスのアルパが助ける。



スラック「アルパがもう一機だと!! どういう構成図だ。 隊長機が2機? 」



ニルス「おい!! やれるか」


ライル「やってみますよ」


 スラックは二人の猛攻に応戦する。

 




ニフティ『あなたではこの機体を動かすことは不可能です』


グロス「何が不可能だっていうんだ、 まぁ確かに操縦桿とかついてねぇけどよ。 俺が見た時は確かあったような気が……


 こいつも改装で変わったのか???  てか、急ぎなんだよ。 さっさと出やがれ」



ニフティ『私はあなたの為に言っています。 あなたでは動かせないことを断言します。適正なパイロットをお願いします』


グロス「いい加減にしろよ。 早く起動させやがれ」


ニフティ『承諾を拒否します』


何を言ってもニフティーは断固として、二つ返事だった。


グロス「早くいかねぇと、ライルがやられちまうだろうが!!」



ニフティ『ライル……』


 ニフティがしゃべらなくなるとモニターが起動する。 グロスの目の前には格納庫が映っていた。


グロス「ん、動くじゃねぇか、」



ニフティ『ご所望とあれば、運転モードに移行します。 私は警告はしましたよ。 パイロット。 運転権をあなたに一時許与します』



 グロスの座っていた椅子から操縦桿やペダルと言ったものが現れ機能する。


グロス「すげぇ…… 360度見えるってか、、、 どういう事だ。、この機体、何を意図して作られた。 このコックピットと言い、ただのADって訳じゃねぇ……」


 グロスは360度見渡せる内部と、その座ったことのない作りのコックピットに何かを感じていた。 そう、良いものではない。彼の生きてきた経験の全てからこれは普通ではないことを感づいたのだった。



 格納庫から射出路へと運ばれスタンバイ。


グロスはいつもの感覚でレバーを動かしたものだから、今にも死ぬと言った表情をして落ちていった。 ブリッジのカメラが様子を映していた。 


サフィ「グロスさん!? 大丈夫ですか!! 艦長! 大変です、グロスさんが落ちました」


エールス「何!? 何やってる」


 グロスの機体はうつむくように倒れていた。 


グロス「痛っててててぇ、 大丈夫だ。 慣れねぇもので、ちょっとドジっちまった」


 グロスはあまりの恥ずかしさに、本音を言えずに強がった。 


 だが、これ以上もうペダルを、操縦桿を動かしたくはない。 少し動かしただけで、いつ自分が死ぬか。 押しつぶされそうで、また一切の呼吸も吸えない馬力。 もし、思いっきり動かしていたら、間違いなく死んでいる自分が思い浮かぶ。 こんなもの少しでも間違えようものなら、命がいくつあっても足らない。 動かしにくいにも程がある。 グロスの手は震えていた。



グロス「あいつ……、こんなものに……乗ってたって、か。

 こりゃ、……まいったなぁ、」



 冷汗が垂れ流れる。グロスは機体を立たせたが、思い通り動かすことができず、明後日の方向へ行くばかりだった、


 そんな見たこともないグロスの操縦を目の当たりにして、一同は呆然とするのであった。 一番その光景に驚いていたのはエールスだった。



エールス「な、何をしているんだ……彼は……」


シノ「さ、……さぁ、……」


サフィ「よ、酔ってるんですかねぇ……? グロスさん」


ジャン「…………」



シノ「こんな時に、あの人は、」




グロス「くそっ、なんだ、勝手が違いすぎる。 どんだけ優しく触らないといけないんだ」


 グロスは乗ったことを悔いた。 今すぐにでも甲板に戻って、降りたい。 戻れることなら。


ニフティ『だから、言ったのです。 あなたでは無理だと』


グロス「おい、もうちょっと何とか動かしやすくできないのか! 」


ニフティ『可能ですが、そのモードはやめるべきです』


グロス「モード!!?  どういう事だよ! やめる? また何か危険なことになるのか?」


ニフティ『はい。 あなたの身に危険が及ぶ事は間違いないでしょう』


グロス「いいからやってくれ! これじゃ出た意味がねぇ 」




……………



 なんの返答もない。 ニフティーは自信のシステムを落としたようだ。


グロス「おい! 何の為のお前だよ!! しっかりサポートしろよぉぉぉ!!!」





 スラックは二人の攻撃の前に引いた。 これ以上は語り掛ける事も無理だと踏んだのだ。


ライル「助かった……  ありがとうございます」


ニルス「どこに飛び出しているんだ!! 戦線がめちゃくちゃだ。 早く戻るぞ!」


 この後、地球の軍はほとんど壊滅状態であったが、物資を受けていた軍は、痛手はあるもののそこまでの被害を受けてはいなかった。






 

艦内を暴れまわるジータ。 


スラックが艦に戻ると艦は荒れ狂うを声を出し、わめくジータがいた。 スラックは近くにいる兵に事情を聴くと、隊長として止めに入った。


スラック「ジータ…… 気持ちはわかる。 いったん部屋で安もう」


ジータ「うるさい。 黙れ」


スラック「こんな事したって、リラルドは帰って来ない…… 俺だって辛いんだ」


ジータ「お前らに何がわかる!!」


 ジータは近くにあった部品を投げて当たる。


スラック「やめないか。 こんなことをしても仕方がない。 わかっているだろ。 俺たちは覚悟して戦場に来たんだ。 これは承知の上だろう」



ジータ「あんたにはわからないのさ。 大切な人が死んだんだ。そんな気持ちすら。 いいよねあんたは、奥さんが遠くにいて、戦場にいるわけじゃないんだからさ。 言いたいことだけ言えて。 あんたに何が言えるって言うのさ、隊長さんよ」



 あれ狂うジータはそのまま後にした。 誰も何も言えない空気があたりを静寂にしていた。



兵士A「隊長!! 味方の艦から通信が入っています」


スラック「誰だ?」


兵士A「カールス隊長です」


スラック「何!? 彼らも降りて来たというのか?! 何故? 宇宙は、大丈夫なのか!? ニストル様はいったいどこまでの勢力を……

 予定とは少し違った来客だが、まあいい。 つないでくれ」


カールス「これは、スラック隊長。 あなたと会話ができるなんて、光栄の極みですよ」


スラック「これは心強い味方が来てくれたようだな。 して、上は大丈夫なのか?」


カールス「えぇ、戦況は我々が手にしています。 もう、彼らも袋のネズミでしょう。すごいですよ、ニストル大将は。


 ともかくも、へまをした我々が憎い。 物資攻撃を遂行したが、どうもそれがカギになってしまっているようですね」


スラック「ミスは誰でもするものさ。 確かに、急なこの惑星の武力向上を見るとそうらしい。 それより、」


カールス「あぁ、わかっていますよ。 スラック隊長の送ってくれた、発射台の情報。 奴らを宇宙にはあげさせはしない」


スラック「情報を的確に頭に入れてもらっているのは助かる」


カールス「こちらの数は40。 我々が到着次第、早急に攻撃をかけます。 これで終わりにさせましょう」




 

 エールスは連合政府との会議に出ていた。 


エールス「それはあんまりではないですか! まだ80%も完成していないんですよ!」


連合政府首脳「事は急を要しているのだ! 上がる前に破壊されては意味がないだろう」


連合政府長官「80%も完了しているのなら、急ピッチで上がれるだけの形にして発射しろ。 必要な物資は届いてるだろう」


エールス「えぇ、……ですが横暴にもほどがあります。 続く連戦で、こちらの惑星の人も疲労しきっています。急いで作製にも取り掛かってもらっていますが、」


連合政府軍次官「敵の艦が、そちらに降りたのを確認している。 発射台がばれている。 早く上がらなければ、真っ先に狙われるぞ」


エールス「ならば、援軍を送ってください。 我々だけでどうこうできる敵の数ではありません」


軍幹部「サギン大将がやられた今。我々も追い込まれている。沢山の増援を送れる状態ではないのだ!! それに援軍ならすでに向かわせている。 直につくだろう」


連合政府長官「とにかく明後日までには上がれ。 いいな。 そのために徹夜だって何だって必要だろうが、戦争をしているんだ。そこは苦しくても弁えてもらわねば困る」


連合政府首脳「頼んだぞ!ノン君。 我々は君に期待しているんだ。 君たちなら必ずこの窮地を打開できるさ。では待っている」




 隊員やシーキュウナ隊は寝る間を削って発射台の建設に取り組んだ。


 ライルやシーキュウナ隊は地球の特別防衛隊のメンバーである、シースや、クルセル、科学者のエノマフ教授と仲良く休憩をとっていた。 

 シース、クルセルとは、マイロ救出戦などから仲良くなり、お互いを信頼する仲にもなっていた。 



 科学者エノマフ氏は、地球での軍部の開発や整備に携わっている人であり、シーキュウナの持っているADに多大に興味を示した人物であり、癖の強い人であるがゆへ、その人柄、いつの間にか関わるうちに仲良くなっていた。 シーキュウナ隊が部品などの問題で苦労をした時、彼に助けられている。

 上級都市出身の人間様の為、ライルやクレイドからは出会い当初、嫌われていたが、打ち解けた後はとても親密な関係になった。



シース「お前たちもとうとうそらへ上がっちまうんだな。 そう考えると寂しくなる」


クルセル「あぁ、ほんとだな。 こうやって楽しく話せるのも後一日か」


クレイド「ねぇねぇ、皆も一緒に来ればいいじゃん」


 二人は顔を見合わせる。


シース「それはできない。 俺たちは地球防衛隊の人間だからね。 地球を守らないと」


クルセル「俺たちもここ守るからよ、お前らも、宇宙救ってこいよ」


ジャン「だけど、俺たちが上がった後、ここは、」


エマノフ「大丈夫さ。 これでも、我々だってしぶとい方だえな。 色々興味深い技術ももらっている。 黙ってやられる訳はなえさいよ」



クルセル「また、帰ってきたら必ず会おう! だから死ぬなよ」


ライル「あぁ、必ず会おう! 絶対」


 二人はグラスを交し合った。







 そして時間は経ち、明日が来る。 彼らは少量の睡眠時間の交代を用いながら、発射台の建設に日夜当たっていた。 快晴の朝だった。緊急収集の放送がなる。 偵察部隊がアルカーナの軍勢を捉えたとの情報からだ。 


 20以上の艦が上級都市近くに向かってきてる。 来るのが早い。サーゲンレーゼはまだ完成していない発射台へと急いで配置された。 打ちあがるには今日しかない。 急いで、上げなければ発射台を守ることなどできないのだから。


 不良のエンジンを補うためのロケットを取り付ける作業が必要。 皆は一時警戒として戦闘態勢のまま待機する。



地球軍「急げ!!敵が来るぞ。 全体、臨戦態勢!」


 エールスはシーキュウナ隊を集めると館内放送で伝いえた。


エールス「各位聞いてくれ。 現在、発射台は未完のまま、本艦はただいまをもって宇宙へと上がる。 これを失敗させるわけにはいかない。 皆心して当たってほしい。 サーゲンレーゼはロケットエンジンを取り付けの状態にある。 その為サーゲンレーゼからの援護はできない。 また、ここを狙った大規模な攻撃が予想される。 艦や発射台が攻撃をくらう事は非常にまずい。 最前線の防衛は地球軍のみで行う。もし、ここに到着された場合、それは終わりを意味する。 ニルス、グロス、スキャットマン、ライルは出撃し、後衛にて援護を頼む。 4人に関しては帰還時簡に注意しろ! 取付には急いで当たってもらっている。皆の幸運を祈る。以上だ」


 皆疲れた体に鞭を打つように、緊迫した朝を迎える。 


ライル「ここをやられたら終わりって。あの数で何を言っているんだ。 ふざけてる……」


グロス「これが戦争ってもんなんだよ。 まぁ、にしたって、これは背水の陣すぎるがな」


ニルス「みんな。何としても、近づけるな。 前線では、地球の部隊が先に、命を削ってくれているんだ。 絶対に失敗はできない」


 ライルは前線部隊がただただ爆撃をくらい微塵に散っていく姿を眺める事しかできないことに腹立たしくて仕方がなかった。 



 前線では地球の部隊が、そして地球防衛隊、ジンクスも総出で出動している。 激しい爆発音の中、最前列の戦闘が始まった。 当然宇宙から物資が送られてきているとは言え、、前線では止めることなどできず。 30を超える艦隊は横いっぱいに広がって押し寄せてきた。


 その光景に皆絶望するしかなかった。 2隻でも撤退させるのにやっとだと言うのに、それが30隻以上。 目の前に広がり、悠々と爆撃してくる様は恐怖でしかない。 皆絶望はしながらも、守れないと思うものはおらず、ただ、戦うのだった。 




 アルカーナ帝国所属、カールスはこの地に降り立つや、見慣れた景色に、感動を覚えた。 


兵士「前線から激しい攻撃が来ます。 地上に大量の兵器! 連合政府軍の物と思われる小型艦が5隻。 浮遊する小型機が多数! 行く手をふさいでいます」


カールス「構わん、蹴散らせ。 我々の目的はそこではない」


 カールスはある方向のモニターを拡大させる


カールス「見えた! あれか。 あいつら、 発射台に乗っている!? 完成しているのか? 逃がすわけにはいかない。


 戦前の艦隊をすべて突撃させろ。 発射台に集中砲火だ」


兵士「しかし、新型がいれば……」


カールス「新型は出ない! そのまま前進して止めろ!!」


 カールス隊の少し前を行く、スラッグ隊と、ギエン隊の艦は先陣がブースターをふかして進んでいくのを見て。カールスが仕掛けたことを悟った。 


スラック「カールスが動いたか。 しかしうかつすぎるぞ」


ジータ「何弱ったこと言ってんのさ。 カールスを見習ってほしいもんだね。 うちらも早くあいつをぶっ倒しに行こう! あれを破壊するのは私なんだから。 のうのうと、缶詰の中に納まっているといい。 そのまま破壊してやるよ」



スラック「落ち着け、ジータ。 新型は出る。 絶対な」


ジータ「出る訳ないだろ! あいつら逃げようとしてるのに。 もう待ってらんない。 あたしは行くよ」


 ジータ機はそのまま飛び出して言った。


 前線に配備した兵器は戦車のようなものばかり。 前に並び立つものも小型の飛行物体。 余裕で突破できる。 


 と思っていたが、それもそうはいかない。 前進した艦隊は無数の弾幕の前に、足止めをくらうのだった。  ギャランやロドミニオ達は必死で行く手を止めたていた。 見た目と反しての猛攻にカールスもADを投入。 前線を一気に沈下していく。 さらに下には戦艦の数をもって、無数の砲撃をもってつぶしていくのだった。





 前列隊で戦っていた地球軍のギャランとロドミニオから通信が入る。 彼らは一八戦車部隊でもあり、ともに戦ってきた地球軍でもシーキュウナ隊とは戦友と言ってもいい仲の二人だ。 


ギャラン「すまない。 こちらの隊はほとんど、壊滅だ。 突破される。」


ロドミニオ「どんどんと抜けられていく。 この数は前線だけでは抑えきれない。 後退する」



 それを静かに聞くライル達。 


地球軍指揮官「了解した。 急いで後退し、中立部隊に合流されたし。 なんとしても発射台は撃ち落されるな」


 それが命令。



ロドミニオ「何としてもって、この数だぞ」


ギャラン「これ全て足止めできたなら、俺たちも、無敵の部隊かもな」


シース「まぁそれでもやるしかないってことでしょう。 シーキュウナ隊は何としても上げて見せる」




 敵戦艦は前線を超えて、さらに形が見える場所まで近づいてきていた。 


地球軍無線「ここを突破されれば、敵の射程圏内に入ってしまう。 なんとしても、発射までここで食い止めろ」


 ライルは迷っていた。本当に撃ち落していいのか、だが、撃たなければ、みんなが殺される。 


ライル「ニフティー、あの艦を知っているか」


ニフティ『知っています、 あれはアルカーナ軍所属の艦。 大きい方がファンデン。 小型艦がシーファースです』


ライル「あまり人を殺さずに、戦艦を沈黙させるにはどうしたらいい」


ニフティ『…… 今の武装ではほぼ不可能。 方法としてはライフルの出力を絞り、なるべく細くして、動力部を狙う、ブレードで爆発しないようエンジン部接合部を切り落とすと言ったところでしょうか』


ライル「この数を相手には無理か……」


ニフティ『自分たちの命を優先させるべきでしょう。 なぜ生かしたいのですか? あなたの敵ですよ?』


ライル「あの人たちにも、きっと暮らしがある。 全員が好きで戦争やってる人なんていないはずだ。 自分の意志でいないものを殺したくはない。できる限り」

 


ニフティ『あなたは危険なパイロットですね。 私も、できる限りの調整はしてみますが、あなたの願いを叶えられるかはわかりません。 こちらがつぶれては元もないので』



ライル「そんなことわかってるよ。 分かってる。わかってるんだよ」



 ライルは絞ったライフルを戦艦に向けて放つ。 小型艦ではなく大きい方の戦艦を狙って撃った。 その白く青い一本の糸のようなレーザーは一隻を貫通してその後ろの艦隊にも被害を被らせた。 その攻撃に乗じて、敵は母艦を守らんと、蜂の大群のように、艦隊からADが飛び出してくる。



グロス「……敵さんのお出ましだ、 みんな落とされんなよ」


ニルス「何としても守り抜こう。 宇宙に上がらねばならんのだ」


スキャットマン「本当にすごい数だな……、 これを本当に止めれるってのか……俺たち……」


グロス「行くぞ!」



 敵も無数のADを展開。 ライル達がいる後衛部隊にも、主力の数を配備をしている。その兵器が、無数に火を吐く、大規模な戦場へと変わった。脇には連合政府から送られた艦隊おとしのレーザーが照準を合わせる。  しかし地球軍もランダムに飛ばされた物資を急ピッチで組み立てている為。すべての砲撃が完成しているわけではなかった。



兵士「カールス隊長!! ファンデンが落とされました!! 前進した艦が次々落とされていきます」


カールス「なんだと!? どういう事だ。 あの青白いレーザーが。 あんなものを用意していたというのか! 前進部隊を止めろ!!」


兵士「駄目です!! すでに攻撃の的になっています!」


スラック「ここからは考えて動いた方がいいぞ。 あれはきっと新型だ」


カールス「新型だと!? つまりは、まだ艦は発射できない状態にあるという事ですか」


スラック「なんにせよ。 向こうも新型を出さざるを追えない状況という事だろう。 新型がいる中、むやみに艦を進めるといくら艦があっても足らんぞ。

 私と、ギエン隊が出よう。 突破口を開く。その後、艦隊を指揮してくれ」



カールス「なら私も出よう」


スラック「まずは、邪魔な、兵器を一掃してくれ。 あれでいてかなり痛い。 どうも、連合政府の武装が多すぎる」


スラックは指示を出し、自身の機体に続くように、突撃をかける。 ギエン隊もそれに並ぶ。


ジータ「やっと出撃許可かい! 遅いんだよ。 これで仇を打てるんだね」 


 というもののジータはすでに前進しており、勝手に敵と交戦中の中大喜びして突撃する。 


スラック「ジータ! 俺たちが来るまで死ぬなよ。 それと、我々の目的は新型だけではない。 道を開くことだ。 こちらの戦力も無限でない事を心しておけよ」


ジータ「わかってるよ隊長!」


 ジータの機体をは勢いを挙げて、一八戦車を次々に破壊。 戦闘用の飛行機を叩き落としていった。 しかし、ジータの前に一機のアルパが立ちはだかる。 


ジータ「おまえ……」


  


 スキャットマンとグロスは敵のエターを落としていく。 ここを突破されないように。  ライルは引き続き、戦艦を狙い撃った。 


 敵は、その危険なレーザーに狙いをつける。


兵士「早くあれを破壊しろ! 艦隊が前進できない」


指揮官「あのレーザー元を狙え。 一台一台突破して破壊するんだ。 誰か、奥の新型を止めろ」



 しかし弾幕の前に突破できない。 強化されたジンクスに乗るシースとクルセルの攻撃が良く手を阻む。 それすらも抜けてやってきたのが、ギエン隊だった。 



 マレー、ニギュー、ギエンに囲まれた、ライルは近接戦を余儀なくされた。 


指揮官「砲撃がやんだぞ  全艦突撃しろ!」


 ニギュー、ギエンも仲間の仇を打つためにライルに迫る。 ギエンはこの事態に自身の責任を強く感じていた。 自分がもっと上手くこなせていたのなら。これだけの死人を出すような事態にはならなかったのにと。 だから彼は、だれよりも早く、新型をつぶす責務を感じて、一番にそこについた。 それは後に続く隊の仲間たちも志同じだった。 



マレー「隊長の仇!」


 だが、ライルの機体もそう簡単に倒されてはくれない。 何せ固い。 そして威力は一撃ものだ。


ニフティ『後ろ、45度よりライフルの攻撃、右に避けてください』


 指示に従うライルの機体に攻撃を当てる事ができない。 


ニギュー「くそ! なんであたらねぇんだ」


 ライルの操縦に被弾するニギュー、それでも、必死の彼らの攻撃はライルを追い詰めていった。特にギエンの攻撃にライル達はなすすべなく追い詰められていく。 ギエンの新型機の攻撃はライルの攻撃を止める。


マレー「もらった!」


 ライルのコックピットを狙った、攻撃。 出力最大のブレードがライルを襲った。やがては貫通してコクピットに届く。 ライルが死を覚悟した時、グロスがマレー機を狙う。


マレー「ロックされた!?」


 警告音に、マレーは攻撃を止め、回避する。


グロス「3対1はずるいだろう」


マレー「邪魔をする!!」


グロス「大丈夫か! ライル!」


ライル「な、なんとか…… 助かりました !」


グロス「それなら、こいつらは俺が引き付ける! 早く艦を狙え! ここに到達されると、砲撃の嵐だ!」


 ライルは助られた事であたりを俯瞰することができた。 


ライル「住居が、街が……めちゃくちゃだ……」


 この犠牲でどれだけの人に被害が出たのだろう。


 ライルは一息つく暇などなく、やってくる戦艦を狙う。 その時、照準がぶれる。 ものすごい振動がライルを襲った。 


ギエン「やらせはしない」


 猛突の蹴りがライルに入る。 照準が外れたレーザーは別のファンデンに被害を与え、沈没させた。 敵はレーザーが止まってない事に驚き、また動きを止める。


 ギエンはライルと差しで戦う。 その責任感から。 


ライル「こいつ、本気だ」


ニフティ『左側腕部に警告。甚大なダメージ』


 初めて、ライルの乗る機体に警告を出させる。  そこへ一機の戦艦が押し寄せてくる。 


グロス「くそ!! 一隻抜けてきやがったか!!」


 ギエン隊長たちは敵の真っただ中に突撃していったというのに、艦の自分たちは、それを見て待つなど、しびれを切らしたジトーがイモっているならと、突撃してきたのである。


ジトー「ギエン隊長!!」


 ジトーの砲撃の嵐が、辺りを一変していく。 地球軍の一八戦車などが無残にも破壊されていく姿に、ライルは兵器の恐ろしさを見た。 


ライル「やめろー!!」


 ライルのライフルが火を噴いたがそれは外れた! ギエンがライルの持つライフルを蹴り上げて飛ばしたのだ。  何がなんでもやらせない。


ギエン「よくやった。 そのまま艦を進めて、発射台を破壊しろ。 ここは俺たちが止める」

 

 ライルは急いで止めようとしたが、ギエンが立ちふさがる。 



 スラックはジータの元へ着いた。 


スラック「何をしている! 大丈夫か」


ジータ「うるさいハエが一匹いるんだよ」


 さすがに危険を感じたニルスは後ろに下がる。


ジータ「まて!! 何処へ行く、お前は、私が殺すんだ!」


 道を切り開きながら前進していたスラックの元には通信が入る。


スラック「何!? ギエン隊が新型の元へ到達した!? 艦もか! やはりやる男だな。 全隊、これより、ギエン隊の援護へ急ぐぞ! この辺りは後で来る後続の艦隊に掃除させろ」




ギエン「操縦の腕前は買ってやる。 だがここで終わりだ」


 ライルはギエンには勝てない。 その堂々たるオレンジの機体の前に、ライルはその大きさを感じさせられていた。 自分がこうして死なないのも

この機体、ニフティーのおかげで守られているだけだと。 


 そこへ下がってきたニルスが到着する。 渾身の一撃を込めて狙ったニルス。ギエンの機体は、ニルスの攻撃に反応ができなかった。 


ニルス「いまだ! ライル!!」


ギエン「ここまでだと言うのか……」


 ギエンのなしえたかった事。 平和な世界、部族たちの笑った笑顔と幸せそうに暮らす姿。 そんな絵が思い浮かぶ。 アルカーナの勝利。


 ライルは無我夢中で、レバーを切り、ギエン機を破壊した。 


ニルス「急げ! お前の方が早いだろ! 艦を任せた」



 サーゲンレーゼ艦内、また地球軍指令室


兵士「敵艦隊が防衛圏を抜けて現れました! 射程圏内に入られます」


エールス「やはりか、あのギエン隊とスラッグ隊を相手にしているんだ。 抜けてくるのはわかっていたが、恐ろしいものだ」


 エールスは自信の中でそう語ると、士気を上げるため、揺れるが、必ず、味方が来てくれると、艦内に放った。


 ライルの頭には、勇猛に戦争を止めると飛び出していったスラックの姿があった。彼も、それに見習ってまた、止めたいのだ。 


ライル「くそ! どうすればいい!!」


ニフティ『早く追いつく方法があります。 疎通モードに移行しますか?』


 ライルののる操縦席が変わりだす。説明はニフティがしてくれた。 そして勝手の変わった操縦桿に戸惑うライルにただ、動かしたいように、動かせばいいのだと告げる。



 ジトーの艦が発射台を射程圏に捉えた。 攻撃が炸裂する。 揺れるサーゲンレーゼに砲撃をくらい発射台が崩壊していく。 艦内では振動に悲鳴が上がる。


ジトー「これで終わりだ。 隊長、やりましたよ! 隊長!」

ジトー艦隊兵士「艦長! 後ろより、高速で接近する機影あり! こんな速度あり得ません」

 


ライル「やめろぉぉ――――!」


ジトー「新型機!? 隊長!? 隊長は?! やられたのかっ!!?



 ジトーが命令して急いで主砲を発射台に定めた時、照準がゆっくりとズレていく。ジトーの艦は地面へと降下していった。 さらに、地球軍に囲まれた砲撃によって爆発にのまれ、ジトーの艦は落ちた。


 クレイドはサーゲンレーゼの窓からライルの機体の姿を見て無事を喜んだ。 そしてこの艦を守ってくれたことを感謝する。まるでその姿は救世主のように輝いて見えた。 サーゲンレーゼのほかの物たちもまたその姿を感じていた。


  ライルは急いで防衛圏へと戻っていた。 その速度は決してあり得ないほど早く、ライルの機体の姿は見えなくなった。 それを心配そうにクレイドは見つめていた。 もう姿も見えない、さっきまで姿が確認できていたその一部の空を見つめて。


スラック「ギエンの艦が落とされた!? ギエン……やられたのか? 急ぐぞ!」


 スラッグ隊はすでに到着、ギエンの姿はなけれども、ニルスや、グロスと戦っていた。 その目の前に新型が現れる。


スラック「ギエン…… すまない。私が、無理のその機体で痛手を負ってしまったばかりに、……無理くり繋ぎ合わせたその機体でなければ……」


 ジータはアルバ2機に対して怒っていた。 


ジータ「どっちだ!!お前らのどっちが!!」




 両者とも激しい猛攻による攻撃がやむことはなかった。

 一方は守るために、一方は阻止するために。どちらも仲間を守るための意志。 両陣が激しくなったのも、誰か一人でもなしえれば、人はそれに習って勢いづくものからであり、ジトーの防衛圏突破は、後続するアルカーナ艦隊に多大なる士気向上をもたらした結果でもあった。



 ライルはスラックと対峙する。 勢いづくスラックはとても強かった。 なんせ、戦いを終わらそうと、覚悟を決めて戦っているのだから。今までのライル達なら負けていた。


スラック「この機体……以前よりもまして速度が上がっている。 捉えられない…… この機体まで改良が施されていると言うのか!?」



 ライルとニフティーのコンビはつきいる隙がなく。 スラックと互角の戦いをする。 



カールス「バカな……! あれが新型、あのスラックを相手に、押しているというのか……

 全艦突撃。 前線まで全速前進。 全部隊で押し叩く」



 カールスは力技を仕掛ける。 敵は逃げようとしているこの場合、有無を言わさぬ力技は何よりも有効な策だ。


 エターの攻撃がやまない中、シーキュウナ隊の機体は戦って戦う。 さらにスラッグ隊の猛攻で、疲労が募るばかり。 そこに救いと言わんばかりの無線がニルス達に入る。


エールス「みんなよく持ちこたえてくれた。 時期、ロケット設置が完了する。 これにより我々は続いて発射準備に入る予定だ。40分。 それまでには艦に帰還しろ。 いいな!! 1分の猶予もない事を忘れるな。 発射準備に入ると止めることはできない。 それまでに帰還しろ。 以上だ」



 40分、ライルはモニターに時間を表示させる。 シーキュウナ隊の三人は了解したと返事を返す。 ライルもそれに習った。しかし40分で撤退してしまっては、この数の艦を鎮める事はできない。 だとすると、発射するまでに誰が防衛線を死守できるのだ? 突破されてしまう。 ライルはそう考えていた。 つまりは40までには、この艦隊を黙らせなければならい。 そういう事だ。 

 


スラック「聞け。パイロット。 お前はなぜ戦う? そんなものを戦場に持ち込んで、お前は何をしたいんだ。 殺戮か!? アルカーナの滅亡か?」


 急に男の声が響く。 



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